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自販機でダイドー缶コーヒーの売上がアップしたのはなぜ? 視点のズラしてヒットを創る『ササる戦略』

Shinpei Hayakawa

2015/08/22(最終更新日:2015/08/22)


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自販機でダイドー缶コーヒーの売上がアップしたのはなぜ? 視点のズラしてヒットを創る『ササる戦略』 1番目の画像
出典:www.airtripper2.net

 商品やサービスを提供する企業で重要な活動の一つは、顧客ニーズに合った商品・サービスの開発である。そのためにマーケティングを行い、取るべき顧客ニーズや適切なチャネルを考える。しかし、想定通りに商品が売れることはそうそうない。

 売れると思った新商品を作ってみたはいいが、実際に売れ行きが伸びない。どうしたら売れるようになるのだろうか? 多くの企業がこうした状態に陥っては、打開しようと悪戦苦闘している。

 今回紹介するのは、誰もが知っているような商品・サービスをヒットさせるために、実際行われた事業展開の方法をまとめた『ササる戦略』という一冊である。そこには、マーケティングだけでは、決して生み出せないヒットの法則があった。必要なのは「視点のズラし方」だったのだ。

業界の常識を覆した、ダイドードリンコ株式会社

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出典:blend.dydo.co.jp

 自販機販売のドリンク業界では、長らく自販機の左上が一等地として扱われていた。ユーザーの目線が左上から右下へZ字型に動くと考えられており、左上が一番目につく場所とされていたからである。そのため自販機や清涼飲料を扱うダイドードリンコ株式会社は、自社の自販機を利用しやすくするためにユーザーの目線に着目した。

 他社が自販機の左上に工夫を凝らす中、ダイドードリンコは左上以外にユーザーの目線が向かいやすく工夫するべき場所があるのではないかと考え始めていた。そこでアイトラッキングという、人の目線の集まりやすい場所を計測する技術を導入したのである。アイトラッキングによる結果は、ダイドードリンコの予想に反し、自販機で一番目線が集まりやすい場所が「左上」ではなく「左下」であることを示していた。他社とは違った視点で展開を考えたことで、新しい発見を得られたのである。これによりダイドードリンコは主力商品を左下に置くようになり、売上を伸ばすことに成功した。

 自販機の特性上、デザインは買うか否かの大きい判断材料になる。そのため、ダイドードリンコは缶コーヒーのデザインやロゴ、自販機内のPOPなど細かな所にまで、アイトラッキングによる分析をかけ、試行錯誤を繰り返し改善を行っている。

成績不振なのに観客数を伸ばし続ける、株式会社横浜DeNAベイスターズ

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by shiori.k

 横浜DeNAベイスターズと言えば、2015年に誕生4年目を迎えるプロ野球チームである。実は、この横浜DeNAベイスターズが誕生から4年連続で観客動員数を伸ばしているということをご存知だろうか? 実際、高い勝率を誇っているわけでも、歴史があり根強いファンがいるというわけでもない。それなのに観客動員数は、誕生した2011年から42%も増えている。この背景には、横浜DeNAベイスターズのアクティブサラリーマン戦略というものがある。

 横浜DeNAベイスターズは、ホームである横浜スタジアムにくるお客さんの分析を行った。分析の結果、20代から40代の男性でスタジアム近辺に住む人が多いということが分かった。これにより、上記の年代の男性の内、社交性の高い人をメインターゲットとしたイベントを増やし始めた。社交性の高い人をターゲットとした理由は、アクティブなサラリーマンは影響力もあり、同僚や女性などを試合やイベントに連れてくるだろうと考えたからである。実際、この戦略によって30代の男女の動員数は右肩上がりで増えたのだ。

 また横浜DeNAベイスターズは、アクティブサラリーマンが連れて来る人の中には、野球を知らないお客さんもいるだろうことを予測していた。そのため、野球を知らないお客さんがスタジアムに来ても満足してもらうための施策として、顧客属性に合ったカフェやスイーツ、ご飯ものの充実を図った。食事に関する流行やコストパフォーマンスなど、野球やスタジアムの運営とは外れた視点からも事業展開を考えたのである。

 横浜DeNAベイスターズは、こうしたアクティブサラリーマン戦略とそれに付随する事業戦略によって、誕生から4年連続で観客動員数を伸ばし続けている。

タイで丸亀製麺をヒットさせた、株式会社トリドール

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by klipsch_soundman

 株式会社トリドールは、「丸亀製麺」の経営を行っている企業である。丸亀製麺は、国内のみならず海外にまで出店し、現在10か国の地域に店舗がある。日本の讃岐うどんが海外で人気を得られた背景には、出店地域に合わせた事業展開という丸亀製麺の企業努力が存在していた。本書ではタイの事業例が挙げられている。

 タイでは食事はゆっくりと食べる習慣があり、日本のファストフードのように低価格であっても利用者の数で稼ごうという手法が取れない。そのため、多くの日系外食企業は一品当たりの価格を高めに設定している。しかし丸亀製麺は、日本国内と同様の低い価格で商品を提供し、パクチーなどタイで好まれる調味料を取り放題にするなどしている。また内装もタイ人の好みに合わせ派手な色のソファや照明を使い、地元民が入りやすく落ち着きやすい店舗作りをしている。

 価格は安く、商品や店舗は出店地域にいるユーザーの趣向に合わせる。国によって丸亀製麺の装いは様々である。しかし、枠に囚われず柔軟に対応することによって、丸亀製麺は出店した国で愛され、人気を得ることができたのである。


 もちろん売れる商品・サービスを考えることは重要である。しかし、その展開を間違えれば、せっかく良いモノを作っても売れないのである。商品・サービスを作った後に、どう展開すべきなのか。この本を読めば、そのヒントが得られるはずだ。



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