産休復帰を果たし、育児と仕事のバランスをとりながら生活している「ワーキングマザー」が年々日本でも増えてきている。しかし、これから産休復帰を考えている女性の中には、「仕事にも育児にも全力で!」と“両立”を目指そうとしている人も多いのではないだろうか?
両立なんて絶対に無理――。そう断言するのは、株式会社ウィルグループの大橋卯月さん。彼女は、ウィルグループの子会社である株式会社セントメディアに所属していた時期に、同社の営業系女性社員で初めて産休取得・育休復帰を果たしている。自身の経験から、これから妊娠・出産や育休復帰を考えている女性社員に「育児と仕事を両立しようとするな!」とアドバイスしているという大橋さんに、その理由を聞いてみた。
――大橋さんは、会社で初めて育休復帰を果たしたそうですね。「ワーキングマザー」の先輩として、職場復帰をした、もしくはこれから育休取得を考えている女性社員に対して、どのようなアドバイスをしているのでしょう?
必ず言っているのは、「仕事と育児の両立なんて目指したらダメ」ということです。そんなこと、絶対無理ですから(笑)。仕事だけでも、その日やるべきタスクを100%こなすことって結構大変だと思うんです。ムラがあって、120%達成できるときもあれば、80%で終わってしまう時もあるのではないでしょうか。
それに加えて、「育児」という生活の軸がもう一つ増える。よく「育児と仕事を両立するためには~」という話がありますが、「どちらも100%を目指そうとするとパンクしてしまうからやめた方がいいよ」という話をしますね。自分の持ち得るリソースを、仕事に80%割きたい時期もあれば、子どもに80%割きたい時期もある。私はそれでいいと思うんですよ。
私自身、2015年の個人テーマには「サステナビリティ(持続可能性)」を挙げています。子どもが生まれて3年経って、仕事も育児も頑張って無理し続けるのは厳しいことに気づきました。少し無理するタイミングはあっても、その後すっと力を抜いてみることも時には大切。自分が息切れしないでどちらもやっていけるペースを見つけることが大事、という話を女性社員にはしていますね。
――大橋さん自身、子どもが生まれた直後は仕事と育児の「両立」を目指していたそうですね。それが無理だと気付いたきっかけは何だったのでしょうか?
やっぱり私もパンクしたんですよ。ある日家で「ああ、もう無理だ」とただひたすら泣き続けてしまったことがあって。で、次の日に「ああ、やっぱり無理だったんだ」とどこか吹っ切れたような感じになりました(笑)。
働いているママさんの多くが、最初は仕事と育児の両立を目指すと思います。でも、まずは「両立はできない」と思うこと。それが、バランスの取れた生活を送るための第一歩だと思います。
――ママさんが仕事と家庭生活においてバランスをとっていくために、旦那さんは家庭でどのように振舞えばいいのでしょう?
「男性には家庭でも『プロジェクトマネージャー』になってもらいたい」と思っている女性は少なくないと思います。奥さんがすべての家事のプロジェクトマネージャーになってしまうと、結局旦那さんに逐一、指示出しをすることになります。「洗いものはやってね」「今日は燃えるごみの日だから、持っていってね」と。でもそれは、奥さんにとってすごいストレスですよね。
一つ一つの家事に対して、ただ手を動かすのではなく、責任を持って取り組んでもらいたい。10の作業をやるよりも、一つの家事のプロジェクトマネージャーを担当することの方が、奥さんには喜ばれている気がします。「この業務は私はやらなくていいんだ」というものが一つあるだけで、仕事と家庭生活のバランスは取りやすくなる。私はそう考えています。
――女性が自分のペースを見つけて生活していくためには、自分でどのようなイメージを持つことが必要なのでしょうか?
20年、30年後に自分がどういう生活をしているかをイメージすることが大切なのではないでしょうか。子どもを産むのか、産まないのか。子どもを産んだとして、その子が親の手を離れた時に、自分は仕事をしているのか。しているとしたら、それは若い頃よりも力を抜いて勤めていくのか、当時と変わらずバリバリ仕事していたいのか。
日本の生産年齢にある女性の6割が働いている現在、「共働き」という言葉はこれから先、死語になるはずです。女性にとって「育児」は限られた期間で行うものなので、それを終えた時にどうしていたいのかを考える必要があると思います。
――共働き夫婦が今後さらに増えていくことが予想される中で、大橋さんのようなワーキングマザーが働きやすい職場環境を作り上げていくために、企業側はどのような対応をしていけばいいと思いますか?
社員一人ひとりをよく見るところから始めることが大切だと思います。ワーキングマザーでも、例えば私と他の社員では言っていること、考えていることが全然違うんです。
だから企業側は、社員個人についてどれだけ考えてあげられるかが大切になってくる。就業規則を変える、という手段の観点もありますが、本当に求められるのは「この人はどうやってキャリアを築いていきたいんだろう」「何を求めて働いているんだろう」と、人ベースでちゃんと見つめてあげることだと思います。
大橋卯月(おおはし・うづき)さん プロフィール
株式会社ウィルグループ コーポーレート・コミュニケーション室 広報担当 リーダー
1982年生まれ。新卒でウィルグループ子会社のセントメディアへ入社。 新規・既存営業、キャリアコンサルタント、新規事業立ち上げ、営業企画など幅広い業務に従事した後、グループ全8社を担当する広報担当に就任。 入社とほぼ同時に入籍をした経歴を持ち、結婚・出産というライフイベントを迎えた社員としてのパイオニア的役割も担う。
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