HOMEなぜサイゼリヤは安くて美味いのか? 外食業界の革命児・正垣泰彦氏の経営哲学『サイゼリヤ革命』

なぜサイゼリヤは安くて美味いのか? 外食業界の革命児・正垣泰彦氏の経営哲学『サイゼリヤ革命』

Shinpei Hayakawa

2015/07/26(最終更新日:2015/07/26)


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なぜサイゼリヤは安くて美味いのか? 外食業界の革命児・正垣泰彦氏の経営哲学『サイゼリヤ革命』 1番目の画像
出典:mkobayas.cocolog-nifty.com

 イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」。一度は誰もが行ったことがあるだろう。

 サイゼリヤは、イタリアンレストランでありながら、その安さと美味しさに驚かされる。ここには、経営陣の「1人でも多くの人に気軽に美味しいイタリアンを食べてほしい」という思いと企業努力があるのだ。

 では実際、サイゼリヤは、価値を提供し続けるために何をしているのか? 今回は、サイゼリヤの企業努力や工夫をまとめた『サイゼリヤ革命』という一冊を紹介する。

サイゼリヤは、なぜ安さにこだわるのか?

 サイゼリヤは、1967年に一号店を千葉県の市川に出店した。創業当初は軽食中心の大衆食堂であり、今のようなイタリアン専門店ではなかった。その後、方針転換でイタリアンレストランとなる。

 イタリアンレストランとして商売を始めた当初は、思ったように売り上げが伸びず、苦しい経営が続いていた。そこで創業者である正垣泰彦氏は、思い切って大幅値下げを実施した。結果、客足は何倍にも増え、正垣氏は低価格化の影響の強さを痛感したのだ。

 その後、より多くの人に喜んでもらうために「安くておいしいものを出すことが一番の社会貢献」と正垣氏は考え、それをサイゼリヤの企業原則とした。しかし美味しいということは、それなりに品質の高いものであり、決して材料費が安いわけではないはずだ。では、なぜサイゼリヤは美味しいものを安く提供出来るのか? 次項で詳しく見ていこう。

「サイゼリヤ」美味しさの秘密

なぜサイゼリヤは安くて美味いのか? 外食業界の革命児・正垣泰彦氏の経営哲学『サイゼリヤ革命』 2番目の画像
出典:flickr.com

 外食業では「びっくりさせる美味しさ」が提供する価値の基準となる。具体的には、お祝いなどの特別な食事の提供が外食業の仕事である。しかし、正垣氏は「毎日食べても飽きない美味しさ」が基準であると述べる。そのため組み合わせによって、美味しさを倍増できるようにコースではなく単品ごとのメニューになっている。

 しかし、食事そのものの美味しさはどうやって生んでいるのだろうか? サイゼリヤでは、主に二つの手法が取られている。

コールド・チェーンシステム

 材料となる食品の生産から消費に至るまで、冷凍・冷蔵・低温の状態で流通させる。鮮度を保つために非常に有効な手法。

バーチカル・マーチャンダイジング

 原材料の調達・流通・販売を一括して自社で行う方法。メーカーや仲介業者を通すことにより発生する利益を全て自社のものにし、また農産物など自ら開発を行えるため、自社の趣向にあったものを低コストで手に入れることが出来る。

 こうした材料費の削減や品質の保存を行うことで、サイゼリヤは安く美味しいものを提供出来るのである。では、なぜこうした工夫を行うに至ったのか? 次項で見ていく。

経営=改善の継続

 チェーン展開を拡大すると、店舗によって売り上げが異なったり経営状態が変わったりなど、企業として標準化が難しくなる。また、売上ばかりを気にすることにより新規事業に手を出したり、売り上げトップの店舗を基本モデルとして環境の異なる他店舗にも同じ手法を取らせようとしたりしてしまう。これは既存事業や経営を迷走させる一因でもある。

 しかし、サイゼリヤは違った。「お客様に安く美味しいものを提供する」ことだけを理念として持ち、それが十分に行えているか否かだけを基準に各店舗ごとに改善を行い、実績を出せたのだ。企業理念が確立しているからこそ経営がブレず、「安く美味しい」を全店舗の標準・基準としたからこそ前項のような努力・工夫を行えたのである。


 もちろん企業として成功した例や工夫・努力も様々である。だからこそ何をしたら必ず成功するとは言えない。しかし成功例とその過程にある失敗から学べることは多い。ぜひ、この本を読んでサイゼリヤという一例をあなたの学びに繋げてほしい。



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