世の中には、凡人がどれだけ考えても出せないようなアイデアを、短時間で湯水のように出すことが出来る人々がいる。しかもそうした人が出すアイデアは、明確な根拠がないにも関わらず、人々に実現できそうだと思わせる“なにか”があるのだ。
その“なにか”とは「ひと言で言えること」だと指摘するのは、本書『企画は、ひと言。』を執筆した石田章洋である。石田章洋は、「世界ふしぎ発見!」などの有名番組を企画、構成した放送作家として有名だ。
石田章洋は本書の中で、優れたアイデアの秘密はひと言で言えることだと指摘する。「ひと言」で言える企画は理解されやすく、実現もしやすい。この記事では、企画をひと言で言うためのノウハウや、ひと言で言えることの強みを紹介していこう。
本のハイライト
“5S”からわかるひと言の強み
石田は、ひと言の強みは“5S”で説明できると主張する。5Sからわかるひと言の強みを紹介していこう。
1:Short→strong
ひと言は話すなら10秒以下、文字にするなら30文字以下がいい。なぜならば、短ければ短いほど言葉の強さは増強されるからだ。
2:Simple→attractive
企画の強みがひと言で言えるほどにシンプルであればあるほどいい。受け取った側には魅力的に映るからである。
3:Sharp→impact
アイデアがひと言でまとめられているということは、それだけアイデアが研ぎ澄まされているということだ。研ぎ澄まされたアイデアは、受け取った側に衝撃を与える。
4:See→vision
ひと言で言える企画は、受け取った側がすぐに頭の中にビジョンが見えてくる。
5:Share→image
任天堂のWiiは、「家族全員に触ってもらえるゲーム」というシェアしやすいひと言のおかげで、開発者だけでなく責任者や広報など各々の領域で自分の役割はなにかということがイメージすることが出来た。
新しすぎる企画は時代がついてこれない
企画の仕事を任されて、今までにない新しい価値を作ってやろうと思ったことはないだろうか。新しすぎる企画はひと言で言えたとしても、共感されることが出来ないのだ。
そこで、石田が紹介する企画の考え方は「ベタの力」を利用することだ。ベタの力がもっとも生かされた企画は、映画『エイリアン』だという。世界中で大ヒットした『エイリアン』をひと言で言うならば、「宇宙の『ジョーズ』」であるらしい。「海を宇宙に」、「サメをエイリアンに」変えるだけなのにも関わらず、映画業界では何十億といった莫大な予算が動いた。ベタであればベタであるほど目新しさはなくなるが、共感を呼びやすい。このように、今まであったものを少しだけ見せ方を変えるのが、究極なベタなのである。
ひと言でまとめるノウハウ
まずは思いついたアイデアを、「なんのために・なにを・どうする」という枠に当てはめることから、「ひと言」で言うための準備がはじまる。「なんのために・なにを・どうする」だ。頭の中にすでに企画の全体像が浮かんでいても、この枠にしっかりと当てはめることが重要である。
そしてその際、「次世代の」とか「革命的」のような、わかりにくい抽象的な言葉を当てはめるのはNGだ。例えば、Wiiだったら「ユーザーを拡大するために・新しいゲームを・家庭で遊べるものにする」といった具合である。身の回りにある物をこの枠に当てはめる訓練をつめば、この枠を作る能力が上がるだろう。
次に「なんのために」という枠を外す。そして、「なにを・どうする」を基盤にひと言を作るのだ。「なんのために」を考えることで、「なにを・どうする」が浮かびやすくなるため、最初の工程が必要なのである。
企画をひと言であらわすための“3つのC”
またひと言には、「compare(たとえる)」「can(できる)」「change(変える)」の3つのパターンがある。
AppleのiPodは、compareのパターンであり、「ポケットに入るような大容量タイプのデジタル音楽プレーヤー」。任天堂Wiiはcanのパターンで、「家族で遊ぶことができる新しいゲーム」。旭山動物園はchangeのパターンで「形態展示から行動展示へ」となる。
上記に挙げた例のように、3つの内の1つのパターンに「なにを・どうする」を当てはめればひと言も完成だ。
ひと言の強さとノウハウを理解できただろうか。本書では、さらに詳しいひと言のノウハウが書いてある。本書を読んで、どんな企画の仕事でもこなせるような人になっていただきたい。
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