「Great Place to Work」による調査で、2015年度の日本における「働きがいのある会社」として見事1位に輝いたのは、世界的一流企業・Googleだ。これは、外部の人や会社制度の充実度で判断されたのではなく、職場で働く従業員からの評価を直接調査に反映した結果である。
これほどまでに社員がGoogleを「働きがいのある会社」だと評価するのには、実はGoogleの個性的な「ワーク・ルールズ」が背景にある。
世界中に70以上ものオフィス構え、4万人以上の優秀な社員を抱えるGoogle。今回は、そんなGoogleの人事システムを設計し、採用を進化させてきた人事トップによる、Googleの採用・育成・評価を惜しむことなく公開した一冊『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』を紹介する。
会社に「学び」を与える人材を採用するGoogle
多くの企業は、会社にとって扱いやすそうな人材を採用する傾向にある。しかし、Googleの採用基準は、会社にとって扱いやすい人材かではなく、会社側がその人から学びたいと思うかどうかである。というのも、上司の言われた仕事を効率的にこなすだけの人間では、Googleの方針である「誰もが自由に発信できる」環境を壊し、将来的な会社の成長を止めかねないからだ。
Googleの採用では、上司になりうる人間の意見は取り入れずに、あくまで採用される人の話を取り入れる。そして、この人が会社にどのような新しいことを教えてくれるのか、という点で評価する。上司の意見が採用を左右する日本の一般企業では考えられない、Google独自の採用方法だと言えるだろう。
成果が出ない社員は「環境」が悪いだけ
Googleといえば、入社後に十分な成果が出せない者は切り捨てるという「成果主義」なイメージを持ってしまいがちだが、これはまったくの思い込みである。
本書の中では、優秀な人材層「トップテール」と、思うように成果が出せない層「ボトムテール」の2つのテールのうち、ボトムテールに注意を払うべきだと話している。それは、ボトムテールが無能なのではなく、社員が自分の能力を発揮できる環境にいないことが原因だと考えているからだ。まさしく、「優秀な人材以外は採用していない」というGoogleの自信から生まれる発想である。Googleは、社員を優秀であるか無能であるかと判断することはなく、優秀なGoogle社員をいかに適材適所に配置できるかという点に重きを置いているようだ。
問題の解決方法は会社側から提供する
「ナッジ(nudge)」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。「ナッジ」とは、「ヒジで軽く突く」という意味の英語であり、選択肢を設計したり初期設定を変えたりすることで、人々に望ましい選択を促すという意味の経済用語である。行動経済学の分野では「科学的分析に基づいて、人間に『正しい行動』をとらせようとする戦略」として知られている。例えば、店頭のポップに「売れ筋No.1」や「人気商品」と書いてあると、ついその商品を手に取ってしまうのも、この「ナッジ」の一例だ。Googleはこの「ナッジ」を利用して、社員の意思決定に介入している。
Googleのナッジ利用例として、「率直な事実・評価を伝える」というのが挙げられている。例えば、明らかにチームの協調性を欠くメンバーがいて、そのメンバーのせいでチームの生産性が下がるという問題があったとする。そうした場合は、あえてチーム内で相互評価をし合い、問題を表面化させ、原因であるメンバーに自分の行動を振り返ってもらう。この人の選択肢を制限するのではなく、自然に行動を促進させようとする「ナッジ」が、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上に繋がっているのだ。
社員が自由に行動できる環境を整える一方で、問題が起きた場合は水面下で解決方法を提供するのも、Google独自の面白い施策ではないだろうか。
ここまで紹介してきたように、Googleが「働きがいのある会社」だと評価される背景には、一風変わった採用方法やボトムテールの扱い方、社員意思決定に介入するナッジ利用など、独特の「ワーク・ルールズ」があった。古いやり方に辟易し、新しい「働き方」を見つけたいあなたには、Googleの『ワーク・ルールズ』こそ最高の指南書かもしれない。
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