by mamnaimie piotr
「SF小説を読んだことがない」という方はどれほどいるだろうか。今のご時世、小説を読む人すら希薄している中で、SF小説を読んでいる人間は稀なのかもしれない。
しかし、SF小説の描く世界は現実逃避であり、同時に私たちに現実を教えてくれる世界でもあるのだ。え、矛盾してるって? そうは言わずに、まずはSF小説の世界についてご紹介させていただきたい。そして、初心者にもおすすめできるSF小説界の名作をご紹介しよう。
SFという“世界”が持つ魅力
SF、サイエンス・フィクションとは空想科学の意であるが、皆さんがイメージしているものほど堅苦しい小説ではない。あくまでサイエンス・「フィクション」であり、「サイエンス」・フィクションではないのだ。
SF小説作家は、あくまでフィクションの書き手であって、サイエンスの書き手ではない。彼らが紡ぐ世界(科学)は確かに論理性を欠いてこそいるが、そんな空想世界で彼らが描こうとしているもの。それは人間の在り様なのだ。
SF小説作家が紡ぐ世界は、何かしらの「ルール」が変わった世界なのだが、そこに登場するのは我々のような“普通の”人間。SF小説とは、そんな普通の人間が尋常ならざる世界でどう生きるかを描いた、ある種のシミュレーションなのだ。
SF小説を読むことを、一概に現実からの逃避行と捉えてしまうのは適切ではない。そのSF小説の世界は今、私たちのいるこの世界の実在、姿をまざまざと知らしめてくれるのだ。それがたとえ、良かれ悪かれではあるが。
とは言え、SF小説は現実逃避のための小説としても有能。日々の重労働の中にあって、SF小説はあなたの息抜きを手助けしてくれる趣味になるかもしれない(SF小説に熱中してしまって、逆効果になる可能性は拭えないが)。
とにもかくにもSF小説は一瞥の価値があり、今回は初心者の方でもスラスラ読めるようなSF小説界の名作ばかりをまとめてみた。無論、筆者もこのSF小説を全て読んでいるわけだが、どれも甲乙つけがたい名作ばかりだ。
初心者にもおすすめしたい名作SF小説①『幼年期の終わり』
未知との遭遇とヒトの未来
出典: Amazon.co.jp 人類が宇宙への進出を果たしたその日、地球は未知の宇宙からやってきた謎の生命体の一群に包囲されてしまった。未だ人類が直面したことのないような歴史の大転換期。その中で人類の進んでいく道を描いたSF小説史上屈指の名作。
未知の外来生物(俗に言うところの宇宙人)との出会いや彼らとの触れ合いの中で、ヒトはどんな反応を見せ、そしてどうやって歩んでいくのか。そして、そんな人類が迎える終着点とは――。圧倒的なSF的世界観の中で繰り広げられる“ヒト”と“未知”の物語。
作者のアーサー・C・クラークはSF小説界の3大巨匠・ビッグスリーのうちの一人に数えられるSF小説界の巨匠。映画にもなったSF小説『2001年宇宙の旅』や本作など、「宇宙と人類の進化」を壮大に描く作風が特徴的なSF小説作家。
SF小説のなかで、社会の在り方を問い続けながらも、決してただのディストピア的社会の描写ではない。SF小説の世界観を掴むの最初の一冊に非常におすすめな一冊であり、SF小説の名作中の名作。
初心者にもおすすめしたい名作SF小説②『華氏451度』
“本”が無い世界?
出典: Amazon.co.jp 「書物が忌むべき禁制品となった世界」というルールの破綻から始まるこのSF小説は、そんなディストピア的未来世界で人間がどうなっていくかをまざまざと風刺した名作中の名作。
このSF小説の作品全体を通して言えることは、ユーモア溢れる言葉使いが非常に興趣にあふれ、人間の本質が垣間見れるSF小説だろうということ。鬼気迫るようなサスペンス感はないものの、全体を通してまさに「考えさせられる」SF小説だ。
初心者にもおすすめしたい名作SF小説③『星を継ぐもの』
5万年前の死体から始まるミステリー
出典: Amazon.co.jp 月面にて発見されたのは、宇宙服を着た5万年前の死体。一つの死体から始まる大きな謎。SF小説らしい骨のある科学的世界観と徐々に明らかになっていく5年前の死体の正体。鬼気迫るミステリー調で展開していくサスペンスフルなストーリーが素晴らしいSF界きっての名作。
作者のジェイムス・P・ホーガンはイギリスのSF小説界の巨匠で、日本でも3度にわたって星雲賞を受賞した人気作家である。ハードSF小説というジャンルに分類される彼の小説の多くは、科学とはどうあるべきかという問題に対するホーガンの見解が反映されている。
このように、ホーガン作品の中には少し難しい(理解しずらい)部分もあるが、本作『星を継ぐもの』に関しては自信を持っておすすめできる名作だ。サスペンス小説が好きな人にもおすすめな一冊で、うっかり深夜に没入してしまいがちな一冊だ。
初心者にもおすすめしたい名作SF小説④『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
“誰”が人間で、“どれ”がアンドロイド?
出典: Amazon.co.jp 賞金稼ぎ(バウンティハンター)である主人公のリック・デッカードは、火星から地球に逃亡してきた8体の人間型ロボット・アンドロイドを「処理」するという任を与えられる。電気動物やムードオルガン、共感(エンパシー)ボックスなどのSF的機械が登場し、その中での主人公リックのとある「1日」を描いている。
80年代に公開され、カルト的人気を博した映画『ブレード・ランナー』。その原作となったのが本書『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であり、最近ではアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』とのタイアップなど、今でも絶大な人気を博している名作。
アンドロイドとの関わり合いの中で、人間とは何かについて考えさせられるSF小説の名作中の名作。SF小説の表現力が遺憾なく読み取れる作品で、圧倒されるような世界観こそなけれど、どこを読んでも興趣に長けていて非常に読み応えのある一冊。SF小説初心者にも心からおすすめできる名作中の名作だ。
SF小説が描く世界に幾ばくかでも興味を感じて頂けただろうか。社会人と言えど、読書をするぐらいの時間はあるだろう。毎日の通勤や帰宅後の数時間に、ぜひこれらの名作SF小説から手にとってみて欲しい。
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