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戦略は「すること・しないこと」の選択:世界最強の消費財メーカー『P&G式「勝つために戦う」戦略』

Shinpei Hayakawa

2015/07/31(最終更新日:2015/07/31)


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出典:www.emirates247.com
 企業における戦略とは何だろうか? 戦略の定義や戦略立案に頭を悩ませ、既存の方法の改善や新規事業の立ち上げなどに終始しているリーダーは多いだろう。

 戦略とは、企業が勝ち残ってくための選択を行うことである。しかし、自社ブランドをつくり、競合に対し持続可能性や優位性など優れた価値を生み出すといった具体的な戦略を行えている企業は少ないと、世界最強の消費財メーカー・P&Gの元CEOであるA.G.ラフリ―氏は述べる。

 ラフリー氏は、CEOに就任していた2000年からの10年間で自社の売上を2倍にし、利益を4倍に跳ね上げ、P&Gを世界で最も価値のある企業の1社にのし上げた立役者だ。そのラフリー氏がまとめた戦略書『P&G式「勝つために戦う」戦略』という一冊である。

勝利のための5つの選択

 P&Gと聞けば、化粧品や日用品といったいくつかの商品が浮かぶだろう。それだけ認知度があるということは、各市場において自社ブランドで高い収益を出しているということである。ラフリ―氏は、各市場で成功を収めるためには「何をし、何をしないか」を明確に判断することが必要だと語る。その為に必要な観点として、本書では次の5項目を挙げてる。

勝利のための5つの選択

1. 勝利のアスピレーション(憧れ)
2. 戦場選択
3. 戦法選択
4. 中核的能力
5. 経営システム

 この5項目を用いて、実行可能で持続的な戦略を作り上げることが、競合に対して優位性をもった価値を生むことが出来る。次項では、最初に行なうべき1~3の選択に関して詳しく紹介していく。

勝利のアスピレーション(憧れ)

 勝利のアスピレーションとは、「どんな勝利を望んでいるか」という全ての選択において軸となる部分である。この軸があることで、どんなに難しい判断であってもアスピレーション(憧れ・望み)に対して、必要か否かで取捨選択をして判断を下すことが出来る。

 例えばP&Gの化粧品ブランド「オレイ(OLAY)」の場合、「北米で市場シェアトップ」「売り上げ10億ドル」「世界的トップブラント地位を得る」といったアスピレーションがある。もしこれが不明確なまま市場へ参入してしまえば、目標が無いために勝てる見込みはない。

 ラフリ―氏は、適切なアスピレーションを設定するためには、「誰が顧客か」「誰がライバルなのか」を明確にする必要があると述べる。消費者やそのニーズを意識し、ライバルとなる競合の優れた点や戦略を観察することで、自社はどういった戦略を立てればいいのか見えてくるのである。

 次項では、戦場選択(誰が顧客か)と戦法選択(誰がライバルか)を考える方法を紹介する。

戦場選択と戦法選択

 まずは戦場選択である。「どこで競争し、どこでは競争しないのか」を考えることだ。P&Gでは、消費者を訪問・観察し、満たされていないニーズや競合が満たしているニーズを探すところから始める。そうして得られた情報から、自社が勝てる見込みのある市場やセグメント(ニーズや顧客層などの分類)を考えるのである。その際、ベターな選択を心がけろとラフリー氏は教える。具体的には、「魅力の大きい勝つ見込みのない市場に挑戦するより、魅力が薄くとも勝てる見込みのある市場を選ぶ」ということである。

 次に戦法選択である。本書では、競合の多い市場で成功する戦略は、低コスト戦略差異化戦略であるとしている。低コスト戦略とは、市場内で競合より値下げを行うことで市場占有率を上げるというコスト優位性を生む方法である。しかしこの戦略は、低コスト帯を維持できる環境を持つ企業だけが行える。差異化戦略とは、消費者のニーズと製品を合致させることで継続的なユーザーを掴み、競合製品を選択させない方法である。これには、競合よりも消費者ニーズを捉えられているかどうかが鍵となる。


 戦略を考え、実行し、成功するためには、各フェーズで明確な選択・判断を行う必要がある。今日紹介できていない残り2つの選択を含め、この本を読んで勝つための戦略術を身に付けてほしい。



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