1953年に日本で初めての放送が行われてから、テレビは世間に対して圧倒的な影響力を誇示してきた。しかし近年は、FacebookやYouTube、Twitterといった新しい形のメディアが登場し、メディアは多様的で複雑なものとなった。新しいメディアが影響力を増していく中、既存のメディアはどう生き残っていけばいいのか。
今回は、本書『メディアのリアル』の中から、メディアの現状を分析した上で本書で紹介されていた「ソーシャルテレビの可能性」について考えていきたい。
本書『メディアのリアル』は、ワタナベエンターテインメントの会長・吉田正樹氏やメディア界の第一線で活躍されている豪華ゲストらが「メディアの生の声」を赤裸々に語った一冊だ。
「大衆の時代」から「個人の時代」に
by Japanexperterna.se FacebookやTwitterといった「ソーシャルメディア」が、世間に対してここまで大きな影響力を持つようになった最大の理由は、「大衆の時代」から「個人の時代」になったからだと考えられる。
あなたの身近な出来事を振り返って欲しい。友人や恋人と過ごしているにも関わらず、ソーシャルゲームやLINEなど、各々が自分の好きなことをしてはいないだろうか。別行動を取っているのに同じ空間を共有するとは、不思議なことこの上ないが、現代では一般的な光景となってしまっている。
これまでの「皆と同じ空間で同じことをしたい」という大衆の時代は終焉を迎え、「自分がしたいことを好きなときにする」という個人の時代に突入したのだ。そして、「個人の時代」の到来へと導いたキーパーソンこそ、ソーシャルメディアの存在だ。
「グノシー」や「スマートニュース」といったキュレーションサイトや、多くのニュースサイト(当サイト「U-NOTE」もその一つ)が新興してきている最大の理由は、消費者個人が見たいと思う内容にピンポイントでヒットする情報を提供しているからだ。
ソーシャルメディアは、特定の人間に特定の情報をリーチさせる特性を持っている。もしあなたが美味しいラーメン屋を知りたいのであれば、ネット検索で「おいしいラーメン屋」等と調べるだろう。これをソーシャルメディアの特性に当てはめてみると、特定の人間(美味しいラーメン屋を調べたい人)が特定の情報(美味しいラーメン屋はどこか)にリーチしていることになる。
不特定多数の人間に大量の情報を送っているテレビとは異なり、ソーシャルメディアは情報の受け手が意思を持って情報の取捨選択を行うことができる。受け手が情報を無意識に受けるだけの「客体者」ではなく、意識的に情報を取得できる「主体者」となれるのだ。
上記のような個人に特化した機能を持つソーシャルメディアは、自分の関心があることだけを知りたいと考える個人主義の流れに沿って誕生したのだ。
メディア広告の変革
出典:www.porchdrinking.com ソーシャルメディアの登場は、時代の変化のみならずメディア広告のあり方にも大きな影響をもたらした。従来であれば、多く会社が自社の商品を宣伝したいと考えたとき、広告料を支払い公共の電波か紙媒体に広告を載せるという手段に頼っていた。特にテレビCMは絶大な効果が期待できるため、常に選択肢の最上位に位置付けられていた。しかし莫大な広告料がかかるテレビCMを利用できる会社はごくごく限られており、小さな会社にとってはテレビCMを使って商品を宣伝するという選択肢は事実上無いに等しいものであった。
しかし近年は、テレビCMに次いでソーシャルメディアをはじめとするインターネット広告が主流となっている。大衆メディアであるテレビで洗剤のCMを流したとしても、視聴者全員がその商品に興味を持ってくれるとは限らず、「視聴率=商品をPRできた影響力」とは考えにくい。しかしソーシャルメディアの場合は、「洗剤」と検索した人に対して洗剤の広告が表示されるので、より効果的に商品を印象付けられる。また、その広告に対して何人が興味を持ったのかを広告をクリックするという動作から、数値化し分析することができる。
以上のことから、以前のように高い広告料を払ってテレビに広告を載せる重要性は薄れており、より安価で効果が期待できるインターネットやソーシャルメディアに広告を載せようという会社が増えた。インターネットはメディアの収益構造にも変革を起こしたと本書では指摘している。
次世代メディア「ソーシャルテレビ」の可能性
インターネットによって、テレビCMは衰退していく一方なのかと悲観するのはまだ早い。依然としてテレビは多くの視聴者と高い技術力(プロによる番組制作等)を誇っている。
本著『メディアのリアル』の中では、今後テレビの持つ利点と、SNSやブログ、YouTubeといったソーシャルメディアを融合した「ソーシャルテレビ」を構築するべきだと指摘している。ソーシャルテレビとは、視聴者とソーシャルメディアを通して、エンゲージメント(関わり)を強くしていき、テレビの視聴率アップに繋げるというものだ。
テレビ番組の中にソーシャルメディアとテレビが融合した「ソーシャルテレビ」が登場することによって、より多様性のある効果的な情報提供のプラットホームができると本書では予見している。今の日本ではネットと既存メディアの融合は発展途上の分野だが、日本全体のメディア産業を盛り上げていくには、両者の融合が必要不可欠なのである。
多くの人がスマートフォンやPCを通してインターネットを利用していると思うが、本著『メディアのリアル』はメディア関係者だけでなく、情報の受け手である一般の人にこそ是非目を通して欲しい。
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