近年、電気、水素、ディーゼルなど様々な車の動力が話題になる。ハイブリッド自動車は「プリウス」の人気から普及し、街を歩いていれば何台もすれ違うほどだ。これらの車はエコカーと呼ばれ、CMや店頭でも「エコ」であることが訴求されている。
しかし、この「エコ」は大気汚染や資源の枯渇など環境問題に対する解決策ではない。人気の理由は経済性だ。「燃費がよく、維持費が安い=エコ」と位置づけられた上での人気の理由になっている。
では、電気自動車(EV)はどうだろう。未だ、環境に良いが、不便な車というイメージを持っていないだろうか。そんな電気自動車が今、変わろうとしている。
人気を集めるEV、テスラのモデルS
EVの中で革新的な車を出し続けているのが、アメリカのベンチャー企業、テスラモーターズだ。テスラモーターズの最新モデル、モデルSはアメリカの消費者団体によって2014年の総合優秀車にも選ばれている。
テスラモーターズのEVが他と異なるのは、性能、利便性という点において妥協をしない点だ。これまでの電気自動車のイメージを覆す、スポーツカータイプのモデルを主力とし、一度の充電あたりの走行距離も100kmから200kmが一般的だったのに対し、モデルSは500kmを走ることができる。これはスポーツカータイプのガソリン車とほぼ同水準だ。
機能性とデザインを兼ね備えたこの車は、レオナルド・ディカプリオをはじめとするハリウッドセレブからも高い人気を得ている。
本来の強みは経済性
モデルSはもちろん、EVは本来、経済性に強みを持つ。エンジン車はガソリンなどの燃料を燃焼するエネルギーを利用して推進力に変換するため、エネルギー効率に物理的な限界がある。しかし、EVは電気でそのままモーターを回転させる上、減速時にエネルギー回収が可能なため、燃費の面では構造上有利だ。
結果、エネルギー効率はガソリン自動車の3倍近くにもなる。夜間の電気使用が割安になる夜間電力を利用して充電すれば、燃料費はガソリン利用時の1/3~1/9にまで減らすことも可能だ。
設備に問題は残る
もちろんEVにも課題は残る。ガソリン車のための設備、周辺産業は整っているため、給油や整備は比較的容易だ。しかし、EVを充電する充電ステーションの数はまだまだ少ない。
しかし、その状況も改善されようとしている。2013年にEV用のインフラ整備に対する1005億円の補助金の交付が決まってからは、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアでの充電器設置が進み、同時に急速充電器の性能も上がり、充電時間も短縮されている。
人気の集める経済性の高い車はEVの主戦場だ。今後、こうした設備が普及し、量産化が進んで車体価格が下がれば、EVが自動車市場を変えていく流れは明らかだ。
対抗するエンジン自動車
このような流れに、燃料を利用する自動車側も黙ってはいない。
ハイブリッド車は対抗馬の主力といえる。ガソリンと電気の両方を活用するハイブリッド車は、電気自動車程のではなくとも高い燃費性能をもち、既存のガソリン車の設備を利用できるという強みを持つ。
また、以前は排気ガスが問題視されていた軽油を利用したディーゼル車は、エンジンが改良され、環境に優しいクリーンディーゼル車として新たな人気を得つつある。マツダはアテンザなどでクリーンディーゼル車を押し出しており、10万台以上を販売している。軽油はかかる税率が低いことから比較的安価で販売されており、燃料費も抑えられる。
それ以外にも様々な押し出し方でエンジン車の魅力を高めようとしのぎを削っている。円安の影響により、今は自動車業界全体が好調だ。この円安の好影響が落ち着いたとき、電気自動車とエンジン車の本当の戦いが始まるのかもしれない。
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