無印良品というブランドがある。これは、株式会社良品計画が持つ一大ブランドである。恐らく知らない人はいないだろう。
順風満帆に成長してきたブランドのように思われがちだが、実は良品計画は2001年度の中期決算で38億円もの赤字を経験している。そこから改革を重ね、見事にV字回復を遂げたのである。
本書『無印良品は、仕組みが9割』では、V字回復が成功した理由について詳しく解説がなされている。
「MUJIGRAM」というマニュアルの存在
無印良品には、独自のマニュアルが存在している。それが、「MUJIGRAM」だ。このMUJIGRAMだが、他社では考えられないある一つの特徴を持っている。
それは、MUJIGRAMのボリュームである。MUJIGRAMには、レジなどの細かな業務から売り場づくりまで、非常に多くの範囲を網羅している。実はこのMUJIGRAM、なんと13冊・2000ページにものぼる量の記載がなされている。すなわち、それだけの量が「マニュアル化」されているということである。
しかもこのマニュアル、毎月更新がなされているというから驚きである。同じミスを繰り返さぬよう、また仕事に滞りが発生しないように、1ヵ月単位で蓄積がなされていくのだ。
良品企画がV字回復を果たすことが出来た一番大きな理由、それは「徹底したマニュアル化」にあると言っても過言ではない。
「こうしたほうが、いいのに」をマニュアル化
マニュアルが1ヵ月単位で更新がなされるのだが、果たして具体的には何を更新しているのだろうか。
更新内容の一つに、「従業員の意見」がある。従業員が日ごろ「こうしたほうが、いいのに」と感じたことの積み重ねで「MUJIGRAM」は構成されているのだ。このように、従業員の意見をマニュアルに反映させることで、自然と「改善出来る部分はないか」という思考が生まれてくるのだ。そして出てきたアウトプットがまたマニュアルに反映される。マニュアルを軸として、無印良品は良循環を回すことに成功したのである。
新人が読んでもわかる「具体性」
マニュアルに用いられがちな単語の一つに、「丁寧に」という言葉がある。「丁寧に並べてください」や「丁寧に接してください」というような文言があるマニュアルは少なくない。
しかし、これを入社初日の新人が読んだとき、果たしてマニュアルの思惑通りの動きをするだろうか。大体は思惑通りになるだろうが、うまくいかないこともある。これは、「具体性」に欠けているからである。
その点、MUJIGRAMに記載されている言葉は、非常に具体的である。「丁寧に並べてください」というのではなく、「カップの向きは一律してこう並べてください」というような書き方がなされているのだ。このおかげで、マニュアルを一度読めば、新人であろうと一通りの業務はこなせるようになっているのだ。
マニュアルは2000ページ、でもあとは「自由」
マニュアルが2000ページあると聞いて、多くの人が面食らっただろう。先にお伝えした通り、マニュアルの内容も濃いので、理解するのになかなか苦労する。
しかし、これにさえ従ってしまえば、あとは「自由」なのだ。このマニュアルに記載されていることさえ守れば、ミスは起こりえない、そういう教育がなされている。そのため、マニュアルを通じて逆に「自主性」が育つ環境が出来上がっているのだ。
マニュアルは組織の人間を「束縛」するものと認識されがちだが、無印良品はマニュアルを通じて組織の人間をむしろ「解放」しているのだ。
無印良品がV字回復を遂げた最大の理由、それは「マニュアル」に存在する。自分の会社の業績が芳しくない人や、会社のマニュアルに不満を抱いている人は、是非本書をチェックしてみてほしい。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう