過疎化や高齢化など、様々な社会問題が溢れている地方都市。東京などの大都市との格差は広がっていく一方であり、農村部に人がいなくなってしまうのも時間の問題であるように感じられる。
しかし今、窮地に立たされている地方都市に「革命を起こす」ビジネスが盛んである。株式会社エイトワン代表取締役社長・大藪崇もそんな"地方革命"に名乗りを上げたうちの一人だ。彼は、愛媛県に革命をもたらすべく、みかんやタオルなどの「特産品」に着目し、ビジネスを展開させた。
そんな大藪崇だが、会社を立ち上げる前は「ニート」だったというから驚きである。ニートという自堕落な生活から、彼はなぜこのような成功をつかむことが出来たのだろうか。
今回は、2015年6月11日の『カンブリア宮殿』の放送に合わせ、大藪崇の異色の経歴、そして愛媛にもたらされた革命の「今」をお伝えしよう。
大学在学時はパチンコで1000万円の「黒字」
大学生でパチンコにハマる人にロクな人はいない、そんなイメージをお持ちの方も少なくないはず。パチンコで借金をつくり、社会から脱落していった人を実際に見たという人もいるだろう。
大藪崇も、大学生の時にパチンコにハマった人のなかの一人である。しかし大藪崇が他と違うのは、パチンコで「黒字」を叩き出し続けたことである。累計して1000万円もの利益をあげたという、まさに異色の経歴を持つ。ではなぜ、パチンコでここまで稼ぐことが出来たのだろうか。実はここに、大藪崇の「経営者としての素養」が見え隠れしている。
徹底した「リスクヘッジ」
大藪崇がパチンコにハマる「普通の」人と決定的に違うところ、それは「利益追求」に対して非常に貪欲であったことだ。
多くの場合、パチンコを「遊び」としてのみ捉え、少しくらい損失が出てもあまり気にしないものだ。そしてそれが積み重なり、やがて身を滅ぼす、というのが定石である。しかし大藪崇の場合、利益追求に余念がない。
その思いが「リスクヘッジ」の面で非常に顕著に表れている。大藪崇がパチンコで「負けなかった」一番の理由、それは「ノリ打ち」にあった。ノリ打ちとは、集団でパチンコ店に行き、集団の損益を一括して「再分配」するという方法である。利益を出せそうな店舗で「ノリ打ち」をすると、全員が損失を出すということはほとんどなかったという。
リスクを分散させ、確実に利益を取りに行くという思い。大藪崇はパチンコを通じ、経営者として非常に大事なマインドを学んだのである。
株式投資で成功、しかし何か「物足りない」
パチンコで得た収入をもとに、大藪崇が始めたのは「株式投資」だった。初めはうまくいかなかったものの、パチンコの経験を活かし、「負け」を嫌うことで資金を増やすことが出来た。
しかし、お金が手元にある生活を手にした大藪崇は、心のどこかが「物足りない」という感覚に陥った。そしてそれは、お金持ちであることこそが至高であると考えていた大藪崇を困惑させることになる。
物足りなさの原因、それは「他者貢献」にあった。大藪崇は地元である「愛媛」の活性化に「物足りなさ」の充足を見出したのである。自分を育てた愛媛に恩返しをすることが、自分を満たしてくれると考えたのだ。そして、大藪崇は愛媛に革命をもたらすべく、温泉経営を始めたのであった。
ビジネスの拡大、それは愛媛にもたらされる「革命」
出典:www.i-ori.jp 温泉施設の経営が安定してきたころ、大藪崇はある「特産品」に目を付けた。それが「今治タオル」である。2009年12月、大藪崇は今治タオル専門店『伊織』をオープンさせた。今治タオルを高級ブランドにすることで、さらに地域を活性化させようという試みだ。現在では、北海道から福岡まで17店舗を抱えるほどのチェーンに成長した。
さらに大藪崇は、みかんや砥部焼など、そのほかの特産品もブランド化し、愛媛を超えて様々な人の手に渡るようにした。愛媛にとってそれはまさに"革命"に他ならない。
事業拡大で学んだこと、それは「経営は一人ではできない」こと
株式投資で成功を収め、さらに事業で成功を収めた大藪崇だが、経営は一人では絶対に成功できなかったという。株式投資は個人で成功することができるものの、経営は一人で進めることはできないと感じたのだ。そしてそれは逆に、チームを組んで成功を収めたときの達成感は、個人で成功したときの比ではないという。ある意味、元ニートであるという経歴からは想像もつかないような考え方だ。
現在、10種類のブランドを抱えているエイトワンだが、愛媛にもたらした"革命"というのは計り知れない。同じように問題を抱えている地方に対して、何か再建の策を考えることこそ、ビジネスとして成功を収める近道なのかも知れない。
また、大藪崇の具体的な人生観、経営メソッドに触れてみたいという方は、大藪崇本人が著した書籍『起こらない経営』をチェックしてみるといいだろう。
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