皆さんは日本理化学工業という企業をご存知でしょうか? この企業は、チョークの製造で日本のシェア3割を持っています。その会長である大山泰弘氏は、全国の企業経営者のあるべき姿を持つ人に贈られる「渋沢栄一賞」を受賞したこともある人。日本理化学工業の会長がこの賞をもらうことができたのは、ひとえにその想いとそれを形にした雇用スタイルにありました。
ではそんな大山会長の想いとは、どんなものだったのでしょうか?
働くとは人に必要とされ、人の役に立つことだ
「働くとは何か?」と聞かれると多くの人は「会社に行ってお金を貰うこと」と答えるはずです。しかし、大山会長にとって「働く」とは、人に必要とされ人の役に立つこと。その大山会長の想いは、社員のおよそ7割が知的障害者という雇用スタイルに現れています。
大山会長が障害者を雇ったそもそものきっかけは、養護学校の先生にお願いされたからでした。初めは同情心から障害者を雇った大山会長でしたが、その考えを大きく変えたのは、ある時法事で聞いた僧侶の言葉。「施設にいて3食付いた生活をしていた方が幸せだろうに、なぜ彼らは一生懸命に働くのだろう」という大山会長に、僧侶は「人間の幸せは、愛されること、褒められること、役に立つこと、人に必要とされることの四つだ」と言ったそうです。
障害者でも働くことが幸せ
僧侶の言葉で「人の役に立ちたいと思うのは障害者でも同じ」と気付いた大山会長は、その後障害者が働きやすい環境づくりを行いました。数のわからない障害者のために色でわかるようにする、自分で出来たと実感させるなど、障害者でも「人の役に立てている」という気持ちを持てるよう工夫しました。結果的に、障害者でも仕事ができるようになり、それを見た健常者の社員のモチベーション向上にも繋がりました。
大山会長は、「働くことが幸せということを前提にしたら、世の中はもっと良くなる」と言います。働くことは人と繋がることであり、人の役に立っていると実感できること、そしてそれが人の成長に繋がっている。それは、健常者でも障害者でも同じだということを、大山会長は障害者を雇うことで気付かされたのです。
では今の日本の雇用は?
現在の日本では、働かなくてもお金を稼げるようなシステムがあります。自分だけが儲けよう、成果だけを追求しようと思ったら、そういう方法は非常に効果的です。
しかし、「誰かの役に立っている」という実感は働いて初めて得られるもの。働いて誰かの役に立つことが喜びと感じられるような職場そのものは減っているのかもしれません。それでも、働く場所や機会、その意味を与えてくれるのはいつでも「人」であることを、大山会長の言葉は教えてくれます。
人と人の繋がりが薄くなっている現代で、働くことの本当の意味を教えてくれる日本理化学工業では、人間本来の幸せな姿を見ることができます。ぜひ、多くのビジネスマンに大山会長の言葉を胸に刻んでもらい、自身の仕事への姿勢を見直すきっかけにしてもらいたいものです。
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