松下電器産業――現パナソニックの創業者である松下幸之助の下で、20年以上部下として働いた江口克彦という人物がいる。彼は「良い仕事をするためには優れた上司だけではなく、優れた部下が必要である」と考え、部下としてどうあるべきかを模索し続けた。
良い部下の法則というのは、単に評価されるためのものではない。期待を受け止め、成果を挙げ、自ら成長するためのものであると江口克彦氏は述べる。
今回は、江口氏が松下幸之助の下で学び得られたものを記した『部下論 上司に評価される20の法則』という一冊を紹介する。
身の丈以上の仕事をこなすために必要な「3つのJ」
楽しく仕事をすることが大事。ここでいう「楽しい」とは、達成感などがあるということである。仕事は基本的に厳しく辛いものだ。しかし、そこに熱意を持って向き合い乗り越えることで、達成感や充実感、つまり仕事における楽しいを得ることができる。
熱意がありやる気がある部下に対しては、上司も期待を持ちやすい。そして期待する部下には、一つ高い段階の仕事を任せるようになる。部下の側からしたら、少しレベルの高い仕事や多くの仕事を任され、さばききれなくなる可能性が出てくる。しかし、そういう時に3つのJをこなせば、与えられた以上の仕事をこなすことができるようになると江口氏は述べる。
3つのJとは、順番・時間・充実の頭文字である。仕事の順番を決め、実働する時間を決めたらそれを必ず厳守する。これによって仕事を効率よくこなし、時間を生み、充実した仕事を行えるようになるのだ。この3つのJを行うために必要なものも熱意である。
伸びる部下は「愛嬌と明るさ」を持つ
著者は、部下は職場における明るさや愛嬌を持つべきであると述べている。これには2つ理由がある。
1.明るい部下には、難しい仕事を振りやすい
困難の伴う仕事を任されて喜ぶ部下は少ないだろう。まして、その仕事任せたことによって部下がつぶれてしまうようなことがあっては困る。しかし、普段から明るく振る舞っている部下には「こいつは積極的に受け持ってくれるだろう」と思えるのである。
2.話しかけやすい人には、仕事も情報も自然と集まる
一つ目の理由にも近いが、愛嬌のある人には仕事を任せたり話しかけたりしやすい。情報や仕事の高度化が進む中で、必要な情報収集スキルは「いかに自分で情報を集めるか」ではなく「いかに自分に情報が集まるか」であると江口氏は述べる。
前項でも述べたが、難しい仕事ほど自分を成長させることができる。また仕事や情報が多いということは、それだけ自分のスキルやアイデアを広げることが出来るのである。優れた部下になるために、愛嬌と明るさは重要な要素である。
上司の指示にプラスαする
上司から仕事を与えられ、ただこなすだけでは、部下はストレスが溜まり仕事に嫌気が差してしまうようになる。では、どうすれば良いのか? 指示通りに動くだけではなく、自分で考え行動するように仕事をこなせば、ストレスを感じることはなくなると江口氏は語る。
上司から仕事に10を求められたら、部下は自分の主体性やプライド、熱意を1として加え、仕事に11の成果を出すようにする。こうすることで、「上司に与えられた仕事」を「自分の仕事」にすることができるのだ。
松下幸之助は「社員稼業」という言葉をよく口にしていた。これは、社員一人一人が会社に使われるのではなく、自分の仕事を経営する経営者となって取り組むということである。
会社に入れば、まず初めに就くポジションは誰かの部下である。まずはこの本を読んで優れた部下になることが、今後の足掛かりとなるはずだ。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう