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国枝慎吾だけじゃない! 車いすテニスで日本人が最強なワケ

Yasutaka Nagataki

2015/08/29(最終更新日:2015/08/29)


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出典:www.theaccessibleplanet.com
 日本ではテニスが今アツい。錦織圭が世界ランクで日本人最高の4位を記録し、テニスを独占放送しているWOWOWの加入率もうなぎのぼりだ。しかし、日本でアツい“テニス”は錦織だけではない。

 「車いすテニス」という種目をご存知だろうか。実は日本が今、この車いすテニスで最強の名を欲しいままにしているのだ。男子では2006年以降、国枝慎吾(くにえだ しんご)が世界ランク1位を守り続けている。最近では女子の方でも活躍が見られ、上地結衣(かみじ ゆい)が女子ダブルスで史上最年少となる、20歳での世界ランク1位を獲得した。

 なぜ、日本人は車いすテニスが強いのか。今回は2015年8月30日放送のTBS『情熱大陸』に合わせ、車いすテニスと日本の関係に迫る。

車いすテニスって……そもそもなに?

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by ** RCB **
 「テニスは知っているけれど、車いすテニスはよく知らない」そんな人は多いのではないだろうか。何を隠そう、実は車いすテニスのルールは、テニスとほとんど変わらないのだ。

 車いすテニスのルールがテニスと異なることはただ一つ、2バウンドまで球を打ち返してよいということのみである。健常者に比べると機動力でやはり劣ってしまうので、こういったルールが用いられている。しかし、その他はほぼ普通のテニスと変わりはない。片方が車いすテニスのルールを適用させれば、健常者と試合をすることも可能なのだ。

出場選手はもちろん身体障害者のみ

ITFの認可したトーナメントやパラリンピックに出場するには、恒久的な身体障害があると診断を受けなくてはならない。恒久的な身体障害とは、下肢のひとつ又は両方の実質的な機能障害である。
(下肢略)

出典:500KB - 日本車いすテニス協会
 健常者が車いすに乗ることで車いすテニスに参加するということは、国際テニス連盟(通称:ITF)の定める規約上不可能である。パラリンピックなどもこの規約に即しているため、当たり前と言えば当たり前だ。

 もっとも、「車いすテニスだから球も速くないだろう」と考える人も多いと思うが、その考えは以下の動画を少しでも見ればすぐに打ち砕かれるだろう。

そんな車いすテニスで男子最強と言われる国枝慎吾とは……?

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出典:www.zimbio.com

国枝 慎吾(くにえだ しんご、1984年2月21日 - )は日本のプロ車いすテニス選手。ユニクロ所属。
グランドスラム車いす部門で、男子世界歴代最多となる計38回(シングルス19回・ダブルス19回)優勝の記録保持者。グランドスラムシングルスで3冠を計4回達成し、ダブルスではキャリアグランドスラムと4大会連続優勝を果たしている。

出典:国枝慎吾 - Wikipedia
 国枝慎吾のスゴさがいまいちよくわからない人のために、国枝慎吾について軽く説明しておこう。上記の通り、国枝慎吾は車いすテニス大会の男子世界歴代最多の優勝数を誇っている。

 また国枝慎吾は2007年に、車いすテニス界で史上初となる年間グランドスラム(1年のうち4大大会すべて優勝すること)も達成した。その強さは当時、テニス界で最強と言われていた選手、ロジャー・フェデラーに「クニエダのほうがグランドスラムが近いのでは」とコメントされるほどだったとか。

まだまだ止まらない「日本人最強説」、今度は女子ダブルスも

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出典:news.yahoo.com

上地 結衣(かみじ ゆい、1994年4月24日 - )は日本の車いすテニス選手。エイベックス・グループ・ホールディングス所属。
2014年に女子車いすテニス史上3組目となる年間グランドスラムを達成。女子車いす史上6人目の生涯グランドスラム制覇であり、最年少の達成である。

出典:上地結衣 - Wikipedia
 国枝慎吾は有名な車いすテニス選手だが、車いすテニスで最強と呼ばれている日本人は国枝慎吾だけではない。最年少20歳で女子ダブルスの世界ランク1位を獲得した上地結衣もその一人だ。上地結衣は身長143cmという小柄な体ながらも、ダブルスの相方であるイギリス人選手、ジョーダン・ワイリーと共にタイトルを次々と獲得している。シングルスにおいても、2014年に4大大会のうち2つを制覇するなどの活躍を見せている。

 上地結衣も国枝慎吾と同じく、年間グランドスラムを獲得している。車いすテニスの女子史上3組目となるものの、もちろん最年少記録となった。2014年9月、車いすテニスの歴代記録にまた一つ日本人の名前が刻まれた瞬間であった。

ちなみに世界ランクを見てみると……

 ITFの公式サイトに飛んでみると、世界ランクの中にどれほど日本人がいるのか確認ができる。男子シングルスを50位まで表示させているが、その中に日本人がなんと7人もランクインしている。フランスの選手が6人ランクインしているが、7人ランクインしているのは日本だけである。

 女子シングルスに関しても、50人中6人が日本人選手で、これはオランダと並んでトップである。いかに日本人が車いすテニスで最強の名を欲しいままにしているのかが、お分かりいただけるだろう。

なぜ日本人は車いすテニスがこんなに強いのか?

 日本人が最強であるということはこれでもかというくらいにお伝えした。では、なぜ日本人がここまで強いのか、今回は「車いす」という面と「選手育成」という面から考えていく。

車いすテニスの足「車いす」

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by zeevveez

「競技こそが技術力の優位性を何よりも端的に示す」。この確固たる信念に基づき、REVは2003年に誕生。数々の勝利を獲得してきた輝かしい実績をベースに、技術革新を続けています。

出典:REVの日常用車椅子 XR/RC/RD
 まず、選手たちの“足”となって支える「車いす」だが、日本製の車いすテニス用車いすは、とにかく「軽い」という特徴がある。

 国枝慎吾や上地結衣などが愛用している車いす「TRZ」は、軽さもさることながら、堅牢なフレーム・扱いやすいような設計が施されている。男子シングルスのランク50位以内に入っている日本人選手7人のうち、4人がこの車いすを使用しているため、その信頼度は確かなものだ。

 また、車いすテニス用の車いすは全てカスタムメイドなため、選手にどこまで合わせられるかという技量も試されている。日本人の持つ「職人技」が活かされた結果、“足”として最大限機能することができている車いすを作ることができているのだ

TTC(Tennis Training Center)の存在

 選手各々の実力が高いということは紛れもない事実だが、その実力をつけさせた「スクール」の存在も忘れてはならない。

 「吉田記念テニス研修センター」という財団法人の抱えるテニススクール「TTC」が、日本の車いすテニス選手の多くを輩出している。国枝慎吾ももれなくその一人である。ITFの世界ランクにランクインしている選手たちには、専用の強化プログラムが用意されているため、極めて質の高い練習を提供できているようだ。

 このTTCの存在こそ、日本の車いすテニスが強くあり続ける理由の一つなのではないだろうか。


 車いすテニスと聞いて、「ただのマイナーな競技」と侮っていた方々は、今日から少し考えを改めてほしい。相撲や柔道すらも外国人に乗っ取られつつある今日において、車いすテニスは日本のスポーツを復活させるひとつの兆しとなるのかもしれない。

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