吉野家や日高屋などのファストフードチェーン店から、サイゼリヤやガストなどのファミリーレストランに至るまで、居酒屋以外の飲食店が次々にアルコールの提供をし始めており、外食産業はもはや総居酒屋化している。
そんな中、あらたに居酒屋業態に参入し始めているのが「駅ナカ」である。
高ポテンシャルを秘める駅ナカビジネス
皆さんも、駅構内の狭いスペースに立地する駅弁屋やお菓子屋を目にしたことがあるだろう。近年では、レストランやカフェにとどまらず、居酒屋やバーといったアルコールを取り揃える店舗も増加している。
このように、近年駅ナカに出店が相次ぐ理由は、その生産性の高さにある。小売業の一坪当たりの平均売上高は年間27万円に対して、駅ナカ一坪当たりの平均売上高は年間190万円となっている。実に小売業の7倍と圧倒的な生産性を誇る。駅という立地上の高い集客力に加え、限られた駅構内スペースを最大限利用しているからこそ、このような高い生産性を叩き出せるのだ。
増加する「駅ナカちょい飲み」
駅構内で100種以上のワイン・ビールを取り揃える
数ある駅の中でも特にアルコールを取り扱う店舗の多さで有名なのが東京駅。東京駅構内にある「LE COLLIER 丸の内」では「泡」をテーマに、実に100種類以上のビールとワインを取り揃えている。
駅ナカのわずかなスペースでこれだけの品揃えがあれば、商品を見にふらっと立ち寄ったついでに一杯飲んで帰ろう、という人も多そうだ。
日本酒に特化した駅ナカ居酒屋も登場
昨年品川駅構内にオープンしたのは日本酒に特化した居酒屋「ぬる燗佐藤 御殿山茶寮」。店内にはテーブル席の他に、スタンディングスペースも用意されており、仕事や出張帰り、旅行前など、様々なちょい飲みニーズに対応出来るのも駅ナカならでは。
また、日本酒というとかつては年配の方向けのアルコールのイメージがあった。しかし、企業は3~4年前から女性をターゲットにした日本酒も販売し始めている。御殿山茶寮では、このような流れを受け、女性をターゲットにした飲みやすいものやおしゃれなパッケージのものなども取り揃えている。「おしゃれな日本酒」という斬新さが逆に女性に受け、ビジネスマン以外にも新たなターゲットを取り込んでいる。
駅ナカ居酒屋の今後とは......?
現在の駅は単に鉄道の乗降のみならず、買い物、飲食、情報収集の場として消費者の生活の一部となっている。鉄道会社も本業の鉄道事業以外の売り上げ比率が高まっており、その代表的事業が駅ナカビジネスなのだ。
また、これまで、鉄道と酒の組み合わせはあまり注目されておらず、むしろ迷惑なものとして考えられてきた。しかし、近年の駅ナカへの飲食店やバーの積極的な出店により、そのマイナスイメージは払拭されつつあるばかりでなく、むしろ「楽しく飲んで楽しく帰る」という明るいイメージを持たれ始めている。
さらに、駅ナカの店舗は終電より早く閉まるため、場の雰囲気を壊すことなくそれぞれが帰宅出来ることも、消費者の精神的負担を軽減させるメリットだと言えるだろう。また、駅直結のため電車を逃す心配や駅までの時間を考えたりする必要がないことも大きなメリットである。
しかし、このようなメリットが多くある半面、駅ナカビジネスが活性化することで駅周辺の経済を疲弊させることも懸念され始めている。究極のちょい飲みとも言える駅ナカ居酒屋は、消費者にとってメリットが多く、今後ますます増えていくことが予想されるが、駅周辺の経済も回していくシステムを構築することも大きな課題となってくるのではないだろうか。
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