7月上旬を中心に、梅雨明けを控え、全国各地の海が「海開き」を始めている。神奈川県逗子市の逗子海水浴場も、6月末に海開きを行ったばかりだ。
逗子海水浴場といえば、つい1年前の2014年に条例規制を改定し、海岸での様々な行為の規制を強化したことで有名だ。その規制の強さゆえ、一部の人からは「日本一厳しいビーチ」などと称されることもある。
なぜ逗子海水浴場は「日本一厳し」くなってしまったのか。今回は、逗子海水浴場の規制強化の効果、そしてこれに踏み切った背景を見ていく。
「海の家のクラブ化」も「タトゥー」も禁止、夜は18:30までに
出典:www.city.zushi.kanagawa.jp 2010年、逗子海水浴場の来場者数は709,500人を記録し、過去最多となった。海に訪れる人が爆発的に増加したことで、この年の逗子海水浴場内は、非常に治安が悪かったという。海の家が爆音を鳴らして「クラブ化」していたり、砂浜のいたるところに酒瓶が転がり落ちていたりと、風紀が乱れに乱れていたのだ。これらのことを述べた、32件もの苦情が逗子市に寄せられ、逗子海水浴場は対応を余儀なくされた。
これらの現状に対応するべく、2013年に神奈川県は「海の家における海岸利用に関するガイドライン」を制定、海水浴客のマナー向上、海の家の規制強化に努めた。その結果、2013年の来場者数は417,000人と前年比で43%も減少してしまった。しかし苦情は減らず、2014年度に条例規則を改定することとなった。
この規制を受けて、逗子海水浴場はさらに来場者数を減らした。2014年の来場者数は201,300人と、ここ10年で最低の数値となってしまった。
では、一体なぜこのような規制強化に踏み切ったのか。そこには、地元のこと、環境のことを想う逗子市の姿があった。
「来場者数」より大切な「地元を想うこころ」
出典:housemory.blog95.fc2.com 逗子市のキャッチコピーといえば、「青い海とみどり豊かな平和都市」である。しかし2013年までの逗子海水浴場はとても「平和」とは言えない状態だった。逗子海水浴場の周りに住む住民たちは、夏になると毎回、海の家から流れる大音量の音楽や、夜遅くまで騒いでいる来場者のマナーの悪さに辟易していたという。海の近くに住んでいる人が、夏が来るとウンザリしてしまうというのは、何とも皮肉な話である。
そんな住民たちの声を受け、逗子市は条例の改正に踏み切った。もちろん、改正することに反対する「海水浴客」の声も多く届いた。逗子市長・平井竜一はそれを直接受け止め、それでもなお改正を実施した。逗子海水浴場のもたらす経済効果よりも、住民の声を優先したのだ。
客足の落ち込んだ逗子海水浴場、対策は?
いくら住民の声を優先するといっても、逗子市にとって逗子海水浴場のもたらす経済効果は大きい。客足が20万人近くに落ち込んでしまった昨年の結果を受けて、逗子市は新たな取り組みを行っている。
規制強化により「平和」になったことを武器に、「ファミリー層」にターゲットをしぼった施策を打ち立てた。これが「海岸のライトアップ」である。海の家で食事をしながら、ライトアップされた海岸の景色をファミリー層に楽しんでもらいたいというねらいがある。マナーの悪い「若者」が逗子海水浴場からいなくなった今、これからの逗子海水浴場は新たなターゲット「ファミリー層」へ焦点を当てていく方向へシフトした。
「日本一厳しい」ビーチという、一見“不名誉”な称号を背負っている逗子海水浴場。しかしこれは、地元を想うこころが「日本一」という意味で大変に“名誉”ある称号なのではないだろうか。逗子海水浴場の今後の「平和」な発展に期待する。
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