仕事で「リーダー」「マネージャー」といった役職名を目にする機会は多い。とはいえ、リーダーとマネージャーの違いをきちんと説明できる人は少ないはずだ。
そこで今回は、リーダーとマネージャーに求められる役割や能力の違い、リーダーとマネージャーの志向性の見分け方を紹介したい。
自分がリーダーを目指すべきなのか、マネージャーを目指すべきなのか、本記事を機会に今一度考えみてほしい。
リーダーとマネージャーの役割の違い
リーダーとマネージャーの違いを考える前に、まず歴史上の偉人と呼ばれる人たちを例として挙げてみよう。
歴史上の偉人たちの多くは「マネージャー」ではなく「リーダー」
坂本龍馬、ジョージ・ワシントン、ナポレオン・ボナパルト、キング牧師。
歴史を動かすほど多くの人たちに影響を与えてきた彼らは、マネージャーではなくリーダーとして見なされることがほとんどだ。
では、なぜ彼らがマネージャーではなくリーダーだと認識されているのか。言葉の定義はさまざまだが、組織という観点から見れば、リーダーとマネージャーの違いは以下のように考えることができる。
組織における「リーダー」「マネージャー」の違い
- リーダー:自ら先頭に立って進むべき道を示す存在
- マネージャー:メンバーの一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できるように支援する存在
「多様性のある集団」に道筋を示すリーダー。成長を支援するマネージャー
そもそも、組織には個性も価値観も能力もバラバラな個人が集まっている。
そうした多様性のある集団を同じベクトルに振り向かせ、組織全体がどちらに進むべきなのかを示すのがリーダー。
それに対して、組織に属する一人ひとりの能力を見極め、パフォーマンスを最大限発揮できるよう、役割分担や成長を支援するのがマネージャー。
一見似ているように思える「リーダーとマネージャー」だが、実は大きく異なっているのだ。
リーダータイプの偉人たちに備わる「圧倒的なリーダーシップ」
先に挙げた歴史上の偉人にも、恐らくマネージャーとしての資質は備わっていただろう。
ただ、彼らには、多くの人たちに明確なビジョンを示し、あるべき未来に向かって突き進んでいく原動力を生み出したという圧倒的なリーダーシップがあったのだ。
そんな圧倒的なリーダーシップが、彼らを“強いリーダー”だと感じているに違いない。
リーダーとマネージャー、それぞれに求められる能力とは
求められる役割が違えば、当然、必要となる能力も異なってくる。ここからはリーダーとマネージャー、それぞれの特徴と違いをより詳しく見ていこう。
リーダーの特徴とリーダーに求められる能力
リーダーには、組織に属する全員が共感し、共有できるメッセージやビジョンを示すことが求められる。
そこでリーダーに必要となるのは、個性や価値観に関係なく「明確な方向性を提示する」「変革・改革を生み出す」「組織を一体化させる」といった要素だ。
そして何よりも、リーダーには人を引きつける力が必要となる。上司として部下に偉そうな態度をとったり、命令口調で指示を与えたりするのがリーダーなのではない。
リーダーにふさわしい仕事ぶりを積み重ね、「この人についていきたい」と周囲に思わせたときに、初めてリーダーになり得たといえるのだ。
マネージャーの特徴とマネージャーに求められる能力
一方、名著『マネジメント』で知られるピーター・F・ドラッカー氏は、マネージャー(マネジャー)の役割を以下の5つに定義した。
ドラッカーが定義した「マネージャー」に求められる5つの役割
- 目標を設定する
- 組織化する
- モチベーションを高め、維持する
- パフォーマンスを評価する
- 自分も含めて部下を育成する
ここからわかるのは、ただ業務を振り分けるだけの人材はマネージャーとは呼べないということ。
組織全体を見渡し、それぞれの役割に適した人材を的確に配置する。そして、自分も含めて組織全体で成長を促していける存在となって、初めてマネージャーといえるのだ。
「リーダー」と「マネージャー」、2つの役割を一人に求められたらどうする?
企業という組織の中では、成果を生み出す能力を持つリーダーと、組織を監視する能力を持つマネージャーという“2つの役割”を一人の人間に求めるケースが多くある。
これは2つの役割が、それぞれ組織にとって不可欠なものであるために起こることだ。
もしあなたが2つの役割を任される立場に就いたときには、「今はリーダーとして振る舞うべき」「この場面はマネージャーとして判断しよう」と認識を切り分けて、対処することを心がけてほしい。
あなたはリーダー志向? それともマネージャー志向?
リーダーとしての能力とマネージャーとしての能力、この両方をハイレベルな次元で持ち合わせている人もいるが、どちらかに秀でているケースのほうが多いだろう。
自分がリーダーとマネージャーのどちらに向いているのか、どちらになりたいのか、その志向をあらかじめきちんと把握しておくことは、キャリア形成においても非常に有用である。
マネージャーとリーダーを見分ける「たった一つの質問」
17年間、リーダーやマネージャーの調査に携わり、その調査結果をまとめた『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』(日本経済新聞出版社)の著者であるマーカス・バッキンガム氏。
彼は「一つの質問」で、リーダーとマネージャーの志向性をわけることができると明かしている。
それは「あなたが仕事について思い浮かぶものは何ですか?」という質問だ。
マネージャータイプがイメージするのは「部下や周りの人」
この問いに対して、まず部下や周りの人たちをイメージしたあなたは「マネージャータイプ」だ。
マネージャータイプは、一人ひとりの能力や適性を把握し、最大限に発揮できるよう努めていく必要がある。
そして何よりも、マネージャーに向いているのは「部下の成長を心から喜べる人」だ。当てはまる人は、自分は生粋のマネージャータイプだと考えてよいだろう。
リーダータイプがイメージするのは「組織が目指す目標や未来像」
一方で、組織やチームが目指す目標や未来像などが浮かんだあなたは「リーダータイプ」。
未来が良くなることを想像し、そのために全力を注げることができる人だ。
現状に満足せず、改善し、改革を推し進めようとする志向性が、リーダーとしての最も不可欠な能力だとバッキンガム氏は述べている。
リーダーとマネージャー、どちらにも当てはまらない人もいる
そして、この質問に自分自身のことだけをイメージしたり、あるいは怖い上司や社長のことを思い浮かべたりした人は、どちらにも当てはまらない。
そういった人は、例えばスペシャリスト志向が強い人だったり、組織に属してまだ間もない人だったりするかもしれない。
しかし、リーダーやマネージャーなどの志向は、立場や環境によって大きく変化する可能性もあり、自身の志向と周囲とのイメージにズレが生じることもしばしばある。
世のビジネスパーソンたち全員が、必ずしも「リーダー」か「マネージャー」どちらかのタイプの当てはまるというわけではないということを覚えておこう。
リーダーとマネージャーのどちらになるかよりも、大切なのは「あなたがこれからどうなっていきたいか」ということだ。
あなたの能力に合致する働き方を都度見直し、ふさわしい仕事や環境に身を置けているかどうかを考えることで、なりたい自分に近づける可能性はより高まっていく。
今の自分がどうなのかを客観的に分析し、今のあなたがいる環境よりもふさわしい環境がないかどうか調べてみよう。
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