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世界に誇る日産GT-R生みの親。“ミスターGT-R”水野和敏の成功を生む仕事術:『バカになれ!』

Shinpei Hayakawa

2015/09/02(最終更新日:2015/09/02)


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世界に誇る日産GT-R生みの親。“ミスターGT-R”水野和敏の成功を生む仕事術:『バカになれ!』 1番目の画像
出典:www.carstuff.com.tw

 日本が世界に誇るスーパーカー・日産GT-R。そのスーパーカーを生んだ水野和敏という男をご存知だろうか? 水野和敏は、仕事で成功するためには「バカになれ!」と教える。

 水野和敏の働き方の根底には、「人のため、社会のために自分に何ができるかを、真剣に考える」という誠実さがある。自分の持つしがらみを捨て、誰かのために考え抜き本当に大切なことを見抜く姿勢が、バカになるということだ。

 今回紹介するのは、日産GT-Rを生んだ水野和敏が自らの仕事から得た教訓や仕事術をまとめた『バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』という一冊である。

日産GT-Rは、こうして生まれた

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by Damian Morys Photography

 日産GT-Rという車をご存知だろうか? 発表当時、世界最速とされていたポルシェのタイムを抜き、世界中にその名を広めたスーパーカーである。しかし実際、これほどのスーパーカー開発に費やされたコストは意外なほど少なかった。一年半という短期開発に加え、通常の新車開発の半分の人員で日産GT-Rは製作され、その上800万円という低価格で販売されたのだ。

 なぜこれほどのスーパーカーを生むことができたのか。そこには「他社より高性能であれば売れる」という企業を中心においた競合優位の戦略ではなく、「どうしたらお客様に満足していただけるか」というお客様中心の想いや工夫があった。車はモノであり、モノにはユーザーが必ずいる。そのため、ユーザーの気持ちを考えることが重要になる。また水野和敏は、一流のモノとは「時間が経過しても価値が変わらないもの」であると考え、厳しくテストやメンテナンスを行い、品質の向上にも努めた。

 低価格で高品質を実現した背景には、同じ夢を持つ多くのパートナーの存在があった。実際、日産GT-Rの部品には世界の名だたるメーカーのものが使われ、決して安いとは言えない。ではなぜ、コストを下げられたのか? まず各メーカーは、企業とはいえ、協働するのは人である。自分の想いを訴え、相手の心を動かす。そうすることで、ただ利益を求めるのではなく、「一緒に良いモノを作り上げたい、夢を実現したい」というパートナーシップを生むことができる。そして互いに良い仕事を求めれば、利益を度外視しても大きな成功を生むことができるのだ。

チームとしてベストパフォーマンスを生む方法

 短期間で最高の商品を作り出せた背景には、もう一つ大きな理由がある。それは開発チームの存在だ。日産GT-Rの開発チームにはいくつか特徴があり、前述した人員の少なさもその一つである。本書では、一人ひとりが最高のパフォーマンスを出す方法を以下のように挙げている。

1.所属組織を離れたチーム活動

 日産GT-Rの開発チームは、各々が所属組織を離れ、特別に編成されたものであった。互いが組織の代表として参加するのではなく、一人の開発メンバーとして参加することで利害関係を切り離し、素早い意思決定や自由な意見・発言を可能にした。

2.チームメンバーを絞る

 開発メンバーを少なくした理由は、単に人件費削減のためだけではなかった。チームがコンパクトになることで、全体が見通しやすくなる。どこで何が起きているのかが分かりやすく、すぐに調整や対応を行えるのである。

3.リーダーの立ち位置を変える

 チーム活動を行う上で、メンバーに指示を出したりゴールを示したりする時は、メンバーをまとめるリーダーとして上に立つ。実際に、活動する際にはメンバーと同じ立ち位置になり率直な意見や現状を拾いあげる。こうすることでリーダーとしても協働する仲間としても信頼を生み、共に同じ目標へ向かう状態を作り上げられる。

 チーム全体が同じ目標に向かい、一人ひとりがベストパフォーマンスを生む。そのためには、それを可能にする環境が必要なのである。水野和敏は、こうした部分には時間をかけるべきだと述べる。最初に時間をかけて環境を作ることで、後の素早いパフォーマンスで最初の時間コストを回収することが可能になり、最高の形で仕事ができるのだ

失敗することで自分をリセットする

 仕事をする上で、誰もが失敗をしたくないと考える。しかし、失敗を避けようとすればするほど、動きは鈍くなり、最高の仕事をすることはできなくなると水野和敏は語る。また仕事の上で自分の欲や保身を考え始めると、人はそれによって足を止めやすく、挑戦をしなくなってしまう。では、どうすれば良いのか?

 前述したようにモノづくりは、「人のため」を考えることが重要である。偏った言い方をすれば、「人のため」以外のことは考えない方が良いのだ。失敗への不安や欲が無ければ、プレッシャーもなくなり本来の力を発揮できる。これこそ「バカになる」ということである。物事を素直に見るようになれば、モノづくりの本質や大切なものが見えてくるのだと水野和敏は語る。

 むしろ失敗は必要なものである。失敗することによって自分の過信や驕りを否定し、自分をまっさらにリセットできる。カッコつけず率直に物事へ向き合えるようになることが、本当のスタートであると水野和敏は述べている。なぜ失敗したのか、どうすれば良くなるか、必死に考え、分析する。これを続けていくことで、本質も捉えやすくなるのだ。


 本質を考える。高いパフォーマンスを生み出す。水野和敏の仕事への向き合い方や考え方から学べることは多い。ぜひこの本を読んで、これからの仕事に生かしてほしい。



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