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聞き上手が秘める「伝家の宝刀」阿川佐和子流インタビュー術:『聞く力―心をひらく35のヒント』

中村麻人

2015/08/20(最終更新日:2020/09/25)


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聞き上手になりたい!」と思っている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、聞くことのプロフェッショナル阿川佐和子さんが著した『聞く力―心をひらく35のヒント』の内容を抜粋してご紹介します。

阿川佐和子さんの体験談とそのヒントから、阿川佐和子流のコミュニケーション術を学んでいきましょう。

本記事の内容をざっくり説明
  • 聞き上手への近道は、ただ「面白そうに聞く」こと
  • 聞き上手になればなるほど、「聞く醍醐味」を味わえる
  • インタビューを極めたい人におすすめの本

 

聞き上手への近道は、ただ「面白そうに聞く」こと

本記事で紹介する『聞く力―心をひらく35のヒント』の著者、阿川佐和子さんは「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)で司会を務め、タレントや作家など様々な分野で活躍をしています。阿川佐和子さんが取材をした各界著名人は、1000人近くになるといわれています。

今ではインタビューのプロともいわれる阿川佐和子さんですが、実は、インタビューが苦手だったといいます。

阿川佐和子さんは、読者からの反響が大きい週刊文春の対談ページにおいて、インタビュアーという仕事を任されました。

しかし、インタビュアーを任された時は不安で不安で仕方がなかったといいます。なぜなら、週刊文春の前任者であるデーブ・スペクターのような斬新で鋭い質問はできないと思っていたからです。

しかし、阿川さんは「あるインタビューをきっかけに目標を持てるようになった」といいます。

そのインタビューとは、翻訳者である城山三郎さんのインタビューです。

城山三郎さんが翻訳したビジネス書『ビジネスの父より息子への30通の手紙』(新潮文庫)が世界的ベストセラーになった際、阿川佐和子さんは城山三郎さんにインタビューをすることになったそうです。

阿川佐和子さんは、その本を翻訳する際に気を付けたことや翻訳する際に難しかったことなど様々なことを質問する予定でしたが、ついつい自分の話ばかりをしてしまったようです。

終いには、当時の雑誌編集長に悲しそうな顔で「今日は阿川さん、一人で喋っていましたね」とまでいわれたといいます。

城山さんは、ただひたすら「そう」「それで?」「おもしろいねぇ」とほんの一言挟むだけで、あとはニコニコ楽しそうに阿川佐和子さんの話を聞いていました。


インタビューの失敗を後悔するとともに、「相手ががただニコニコと聞いてくれていただけだというのに、なぜあんなにもぺらぺらと喋ってしまったのか」と阿川佐和子さんは疑問に思ったそうです。

阿川佐和子さんがその時に気づいたことは、聞き上手とはデーブスペクターのように切り込んでいくことだけではないということでした。

相手が「この人に語りたい」と思えるような聞き手になることが、自分が目指すべき聞き上手への道だということに気づいたそうです。

そして、聞き上手なインタビュアーなら自分でもできそうだと確信を持ち、阿川佐和子さんは相手の話を面白そうに聞けるような聞き上手を目指すことになったといいます。

 

聞き上手になればなるほど、「聞く醍醐味」を味わえる

「面白そうに聞く」ことで、聞き上手になろうとした阿川佐和子さん。苦戦したインタビュー経験はどんなものがあるのでしょうか。

ニヒルなことが特徴である俳優・渡部篤郎さんをインタビューしたときは、阿川佐和子さんはインタビューを諦めかけたといいます。

インタビューの際、渡部さんは少し斜に構えた姿勢でどんな質問にも淡々としていました。

阿川佐和子さんの質問一つ一つに対してちゃんと答えてはくれていたけれど、渡部さんのテンションは上がってきませんでした。阿川佐和子さんはずっと気まずい状態を打破しようとしていましたが、結局状況を改善できなかったといいます。

しかし、対談が終わった後、渡部さんは阿川佐和子さんに「非常に話しやすかった」と告げられたそうです。

阿川佐和子さんは、「人は皆、自分と同じ顔で、喜んだり悲しんだり寂しがったりするとは限らない」ことにその時初めて気づいたとのこと。

自分が「楽しくなさそう」に見える人だって、心の中で跳び上がるほど楽しいと思っているのかもしれません。

話を聞くことで、自分でも思ってないようなその人の意外な特徴を知れるのが「聞く醍醐味」だと阿川佐和子さんはいいます。聞き上手になればなるほど、この聞く醍醐味を味わえるようになります。

 

聞き上手が実践するインタビューにおける「伝家の宝刀」

では、どのようにして「面白そうに」人の話を聞けるのでしょうか。

面白そうに聞くことにもコツがあります。

相手の話を楽しんで聞いているように見せるコツとは、聞いている相手の人生の癖を見つけ出すことです。阿川佐和子さんが映画『そして父になる』の監督を務めた是枝裕和さんのインタビューを行った時に、コツを実感したようです。

是枝さんは、早稲田大学文学部に入学しましたが、外国語が週に6時間あるためにすぐに行かなくなったそうです。

また、大学をやめた後、脚本の勉強をするために「YMCAシナリオ講座」に通い始めますが、1年間でやめてしまったといいます。

このような是枝さんの話が連続して続いていたときに、阿川は、「組織に入ると、すぐ嫌になっちゃう人なんですか?」と聞いたそうです。

是枝は「そうなんです。最近わかってきたんですけど」と返したといいます。

「見ている他人はすぐにわかることでも、自分自身でやっていることはわからないもの」ということを指摘することが聞き上手のコツだとわかったそうです。

是枝さんの人生の癖を指摘してからは、会話にテンポが出てきて円滑にインタビューできたといいます。

このコツを正しく使えれば、相手に対して深く相手を理解していることを示せます。

相手の話している内容から相手の為人を感じて、伝えることが、面白そうに聞くコツです。

 

インタビューを極めたい人におすすめの本

これまで紹介してきた阿川佐和子さんの経験が詰まった『聞く力―心をひらく35のヒント』。

「聞く力を極めたい」「相手に心を開いて話して欲しい」という方は、本書をぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
 

また、さらにインタビューを極めたい人におすすめの本をご紹介します。

インタビュー術! 』(講談社現代新書)では、初歩的なインタビュー術が紹介されています。

インタビュー術を基礎から学びたい人や復習したい人におすすめです。
 

また、『聞き出す力』では、著者のたくさんの経験から得られたものや、著者独自のインタビュー術が書かれています。

インタビューの面白さや痛快さが書かれた本です。他の人のインタビュー経験を知りたい方にもおすすめです。

 

インタビュー術を学びたい人は一読してみよう

本記事のまとめ
  • 相手の話を「面白そうに聞く」ことを意識する
  • 相手の意外な特徴がわかることが聞くことの醍醐味
  • 相手の話の流れから相手の癖を見つける

本記事では、阿川佐和子さんの『聞く力―心をひらく35のヒント』を抜粋してご紹介しました。

インタビューをするときには、特別な技術やテクニックがなかったとしても、「ただ楽しそうに聞く」だけでも相手の話を聞き出せれます。

本記事でご紹介した阿川佐和子さんのインタビューテクニックを実行しつつ、聞く力を磨いてみてはいかがでしょうか。

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