最近、経営トップの後任を“外部”から招く企業が増えている。いわゆる“プロ経営者”の招聘だ。生え抜きの優秀な社員をそのまま社長に登用するケースや、親族に跡継ぎをさせるという時代は終了しつつある。
しかし、プロ経営者とひとくくりにしても、もたらす効果はさまざまである。今回は2015年7月21日放送のテレビ東京『ガイアの夜明け』に合わせ、そんなプロ経営者たちを迎え入れる企業側の狙い、そしてその裏にある想いに迫る。
なぜ“プロ経営者”を招くのか?
経営者という立場上、なにかと「自分がこの会社を大きく成長させてやる」というマインドのもと就任することが多い。というより、そういったマインドなくしては、経営者という立場は務まらない。
会社が成長を遂げるためには、必ず「大きな変革」が必要となる。同じ会社で努力を続け、のし上がってきたいわゆる“たたき上げ”経営者の場合、この「変革」に踏ん切りがつけられないことがある。多くの場合、「過去の上司の面目をつぶす」ということや「先代の社長の意思に反する」といったような、人間関係のしがらみや経営に無用な義理人情が原因だ。長くいればいるほど、その会社に対して「主観的な判断」を下しがちになってしまう。
外部招聘したプロ経営者たちの場合、もちろんそういった人間関係のしがらみが一切ない。プロ経営者は社風に全く染まっていないため、会社の方針に対して客観的な判断を下すことが出来る。現タカラトミー副社長のハロルド・メイも、自社に対してイノベーションを巻き起こすのでは、と噂されている。外国人のプロ経営者という立場から、タカラトミーに足りていない視点を提供してもらおうというのが狙いだ。
外国人プロ経営者のスゴいところ
プロ経営者として会社のトップに招かれる人の中に、日本人ではない人がいることがある。トヨタ自動車の元常務役員、ジュリー・ハンプもそんな外国人プロ経営者の一人だ。麻薬密輸容疑で逮捕され、その職を辞任したものの、彼女の持つキャリアは「一流」の一言に尽きるものだった。
外国人をプロ経営者として招くことで、社内の雰囲気を一気に「グローバル化」することが出来る。自分の上司に外国人がいるということで、社員も英語や第二外国語に対して意欲的に学習する光景がみられる。国際的な戦略を掲げようとしているか企業にとって、外国人プロ経営者はまさに「一石二鳥」なのだ。
中小企業再建に挑むプロ経営者「小野賢一」
出典:www.tenryuseiki.co.jp プロ経営者を招く企業は、何もタカラトミーやトヨタなどの大企業だけではない。クリームはんだ印刷機などの製造を行っている中小企業「天竜精機」は、2014年11月、大企業での経験を持つ小野賢一を代表取締役社長として新たに迎えた。
天竜精機の前社長・芦部喜一は、自分が退いた後の「後継者」がいないことに頭を悩ませていた。そんな折、現れたのが現社長の小林賢一だった。自分が理想とする後継者として、小林賢一は自分が持っていない強みを持った存在だったのだ。
大企業の出身でもある小林賢一を迎え入れることで、社内に「この会社は変わるのではないか」という雰囲気を創ることに成功した。後継者問題などどこ吹く風、と言わんばかりに天竜精機は非常に順調だ。小林賢一は、天竜精機を本当に変える存在になっていくのかも知れない。
プロ経営者に経営トップを委ねる会社は増えつつある。しかし、プロ経営者を招く背景は様々であり、一概にすべてを「革新のためのプロ経営者」と言うわけにはいかない。今後増えていくであろうプロ経営者たちが、どう会社を変えていくのか期待が高まる。
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