地下鉄や駐車場など、様々な目的で開発が進められている「地下」。地上に建物が溢れている今、地下をフィールドに行われる事業は数多く存在する。
千葉県の幕張ベイタウンも、そんな「地下」の利用が盛んな土地のひとつだ。しかし、ここでは少し変わったモノが地下に展開されている。
今回は、2015年6月19日放送のテレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!』に合わせ、幕張ベイタウンに存在する「地下」のヒミツに迫る。
幕張ベイタウンには「電柱」がない!
幕張ベイタウンを散策すると、「電柱」がないことに気づく。街灯は立っているが、電線が存在しない、なんとも気持ちのいい景観が広がっている。
幕張ベイタウンでは、電線を地中に埋め込むことで、電柱の存在しない街並みを創り出すことに成功している。これは「電線地中化」といい、水道管と同じように、全てのケーブルを地下に収納してしまう事業だ。そのため、電線が景観を邪魔することがなく、広い空を仰ぐことのできる街並みを実現した。
この「電線地中化」が行われている都市は、何も幕張ベイタウンだけの話ではない。埼玉県川越市では、伝統ある街並みをよみがえらせるべく、平成4年から電線地中化を進めてきた。これが幸いして、川越市はかつて35万人程度だった観光客を、10年あまりで10倍以上に増加させることができた。このように、観光都市においては電線地中化が持つ経済効果は非常に大きい。住宅街にとっても、経済効果こそないものの、地域の満足度に大きく貢献できていることがうかがえる。
ゴミが「空気」で瞬間移動!
出典:first-wing.jp 幕張ベイタウンの小中学校では、子供たちがゴミを「箱」の中に全て捨てている光景に遭遇する。それは普通の小中学校に存在する「単なるゴミ箱」とは一線を隔す、「業務用の何か」のような異質なものにゴミを捨ててしまうのだ。しかし、しばらくしてから中を覗くと、そのゴミは綺麗さっぱりなくなっている。一体何が起こっているというのだろうか。
幕張ベイタウンでは、少し変わったゴミ集積の方法を採用している。それは「ゴミ空気輸送システム」である。これは、ゴミを指定のゴミ箱に捨てるだけで、そのゴミが空気の力でそのままゴミ処理場に運ばれていくという画期的なシステムである。
単純にゴミ集積所がなくなるというメリットが発生するだけではない。時間帯によって捨てられるゴミの種類を変えることが出来るため、曜日によって特定のゴミしか捨てられないという制約が発生しないのだ。これも、ゴミ空気輸送システムが持つ大きな魅力の一つである。
「地下インフラ」は必ずしも「正義」ではない
ここまでは、「地下インフラ」の持つ魅力についてお伝えしてきた。しかし、これらの設備は「メリット」ばかりというわけではない。
ここからは、先に紹介した2つの「地下インフラ」が持つデメリットについて紹介していこう。
「電線地中化」が持つデメリット
やはり、従来の方法として浸透していた「電柱」に比べ「電線地中化」にかかる初期コストはその比ではない。加えて、断線が発生した際の復旧作業は、どこが壊れているのか目視で判断できないため、その期間・費用ともに多大なコストがかかる。
また、電線がなくなることで景観がよくなるということは確かだが、信号や道路標識などの関係上、どうしても「柱」を立てざるを得ない場所がいくつか存在している。電波以外の面でも、「柱が持つ機能」というのは日本にはまだまだ多いのが現状だ。
電線地中化がこれらのような不安を抱えている一方で、ゴミ空気輸送システムは、ある問題に直面している。次は、その問題についてお伝えしていく。
かさむ維持費、誰が払うの?
ゴミ空気輸送システムが年間に必要とする維持費は、1億円以上にのぼるという。そして、それを負担してきた企業庁が、2015年に解散されることをきっかけとして、維持費を「どこかが」引き継がなければならないという問題が浮上した。
実はかつて、同じ問題に直面していた地域がいくつか存在していた。大阪市の南港もその一つである。南港では、1977年からごみ空気輸送システムを採用していた。実は、40年以上前からごみ空気輸送システムは完成していた。しかし、やはりかさむ維持費を前に、2014年度にこのシステムは廃止となった。
維持費の負担が出来ずに廃止となった事例は大阪だけではない。1983年から運用を行っていた東京都の多摩ニュータウンも2005年に廃止し、同じく1983年に運用を始めたつくば市も2009年に廃止されている。
結果、幕張ベイタウンでは千葉市が運用管理を行い、千葉県がシステム更新や廃止の費用を負担するという形で合意が形成された。幕張はこの事業の「存続」を決定したのだ。しかし、他の地域で存続が断念されてきた歴史をみると、この体制がどこまで継続するか、あまり期待はできない印象だ。
「地下インフラ」を便利に利用するためには、それ相応のコストやリスクと向き合う必要がある。幕張ベイタウンにとって今や欠かすことのできない「地下インフラ」は今、ニーズとコストのせめぎ合いを前に、大きな岐路に立たされている。
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