あなたはコンビニなどでお茶を買うとき、何を基準に選んでいるだろうか。今では多くのお茶製品が並んでおり、何を選べばいいのか分からない人もいるだろう。
ペットボトルのお茶飲料が激戦を迎えている中で、頭一つ抜きん出ているブランドが存在する。伊藤園の「お~いお茶」だ。89年に「煎茶」から名前を変えた時から、現在に至るまで、35%近いトップシェアを握り続けている。
では、なぜお~いお茶がこれほどの人気を獲得することができているのか。今回は、伊藤園が行っている古き良き文化が生んだ“ある”施策を紹介する。
お~いお茶独自のイベント「新俳句大賞」
出典: Amazon.co.jp お~いお茶で行われている「独自のターゲティング戦略」、それは「新俳句大賞」である。古き良き日本文化である「お茶」と「俳句」を結び付けて考えられた、俳句の創作コンテストである。入賞作品は、お~いお茶のラベルを通じ、全国の購買者へと広がっていくシステムだ。
この新俳句大賞は、お~いお茶の発売から5年が経った1989年にスタートした。「奥の細道」300周年ということもあり、当時は俳句がひそかなブームとなっていた。
では、新俳句大賞は、どのような形でシェアの拡大につながっていったのか、その具体的にみていこう。
「俳句の腕試し」としての新俳句大賞
このころあった俳句ブームというのは、何も「聴く」だけの話ではない。「作る」側になろうとしている人も多かった。しかし、俳句のルールの多さゆえ、なかなか「行動」に移せる人はいなかった。加えて、既存の俳句の創作コンテストはどれもレベルが高く、とても初心者が出せるものではなかったのだ。
そこで新俳句大賞は、従来の俳句のルールを重要視せず、「表現力」に重点を絞るようになった。5・7・5のリズムでなくとも、内容がよければそれを評価するというようにしたのだ。これが「新俳句」である。
すると、新俳句大賞には初心者・上級者を問わず続々と俳句が集まった。第一回にしてその数は何と41,000句である。現在では、1,740,000句近い数が投稿されており、お~いお茶のラベルは「登竜門」的存在として俳句界隈で親しまれている。
俳句の大半は「学生作」
俳句といえば、高齢者を想像しがちである。セカンドライフを楽しむために、なんていう感覚で俳句を始めている人は事実多い。しかし、新俳句大賞に寄せられる俳句の9割近くが学生の作品であるというから驚きだ。
なぜ学生からの俳句の投稿が多いのだろうか。それは、お~いお茶が文部科学省に後援をしてもらっているということが理由として挙げられる。日本語の教育に俳句が効果的であるという理由から、第六回から文部科学省の後押しを受けはじめ、新俳句大賞が「学校単位で」学生に取り組まれることになったのだ。そのため、学生たち一人ひとりにとってお~いお茶は「学習教材」として親近感のある存在になっているのだ。
お~いお茶が与えているイメージは、単純に「美味しい」だけに留まるものではない。「俳句」という同じ日本の伝統文化を融合させることで、他のブランドとは一線を画したイメージを勝ち得ているのだ。
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