「考えが甘い」「もっと深く思考しないとダメ」と、上司からお叱りを受けたことのある人は少なくない。社会に出た途端、思考の浅さを指摘される機会というのは急激に増加する。そもそも「深い思考」とはいったい何なのか。どうすれば「深い」と言われるようになるのか。
『本質思考』では、そんな「深い思考」とはどういったものなのか、そのような思考が出来るようになるためには何をすればいいのかについて紹介されている。
本のハイライト
考えてる「風」にならない
世の中には人の思考を「ラク」にするために様々なモノが存在している。「SWOT分析」「KJ法」などのフレームワークや、「○○性」「○○力」などの抽象的な言葉などだ。これらを利用することで、自分の中で思考が整理されたり、あるいは相手に対して言いたいことが簡単に伝わる「ように感じる」。
もちろん、これらを利用することで得られるメリットというものは非常に大きい。しかし、利用する際に一番気をつけなければいけないのが、利用してそれで終わりにしてしまわないことである。SWOT分析を行ったところまではよいものの、要素を洗い出した後のことが全く進んでいないようでは、それは何の意味も持さない。むしろ考えた「気になってしまう」ということが非常に危険だ。便利なツールを使うときには、それが何のために意味があって、それを行ったあとに何をすればゴールが見えるのか、具体的な見通しを立てる必要がある。
事象を「モデル」と「ダイナミズム」の視点で捉える
「システムダイナミクス」という考え方がある。元々はIT業界で使われていた用語であるが、これは本質的な思考を行う上で外すことのできない考え方となっている。
どのような考え方かというと、事象を2つに分けて考える、ただそれだけである。2つとは、「モデル」と「ダイナミズム」のことを指す。
「モデル」視点
モデルとは、すなわち「原理」である。ある事象が起こっている時、どのような因果関係が働いて、はたまたどのような環境が作用してその事象を作り上げているか、ということだ。
ここで大事なのが、単純にA→Bで構成されているとは限らないということだ。たとえば、「前日に早く寝た」結果、「会社に遅刻しなかった」とする。これをA→Bでとらえると、「会社に遅刻しなかった」理由は「前日に早く寝た」からであるとされる。そのため、会社に遅刻しないためには、早く寝なければならないという結論に至る。
しかし実際はというと、「会社に遅刻しなかった」理由というのは、「前日に早く寝た」からではなく、「当日に早く起きられた」からである。こうなることで、会社に遅刻しないためには、「当日に早く起きればいい」ということで、他の解決策も思いつくことが出来る。
このように、事象の全体像をしっかりと把握しておかないと、対症療法のように短絡的な解決策しか出てこない。全体像を把握して、それに見合った解決策を随時出していける視点を身につけよう。
「ダイナミズム」視点
ダイナミズムとは「傾向」のことだ。ある事象が、これからどのように向かっていくかという「未来予想」のようなものである。
上の事象の最初の解決策、前日に早く寝ると翌日早く起きられるということに関してダイナミズムの視点を用いてみよう。すると、前日に早く寝ると翌日早く起きられるという事実に変わりはないが、寝た時間が早ければはやいほど早く起きられるかどうかというと、実際はそうでもないことがわかる。早く寝ると、睡眠時間が伸びて結局あまり早起きできない、というのはおそらく身をもって実感している人も多いだろう。要するに、早寝と早起きは「比例していない」ということだ。
このように、一つの解決策では改善できるものに限度がある。そのため、ある程度改善が出来たらそこは見切りをつけて、別の改善策へと手を出すことが効率化に関わってくるのだ。
以上のように、本質的な思考というのは色々な注意を必要とする。本書ではほかにも「システムダイナミクス」の鍛え方についてや、本質的な解決というものが一体なんなのかについて、より詳細な解説がなされている。思考の浅さを指摘され、深い思考というものが何なのかについてが知りたい、自分の考え方を改善したいという方は、是非とも本書をチェックみては。
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