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外食産業の総居酒屋化:ターゲット層とニーズに見る居酒屋ビジネスの変化

Haruka Sato

2015/02/25(最終更新日:2015/02/25)


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外食産業の総居酒屋化:ターゲット層とニーズに見る居酒屋ビジネスの変化 1番目の画像
出典:allthefreestock.com

 かつては仕事終わりのビジネスマン集団がメインターゲットだった居酒屋。そこには、お酒を通じた同僚とのコミュニケーションや、「とりあえずビール」の暗黙の了解などが存在していた。しかし、最近成功している居酒屋ビジネスからは、これまでとは違った居酒屋の形が見受けられる。

お酒の飲めるコンビニ、シスカ

 ミニストップが2014年9月に展開した「cisca(シスカ)」。これは20〜40代の女性をメインターゲットに据えており、カフェとデリカテッセン(惣菜などを売る飲食店)、グロッサリー(生鮮食品以外)専門店を融合させた新たな業態だ。従来のコンビニのイメージとは違うおしゃれな見た目と健康を意識したコンセプトは、女性の人気を集めている。

 ここでは、コンビニとして初めて店内での飲酒が可能となった。利用方法はコンビニのイートインスペースと同様で、豊富な品揃えの中からお酒やおつまみを選び、レジで支払いをする。これらは器に入れてもらえるため、直接飲んだり食べたりするよりもちょっとリッチな気分が味わえる。

 1人で居酒屋はちょっと……という女性でも、一見カフェのように見えるシスカでなら気軽にお酒を飲むことができるだろう。

バー併設のケンタッキー、ROUTE25

 下北沢にあるのが、17時以降は3階がバーになるケンタッキー、ROUTE25だ。ここに作られたということは、ターゲットは若者となるだろう。店内にはバーカウンターがあり、1人でもゆったりできる雰囲気がある。

 ROUTE25では、通常のメニューだけでなくここでしか食べられないピザやオリジナルスイーツが提供されており、20種類以上揃ったカクテルも売りの1つだ。90分で1,280円の飲み放題は、手頃な価格で楽しみたい若者にぴったり。揚げたてのチキンとお酒を楽しめたら……という人々のニーズにケンタッキーが応えた結果が、このROUTE25だろう。

ちょい飲みと言えば吉野家の「吉呑み」

 大手牛丼チェーンの吉野家は、都心部を中心に「吉呑み」を拡大している。メインターゲットは男性ビジネスパーソンだが、喫煙室を別に設けて基本は禁煙とすることで、子連れの家族もタバコの煙を気にせず来店できるようになっている。テレビも設置されているため、1人飲みのときの暇つぶしもできそうだ。

 グループ企業の協力もあり、おつまみは幅広く取り揃えられているが、やはり主力商品が牛丼なだけあって、牛肉を使用したメニューには力を入れている。その低価格と安定の味は変わらない魅力だ。

居酒屋ビジネス成功の秘訣

 これら3つの成功例からは、ターゲットが旧来の居酒屋とは違うことメインの事業を活かしつつお酒を飲める環境を作り出していることの2つの特徴が見えてくる。

 日本橋にあるシスカは女性ビジネスパーソンをターゲットとしており、ROUTE25は「酒離れ」が進んでいると言われている若者をターゲットに設定している。吉呑みのメインターゲットは従来通り男性ビジネスパーソンだが、禁煙にしたことで近隣の家族をも取り込むことができている。また、全てに共通しているのは1人でも気軽に立ち寄ることができる環境づくりがされていることだ。

 さらに、どの店もこれまで培ってきた飲食業界内での立場を有効活用している。新たに「居酒屋」として始めるのではなく、夜に空いてしまうスペースを埋めるために「居酒屋」の要素を取り入れたことがこのビジネスの成功要因ではないだろうか。

オマケとしての居酒屋ビジネス

 「みんなでワイワイ飲むための居酒屋」を提供してきた居酒屋チェーンの売り上げが思わしくない一方で、その居酒屋像から外れた人たちを取り込み、利益を得ている飲食店がある。

 ニーズの多様化が進む現代においては、メインビジネスとしての居酒屋運営よりも、他の事業のプラスαとしての居酒屋ビジネス、言うなれば「オマケとしての居酒屋ビジネス」が利益を生み出すことになるのではないだろうか。


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