家族の転勤、育児、介護、病気……。あなたが何かしらの理由で退職し、その理由となった出来事が一旦落ち着いたとする。そのとき、あなたはまた現在の仕事に戻りたいと願うだろうか? そして、そのとき会社は受け入れてくれるだろうか?
人材総合サービスのエン・ジャパンの調査によると、「出戻り社員(再雇用)」を制度として設けている企業は9%と少ないものの、実際に受け入れたことのある企業は72%にのぼる。「出戻り社員」というキャリアは、1つの現実的な選択肢と言えそうだ。
そもそも「出戻り社員」って?
出戻り社員とは、様々な理由により一度退職した社員が、再び元の職場に復帰することを指すものである。
これを支援する制度として、「ジョブ・リターン制度」が存在しており、退職理由や離職期間の制限は異なるものの、横浜銀行やトッパン・フォームズ、ライオンやトヨタ自動車などで行われている。
再雇用の理由、1位は「即戦力を求めていたから」
7割の企業が実際に出戻り社員を受け入れているのだから、それ相応のメリットがあるはずだ。
先ほどのエン・ジャパンの調査結果を参照すると、再雇用を行った理由の1位は「即戦力を求めていたから」だった。また、2位に位置づけているのは「人となりが既にわかっているため安心だから」ということだ。
これらのことから、採用のための余計なコストがかからない上、既にどのように仕事をするのかある程度理解できている元社員を雇うのは、企業にとっても非常に合理的であると言えそうだ。
社員が出戻りするメリット
では、社員が出戻りするメリットとは何か考えてみよう。
やはり、自分の能力や、これまで受け持っていた仕事を知っている企業に戻って働く方が働きやすいという部分はあるだろう。働く側としても、職場に慣れるまでの時間や仕事を新たに覚えるコストをかけずにすむのは大きい。
それならば一時的に休暇をとれば良いのでは、と思うかもしれないが、休暇の場合はどうしても期間が限定されてしまう。「ここまでには復帰しないといけない」という意識は、時にプレッシャーに繋がる。
そのようなプレッシャーを感じている状態では、退職する理由となった物事に専念することも難しい。復帰するタイミングをある程度自分で決められるという点において、「出戻り社員」となる方が心理的な負担は少ないだろう。
今後の課題は制度化にある
以上のように、「出戻り社員」を採用するメリットは雇用する側、される側の双方にある。しかし、冒頭で述べたように、再雇用を制度として設けている企業はわずか9%だ。再雇用が可能であると明言されない限り、社員はその存在を知ることが難しく、理由があっても職場を離れづらい、また、一旦離れてしまったら戻りづらい状況と言えるだろう。
再雇用の制度化には、「社員がすぐに退職してしまうようになるのでは」「既存社員のやる気に影響があるのでは」などの様々な懸念があることだろう。
しかし、制度化できてしまえば福利厚生が整っていると見なされ、企業のイメージアップにも繋がるはずだ。より多くの人が安心して楽しく働くためにも、懸念事項を解消し、再雇用の制度化に取り組む価値があるのではないだろうか。
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