「若者のテレビ離れ」が起きていると言われている。見逃し配信が浸透しつつある今となっては、必ずしも放送時間にテレビに向かわなくとも番組を見られるのもその一因だろう。視聴率低迷に立ち向かうため、近年どの局も積極的に取り組んでいるのが、番組に視聴者との双方向性を持たせることだ。
双方向性を持つソーシャルテレビ
TwitterなどのSNSや番組アプリを利用することで、インターネットとテレビに接点を作り、番組と視聴者の双方向的な関わりを生み出すテレビをソーシャルテレビという。
このソーシャルテレビは、テレビの画面に直接視聴者のつぶやきが反映されたり、dボタンを押すことで番組と連動したゲームができるようになったりしている一画面方式と、視聴者の持っているスマートフォンやタブレットで番組の情報を確認することができる二画面方式(セカンドスクリーン)の二つに分けることができる。
ソーシャルテレビの本来の目的は、双方向性を高めることによって視聴者がリアルタイムで番組を楽しんでくれること、つまり番組の面白さを高めることが中心だった。だが、その認知度が高まってきた今、ソーシャルテレビの中でもセカンドスクリーンをビジネスに利用する動きが見られる。
セカンドスクリーンのビジネス化へ
世界的に見れば、セカンドスクリーンを利用したビジネスで成功している企業は既にある。イギリスでスタートし、現在はアメリカ、オーストラリアにも展開している「Beamly」がその一つだ。
様々な機能をもつBeamly
全番組横断のBeamlyが果たす役割は、実に多岐に渡っている。番組を発見するためのTVガイドはもちろん、番組に関係する詳細な情報を伝える機能、視聴者同士で繋がるためのソーシャル機能、番組に連動した通販機能などがBeamlyにはある。
このサービスのビジネスモデルは、いわゆる広告モデル。BeamlyはCMにも連動することができるため、Beamlyを利用している端末に、テレビで放送されている製品のバナー広告を表示することが可能になる。テレビ局側としても、Beamlyと連携することで従来より多くの広告費を得ることができるのだ。
このようなサービスが利益を得ることができるのはテレビが視聴されてこそ。Beamlyの成功の秘訣は、そのことを理解した上で、テレビ局と共に利益を上げようという姿勢にありそうだ。
情報番組を助ける「TBSぶぶたす」
日本のサービスで、Beamlyに近い性質を持っているのが「TBSぶぶたす」。これは、前述したソーシャルテレビアワードで、日経デジタルマーケティング賞に輝いた「王様のブランチ」の放送連携アプリだ。
情報番組を見ていると、もっと知りたいことやものがあるのではないだろうか。そんなとき、多くの人は手元のスマートフォンで検索しているはず。この検索という手間を省き、直接詳細な情報のページにジャンプさせるのがこのアプリの役割だ。
TBSぶぶたすは、2014年12月より「CDTV」「ランク王国」とも連携を開始。番組内での告知の効果もありダウンロード数は50万を越えている。番組との連携サービスを作成するならば、テレビの影響力を最大限に活かしてダウンロードを呼びかけることが必要となりそうだ。
新たなマーケティング、日テレのO2O2O
このようなセカンドスクリーンビジネスの流れの中で、日本テレビが新たなビジネスモデルである「O2O2O」を実践しようとしている。
O2O2Oとは?
O2O2O(Onair to Online to Offline)とは、「オンラインから実際の店舗へ」という意味のO2O(Online to offline)に、「放送からオンラインへ」という新たな道筋を加え、「放送からオンラインへ、オンラインから実際の店舗へ」とした広告・販促モデルだ。日テレは、同社の「JoinTV」というソーシャル視聴サービスを利用することでこのビジネスモデルを推進する。
O2O2Oの広告モデルとしての可能性について、日本テレビ・編成局メディアデザインセンターの安藤聖泰氏は以下のように語っている。
このように、テレビというマスの媒体を導入部とすることで、より大規模に収益の強化を進めることが可能になると見込まれている。このような形でのO2O2Oの実践は世界初といわれており、海外の評価も高い。
前提条件に残る課題
しかし、O2O2Oの成功には、いくつかの前提条件がある。最も根本的な条件は、テレビに影響力があることだ。ビジネスの規模を大きくするためには、やはり視聴者の獲得は課題となるだろう。
また、視聴者が毎回連携サービスを利用するかという点にも疑問が残る。映画や特別番組などはともかく、毎週放送される番組の情報を、長期間視聴者が必要とするだろうか。テレビを見ながらスマートフォンを利用している人は確かに多いと思われるが、そのような人たちが見ているのは実は番組の情報ではなく、出演者のSNSアカウントをはじめとする、関連性の決して高くないものではないか。
とはいえ、この日テレの挑戦が成功すればO2O2OはO2O同様に急速に浸透していくだろう。パイオニアとしてどのようにサービスを広げ、視聴者のニーズを満たしていくのか、今後も注目していきたい。
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