オフィスでのランチタイム、手元にあるカップラーメンを見ながら「今日も不健康だなあ」とつぶやくビジネスパーソンは多い。不健康なのはわかっていながらも、弁当をつくるのがあまりに面倒で、外食やインスタントにどうしても頼ってしまう。糖尿病まっしぐらであることは理解しながら、それでもまっしぐらに進んでしまうのがビジネスパーソンの抱える“ジレンマ”だ。
そんな人たちを健康にするべく、2014年からあるサービスが始まった。その名も「OFFICE DE YASAI」である。文字通り、オフィスで野菜が食べられるよう、野菜を「置いておく」サービスだ。現在ではおよそ150社が導入しており、今後も増えていく見込みがある。
OFFICE DE YASAIを運営している企業・KOMPEITOは、2012年に設立されたばかり、従業員8人の小さな会社だ。しかし、KOMPEITOがやろうとしていることは、地方の農業に再び活気を取り戻す無限の可能性を秘めている。今回は、KOMPEITOのサービスであるOFFICE DE YASAIの可能性、そしてKOMPEITOが目指す理想の社会について紹介していく。
「野菜摂取」に悩めるビジネスパーソンを救う「配置野菜」
出典:www.facebook.com 農林水産省の調査によると、日本国民1人あたりの野菜の消費量が昭和46年には119kgあったものの、平成23年には91kgまで減少しているのだという。また、年代ごとで1日の野菜摂取量を分析したところ、厚生労働省の定める1日あたりの摂取目標量350gに達している世代は1つもなく、20代から40代の3世代は100g近く足りていないというのだから驚きだ。現代に生きるビジネスパーソンは、それほどまでに野菜というものを摂取できていないのだ。KOMPEITOは、そこに着目した。
KOMPEITOがターゲットにしているのは、そんな“野菜不足”のビジネスパーソンたちだ。野菜をしっかりと摂れていない社員を案じている企業にとって、このサービスはまさに「救世主」なのである。KOMPEITOのおかげで食生活が改善され、生活習慣病が防がれた人は少なくない。
野菜の流通構造を変えて「第一次産業」を元気に
総務省統計局が出しているデータによると、終戦直後の1950年には48.5%あった「第一次産業」の就業人口が、2010年では4.2%と実に10分の1にまで減少してしまっている。もちろん、第三次産業が活性化したからという理由も大きいものの、やはり一番に挙げられるのは「収入の低さ」である。平均年収.jpでは農家の平均年収を200~300万円と定めており、ここからも農家が生活に苦しんでいることがうかがえる。
そんな危機を打破するべく、KOMPEITOが考えたのは「流通構造の改善」である。これまでは、農家から消費者の手に渡るまで、農協や市場、仲卸業者など、実に様々な業者が媒介されてきた。普段スーパーで買っている定価のうち、ほとんどはこれらの業者に渡ってしまっている。
KOMPEITOが行なっている流通形態は今までのとは少し異なった独自のものだ。まずは農家が収穫した野菜を専用の拠点で殺菌・パッキング。それをKOMPEITOが保有する小型倉庫へ送り、そこからオフィスに無料レンタルしている冷蔵庫へ送り届ける。こうすることで、農家と消費者の間にはKOMPEITO以外の媒介がなくなり、消費者のお金がダイレクトに農家に渡りやすくなるのだ。
扱う野菜は「規格外」のものも
KOMPEITOが農業に対して改善しようと試みているのは、何も流通に限った話ではない。KOMPEITOが取り扱っている野菜の中には、通常市場に出回ることのない大きさの「規格外」野菜も含まれている。そう、本来なら廃棄されてしまうような野菜も利用しているのだ。
そもそもOFFICE DE YASAIはオフィスで食べる野菜を配達するビジネス。特性上、通常のサイズではオフィスで食べきれないなど、なかなか扱えないような野菜もある。しかし、規格外に小さい野菜なら、オフィスで食べきれるサイズのものもある。規格外の野菜を取り扱うということは、KOMPEITOと農家の両方にとってWIN-WINなのだ。ナスやマンゴーなど、現在では実にいろいろな野菜の「規格外」がオフィスに運ばれている。
KOMPEITOがOFFICE DE YASAIを通じて行おうとしていることは、単純なサラリーマンの体質改善や地方創生という言葉で集約できるものではない。それよりももっと壮大な、産業そのものを根本から改善していく可能性を秘めたビジネスなのではないだろうか。
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