コップのフチに引っかけて楽しむおもちゃ、「コップのフチ子」シリーズ。何の変哲もない人形のはずなのだが、今や累計800万個を超える売り上げを誇る大ヒット商品である。20万個を売り上げれば成功と称されるカプセルトイ(ガチャガチャ)市場でのこの数値なのだから、いかに爆発的人気を誇っているのかが分かる。2015年9月現在では46シリーズのコップのフチ子が存在し、種類にしてなんと300種類以上が存在しているのだとか。
そんなガチャガチャの女王となったコップのフチ子人気を創り上げたのは、製造元の株式会社奇譚クラブ代表取締役・古屋大貴だ。今回は、コップのフチ子がなぜここまで人気になっていったのか、そして古屋大貴が考えるヒットの法則についてを紹介していこう。
フチ子ブーム最大の理由、SNSの「写真付き投稿」
出典:www.flickr.com コップのフチ子がここまで人気を博している最大の理由、それは何と言ってもSNSでの「写真付き投稿」だ。TwitterやFacebook、Instagramを中心に、多くの人から写真投稿がなされている。コップのフチ子の画像を不定期で更新しているTwitterの非公式アカウントやFacebookの非公式ページまで生まれ、多くのフォロワー・いいね!を集めているほどだ。
なぜここまでコップのフチ子が写真投稿されているのか。これは、単純にかわいいから、というだけではなさそうだ。
どんな料理・どんな場所にも合ってしまう「コップのフチ子」
コップのフチ子と銘打たれているものの、SNSに投稿されている写真は案外コップの“外”にいることが多い。そもそも飲食物ではない場合もしばしばある。
コップのフチ子は、驚くほど汎用性が高い。コップのフチを飛び出し、様々な料理・風景にちょっとしたかわいさをプラスしてくれる。そんなコップのフチ子の良さが、SNSで今爆発的な人気を巻き起こしている最大の理由だろう。
仕掛け人・古屋大貴「自分が作りたいから作っている」
ではどのようにして、コップのフチ子は誕生したのか。古屋大貴は、コップのフチ子をはじめとする奇譚クラブの様々な商品を「作りたいから作った」という。まるでニーズを一切考えていないような発言に思えるが、この発言は何よりもニーズを優先することで出てきたものである。
当たり前の話だが、会社は利益を求める。利益を求めるために、売り上げを増加させる必要がある。そのために、新たな商品を開発する。これが一般的な会社の流れだ。しかし、古屋大貴曰く、その方針は「本末転倒」なのだとか。
古屋大貴の「作りたいから作る」という考えを少し言い換えると、自らも消費者として楽しみたいから作るということである。自分をはじめとする消費者が楽しみたいと思えるようなものを作れば、売り上げは自然とついてくる、と古屋大貴は考える。
売り上げを出すために商品を作るのでは、最終的なゴールが会社の方に向いている。古屋大貴の「作りたいから作る」という考えは、最終的なゴールが消費者の方に向いているのだ。そのため、会社のことを考えるのではなく、自分が欲しいものを作るという意識が、コップのフチ子のようなヒット商品を生んだのだ。
古屋大貴「玩具店には欠かさず足を運ぶ」
自分が消費者だというのを単純な“エゴ”にしないために、古屋大貴は玩具店に欠かさず足を運んでいるのだという。自らが典型的な消費者となるために、様々な玩具を手に取り、目で見て感じる必要があるのだと古屋大貴は考えている。
古屋大貴は大人用の玩具だけでなく、子供用の玩具にも手を伸ばしている。子供用だからターゲットから外れるというわけではないのだ。素材や形状など、子供用玩具にもヒントは多く存在していると古屋大貴は語る。子供用玩具から得たアイデアが、今のコップフチ子人気に大きく関わっているのである。
細部の塗りまで「超細かく」!
古屋大貴はコップのフチ子が売れている理由の一つに、塗りの「丁寧さ」があると述べている。たかだか300円程度のおもちゃだからといって、手加減はしない。
コップのフチ子だけにとどまらず、すべてのカプセルトイを古屋大貴は、非常に「丁寧に」作成している。この、気づくか気づかないかのレベルまで丁寧に作る技術があってこそ、コップのフチ子はここまで売れることができたのではないだろうか。
もともと「公務員志望」だった古屋大貴
コップのフチ子というような、ある意味で「奇抜な」おもちゃを世に生み出した古屋大貴だが、実はもともと「公務員志望」だったのだという。人生まで奇抜なのかというと、意外とそうではないようだ。
公務員を志望するくらいには真面目だった古屋大貴。この真面目さの存在が、コップのフチ子をはじめとするカプセルトイに「丁寧な」塗りを施すことのできる理由だろう。
恐らくだが、コップのフチ子人気はまだまだ衰えることはないだろう。コップのフチ子に次ぐ新たな人気カプセルトイが、古屋大貴の手によって生み出される日を心待ちにしている。
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