「自動車大国」として華々しい歴史を辿ってきた日本。アメリカでの日本車のシェア率は40%を超えており、ヨーロッパにおいても日本車は高い評価と人気を得てきた。日本車の利点は、高品質という言葉に集約される。これは「日本車」という一種のブランド力であり、日本車はそのブランド力が信頼されているからこそ世界中でシェアを獲得してきた。
ところで先日、経済誌「Forbes」よりこんなランキングが発表された。その名も「世界で最も高燃費なEVカー10車ランキング」、要するに、世界の市販電気自動車の中で燃費の良い電気自動車のランキングである。
一見、何の興味も湧かないランキングだが、その実、日本の自動車産業の未来図を考える上での大事なヒントが散らばっているランキングでもあった。燃費が自動車の全てではないが、こられらはあくまで指標に過ぎないので、悪しからず。
第1位は欧米の自動車大国・ドイツの『BMW i3』
欧米各国が自動車産業で明らかな衰えを見せるなか、フォルクスワーゲンやBMWといった一大メーカーを抱えるドイツは、自動車大国として衰えることを知らない。
日本自動車工業会によって発表された2013年度の国別自動車生産台数によれば、中国、アメリカ、日本に次いで、ドイツは4番目にランクインしており、日本との差は僅か4%。日本は自国での生産台数が少ないといえど、その差は大きくないと言わざるを得ない。
燃費ランキングの方に話を戻そう。今回の電気自動車における燃費ランキングを制したのは、ドイツのBMW i3(47.2km/ ℓ)という電気自動車。わずか6時間の充電で80~100マイル(約130〜160キロ)の走行が可能なうえ、この電気自動車はCHAdeMO方式と呼ばれる急速充電器に対応しており、僅か30分で80%の充電も可能だ。
170馬力のエンジンを搭載しているこの電気自動車は、走行性能も電気自動車とは思えないほどに力強い。2色でまとめられたカラーリングと先進性の高いデザインも非常に評価が高い。
日本車は第5位・6位にランクインしたが……。
高燃費電気自動車ランキングで1位の座を、競合国であるドイツに奪取された国産電気自動車。国産車としては、アメリカで最も売れている電気自動車である日産リーフ(42.9 km/ℓ)が、トップ5にかろうじてランクインするという結果に終わった。
一充電での走行距離は平均84マイル(約135 km)とされるこの電気自動車は、あらゆる面から見て、良くも悪くも「普通の」電気自動車だろう。シンプルかつコンパクトなデザインとリーズナブルな価格設定。そして、日本車としての高品質。
第6位にランクインした三菱iMiEV(42.1 km/ℓ)も、コンパクトなデザインと低価格設定はおおかたリーフと同じ。一充電走行距離は約100 kmで、そのコンパクトなデザインゆえのこまわりの効くイージー・ドライブに定評がある。
第2位はアメリカのシボレー
出典:www.greencarreports.com ちなみに電気自動車の燃費ランキングで第2位を得たのは、アメリカの『Chevrolet Spark EV(46.3 km/ℓ)。この電気自動車は130馬力のエンジンを搭載しており、電気自動車らしからぬ走行性能が売りとなっている。
日本の電気自動車2種の良いところは、非のつけどころのないその安定した性能。しかし、トップにはなれない上、デザインも無難に見えはしないだろうか?
確かに、自動車は移動手段に過ぎないが、いつまでも今のような時代が続くとは限らない。いずれは鉄道網が発展し、自動車なしでもどこでも行けるようになるかもしれない。リニアモーターカーの発展もまた然りだ。
そのような状況になった際、自動車は移動手段の域を出ていくかもしれない。良くも悪くもフックのある自動車を作っていくことが、これからの時代では大切になってくるかもしれない。当ランキングからは、そういった未来の自動車産業に対する一抹の不安が感じられた。
前述のように、自動車にとって「燃費」というものは、その良し悪しを決める全てではない。あくまでひとつのファクターに過ぎない。とはいえ、電気自動車という自動車が、この先の自動車市場で大きな影響を及ぼすイノベーションであることは間違いないだろう。今は、どういったベクトルでこれからの国産自動車をブランディングしていくか、を考えることが求められているのかもしれない。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう