HOMEビジネス 日本一小さいのに、日本一子供が多い「舟橋村」。少子高齢化を逆行する「フシギな村」のナゾに迫る!

日本一小さいのに、日本一子供が多い「舟橋村」。少子高齢化を逆行する「フシギな村」のナゾに迫る!

Yasutaka Nagataki

2015/06/29(最終更新日:2015/06/29)


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日本一小さいのに、日本一子供が多い「舟橋村」。少子高齢化を逆行する「フシギな村」のナゾに迫る! 1番目の画像
出典:www.vill.funahashi.toyama.jp

日本一小さな村は、日本一輝いている村です。

出典:舟橋村
 日本一小さい市町村、富山県「舟橋村」。その小ささは3.47km²と、およそ成田空港の3分の1近くだ。その中で、3000人近くの人たちが暮らしている。

 富山県で小さな村という情報だけを見ると、多くの人は舟橋村を「過疎化が進んだ高齢者ばかりの村なのだろう」と想像する。日本の地方にとって高齢化・過疎化はそれだけ深刻な問題であり、同時に「常識」として人々に認知されているからだ。しかし、舟橋村は事情が違う。

 実は、先ほど述べた「3000人」という人口は、地方の農村部の中ではかなりの人数規模である。加えて平成22年度の国勢調査によると、舟橋村の年少人口割合(15才以下の人口割合)は21.8%と、日本一高い割合を誇っている。舟橋村は、日本で一番「若々しい」市町村なのだ。

 では、なぜこのような富山県の小さな村が人口や若年齢層の高さを保持し続けられているのか。今回は、2015年6月29日放送のテレビ朝日『お願い!ランキング』内の企画『こちら解明捜査バラエティー!データ刑事』の放送に合わせ、舟橋村がここまでの「人口」と「若さ」を保っている理由、そして舟橋村の知られざる戦略を紹介していこう。

舟橋村は最強の「ベッドタウン」

舟橋村は、富山平野のほぼ中央部に位置し、県都富山市から車で20分、電車で13分という利便性の高さと立山連峰を一望できる恵まれた自然環境にある緑豊かな都市近郊農村です。

出典:世界一小さな自治体・舟橋村|舟橋村「人口問題プロジェクト」

 富山県で最も発達している都市と言えば、やはり富山市だ。富山県のあらゆるビジネスが富山市に集中しているため、富山市には「のどかさ」がない。東京の人にとっては意外かもしれないが、地方の都市部はそこそこ発達している。

 そんな富山市から電車で13分のところにあるにもかかわらず、舟橋村は緑豊かで非常にのどかだ。舟橋村は「ベッドタウン」的存在として、富山県内で高い支持を誇っている。

 都市へのアクセスなどの地理的な理由から、舟橋村が小さな村ながらも高い支持を得られているということはわかった。しかし、それだけで「若さ」を保っているわけではない。次は、舟橋村が遂行している「戦略」についてお伝えしよう。

村歌『ちっちゃな舟橋村』

自然と遊べる豊かなみどり 育てて行きましょう
ひとりひとりが輝くように 自分の力を生かしましょう
日本一の小さな村には 日本一の幸せがあるよ

出典:ちっちゃな舟橋村|舟橋村
 あなたは、自分が住んでいる場所の「市区町村歌」をご存知だろうか。恐らく、ほぼすべての人が知らないことだろう。

 舟橋村にも同様に村歌が存在しているのだが、この歌の認知度が村内で非常に高い。キャッチーなフレーズのサビが印象的なこの歌は、舟橋村の公式サイト内で無料ダウンロードすることが出来る。では、なぜこの歌が舟橋村の中で高い認知度を誇っているのだろうか。

 それは、この曲の「動画」に秘密が隠されている。『ちっちゃな舟橋村』には「振り付け」が存在し、数百人がその振り付けを踊る姿を「動画」として公開しているのだ。加えて、別の場所で踊っている姿や、子供たちの普段の学校の様子など、舟橋村の様々な魅力が伝わるものとなっている。舟橋村の総人口の半分近くが動画に出演しているのではないかと感じさせるくらい、実に多くの人が動画に登場してくるのだ。

 このように「村歌」に合わせて振り付けを踊ってもらうことで、村全体で連帯感が生まれ、都会部のように希薄な人間関係が出来上がることなく、隣近所と濃密な付き合いを続けることが出来るのだ。

舟橋駅の中に「図書館」

日本一小さいのに、日本一子供が多い「舟橋村」。少子高齢化を逆行する「フシギな村」のナゾに迫る! 2番目の画像
出典:ja.wikipedia.org
 写真は、舟橋村立図書館である。1998年4月に開館して以来、村の人気スポットの一つとなっている。

 写真をよく見てほしい。「舟橋村立図書館」の表記の下に「舟橋駅」と書いているのがわかるだろうか。そう、この図書館は駅と併設されているのだ。そのため、舟橋駅を利用している子供たちは、改札を出るとすぐに無数の本に出会うことが出来る。

 図書館を駅と合体させることで、舟橋村立図書館は舟橋村の「シンボル」のような存在となることができた。村人同士の地域コミュニケーションの場として、また子供のための学校図書館として、舟橋村立図書館は今も多くの人に親しまれている。

地方特有の「車移動」の改善

 車社会が進むにつれ地方の交通機関は窮地に追い込まれている。村内にある「舟橋駅」もマイカーの普及とともに、乗降客が減り寂れる一方であった。舟橋駅は県内東部をサービス圏とする富山地方鉄道の村内唯一の駅として村のほぼ中央に位置している。旧駅舎は1931年に建造され、老朽化が著しかった。

出典:舟橋村立図書館における村おこし駅舎との一体化(富山県 ... - 文部科学省
 実は図書館の併設にはもう一つ大きな狙いがあった。それは、地方ならではの「車を使って移動する」文化の加速に歯止めをかけるということである。

 舟橋村の人たちも、以前は車を用いて会社に通勤する人が多かった。そのため駅の利用者数は減少傾向にあり、周辺地域はさびれていく一方であった。そこで舟橋村は、舟橋駅に図書館を併設することを決めた。他の駅によくある「商業施設」を導入しなかったのは、商圏の移動や景気に影響されやすいと考えたからだ。

 図書館を併設するだけでは駅の利用者はあがらないと考えた舟橋村は、駐車場の確保へと乗り出した。いわゆる「パーク&ライド方式」である。パーク&ライド方式とは、自分の家から車で最寄り駅まで行き、そこからは公共機関を利用して都市部まで行くという方式のことである。

 これを導入させることで、図書館を利用する人にはより便利に、そして都市部へ行く人にとってはよりスムーズにすることを可能にした。それだけでなく、地元の経済の活性化にも一役買っている。舟橋村立図書館はまさしく、地元の「救世主」なのだ。


 地方の小さな村ながら、他の市町村にはない「人口」と「若さ」を維持し続けている舟橋村。地方の過疎化・高齢化が騒がれている今日だが、その「地方」にもまだまだ希望は残されている。

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