「電話応対」というと、顔の見えない相手と話をしなければならないことに緊張する人も多いはず。実際、自分の目の前に電話の子機があって、「電話が鳴ったらすぐ取れよ」と指示が出されていても、鳴ってすぐ取る勇気はなかなか出ない。
本書『プロフェッショナル電話』では、「電話応対コンクール」で長年審査委員を務めてきた著者・恩田昭子氏による、電話応対で相手をひきつけるために重要なテクニックを紹介している。
「マニュアル」にとらわれない
恐らく、ほぼすべての企業が電話応対に関して「マニュアル」を用意しているだろう。子機を取ったら「こんにちは! こちら株式会社○○です!」と元気よく挨拶をし、相手の要件を聞く。ここまではおおよそ共通している部分である。
しかし、ここから先はあくまで人と人との会話である。全てをマニュアル頼りに進めることは難しい。だからこそ、マニュアルをしっかり叩き込んでしまうと、予想外の反応をされたときに臨機応変な対応が取れなくなってしまう恐れがある。マニュアルはあくまで最低限、そこから先は「コミュニケーション」を意識して電話応対をしよう。
メール・資料作成にも通ずる「ノウハウ」
本書には、電話応対に関する様々な「専門テクニック」が紹介されている。そのどれもが、普段なかなか考えない方法ばかりで、もしテクニックを習得したら、進んで電話に出てアピールしたくなること間違いなしである。
加えて、本書のテクニックは電話応対にのみ使えるテクニックというわけではない。メールなどの、別の手段でのコンタクトにも役立つのである。『プロフェッショナル電話力』と銘打ってはいるが、最終章ではメールの書き方にも触れられているあたり、網羅性の高い書籍であると言える。具体的なテクニックについて触れていこう。
ナビゲーション話法
電話をしていて、「この人は結局なんの話がしたいんだ」と思うことがある。相手の話が四方に飛んでいて冗長なとき、なんだかイライラしてしまう。
ナビゲーション話法とは、そういった相手に対し、「いつ」・「どこで」・「誰が」・「どうする」などといった要素に分解して話を聞き出す手法のことである。実は前述の例のような場合、相手側も自分が何を伝えるか、細かい部分までシミュレーションが出来てないことが多いのだ。このような相手に対して一つ一つ質問をし、細かく分解することで要件を相手にも自分にもわかりやすくすることができる。
ブーメラン法
今までは、かかってきた電話に「対応する」ことにフォーカスしてテクニックを紹介してきた。しかし社会では、電話営業のように、「自ら」電話をかけることも求められる。本書ではそんな「能動的な」電話応対に関してもしっかりとノウハウを記載している。
その一つが「ブーメラン法」だ。ブーメラン法とは、相手の言葉を文字通り「ブーメラン」のごとく切り返す手法のことだ。たとえば、「商品のニーズは、わが社の持つ市場にはあまりなさそうだ」と言われてしまったとする。これを、「この商品をきっかけに新規市場を開拓するチャンスです!」と切り返す。このように、相手に言われた商品の「否定的な部分」を逆手に取り、「肯定的な言葉」で返すのがブーメラン法のやり方である。
注意してほしいのが、やりすぎると「押し売り」と見なされてしまうところである。あくまでもテクニックの一つであり、これをやりすぎて企業のイメージそのものを壊してしまったら元も子もない。このテクニックを使うときは、十分に状況を把握してからである必要がある。
電話応対は、何かと先輩に任せがちになってしまう側面がある。先輩のほうが会社のことをよくわかっており、マニュアルもしっかり読みこんでいそうだからだ。しかし、本書を読んで電話応対に対する心構え、テクニックを覚えさえしてしまえば、電話応対で臆する必要はなくなるだろう。電話応対で頭一つ抜きん出てみたいという方は、是非とも本書をチェックしてほしい。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう