連日報道されているISIL(イスラム国)の問題。その残虐な行為、そしてその脅威は報道の通りだが、今回呼称を巡って、トルコ国営放送は「イスラム国」という呼称を使わないよう求める声明を発表した。
今回の発表の内容とは
今月六日トルコ共和国大使館は同大使館のホームページ上において「大使館からのお知らせ」と題し声明文を発表。「イスラム国という名称でなくDAESH(ダーイッシュ)、ISIL等、誤解を招かない表現を用いること」を要請している。
「イスラム国」「ISIS」「ISIL」「DAESH」その違いは
現在、一般的に使われている「イスラム国」という名称。これは組織側が自らを表す"Islamic State"の和訳に由来する。既存の国境を西洋文明によるものと考え、カリフ制独立国家、すなわち同組織のトップと言われるアブ・バクル・アル・バグダディをカリフ(最高権威者)とする新たなイスラム国家の創設を目指す彼らの意思を示しているということができる。
続いて「ISIS」という名称。これは"The Islamic State In Iraq and al-Sham"(イラクとシャムのイスラム国)の頭文字をとったものであり、日本のメディアの間でも「イスラム国」に次いで普及しているように思われる。
「ISIL」という名称は主に米国が用いており、それに倣い先月26日に自民党も用いることを決定した。"Islamic State in Iraq and the Levant"の略であり「イラクとシリアのイスラム国」と訳される。レバントとは地中海の東部沿岸地方のことであり、米政府は「ISIL」という名称を用いる理由を「同組織の範囲がイラク、シリアだけに収まらないこと」としている。
またトルコ大使館の発表にもある「DAESH」という呼称。これは"al-Dawla al-Islamiya fi al-Iraq wa al-Sham"の頭文字をとったものである。和訳すると「イラクとシャームのイスラム国」となるこの名称は、海外の報道機関では頻繁に用いられている。
トルコ大使館の声明では、「イスラム国」という名称がイスラム教徒=悪人という誤解を与える恐れがあることを強調している。しかしながら、今月6日に同声明が発表され三日間が経った9日現在、日本のメディアの中で、呼称に関して特に大きな変化はないように見受けられる。今回、トルコ大使館を通じて声明を発表したトルコ国営放送の特派員、ムラット・ハン氏の行動は報われるのだろうか。
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