HOMEイベント スタートアップのCTOに共通していた意外な点 ーー エンジニアはCTOになるべきか否か【前編】

スタートアップのCTOに共通していた意外な点 ーー エンジニアはCTOになるべきか否か【前編】

hotaka

2015/01/05(最終更新日:2015/01/05)


このエントリーをはてなブックマークに追加

スタートアップのCTOに共通していた意外な点 ーー エンジニアはCTOになるべきか否か【前編】 1番目の画像

 昨今、起業家の考えを聞くイベントは数多く開催されているが、会社を技術的な側面から支える「CTO(最高技術責任者)」の考えを聞けるイベントは少ない。そんな、「CTO」に焦点を当てたイベント「アンビシャスセミナー〜REIMEI〜」が11月21日(金)に開催された。

 今回のイベントのテーマは「CTOになるべきか、ならざるべきか」。エンジニアの多くが興味抱くであろう「CTO」という役職。普段、「CTO」として働いている彼らはどんなことを考えているのだろうか?

登壇者

株式会社ietty CTO 戸村憲史氏
株式会社イノーバ CTO 佐藤公哉氏
株式会社クリエイティブボックスCTO 中坂雄平氏
株式会社ヒトメディア CTO 瀬川雄介氏
株式会社ベストティーチャー CTO 今佑介氏

モデレーター

株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー 技術顧問 平光昌寛氏

見出し一覧

・様々なトラブルに見舞われながらもCTOの道へ
・フリーランスからCTOへの転身
・エンジニアが自分しかいなかったから、強制的にCTOに
・CTOにはなるべくしてなった?
・CTOを探していたタイミングでジョインし、CTOに

様々なトラブルに見舞われながらもCTOの道へ

平光:まず、エンジニアであれば誰もが興味を持つと思われる「CTOになる方法」。これを最初に聞いていきたいと思うので、順番に話していただければと思います。ietty CTOの戸村さんからお願いします。

戸村:初めまして、iettyのCTOをしている戸村と申します。よろしくお願いします。簡単な自己紹介からさせて頂きますと、もともと自分は「株式会社CSK(現SCSK株式会社)」にSEとして入社し、6〜7年くらいずっとSEをやっていました。

 上流から下流のことなどを色々やりつつ、社内でクラウドサービスなどを作り、そのアプリケーション開発担当をするといった感じで自社サービスを手がけるなどSEとちょっと違ったこともしてましたね。そして2012年から株式会社iettyのCTOとして働いています。

 次に、「どうやって自分がCTOになったか」を話したいと思います。自分はSEをやっていたんですけど、もともとITで人を幸せに出来たらなという思いがあり、人が喜ぶ業務システムを作れたら面白いなと考えていました。でも、プロジェクトに予算があったりしたので、なかなか人を幸せにできるシステムを作れずにいました。であれば、「自分で作ってしまおう」と思い、起業を決意したんですね。

 そこから人を集めたり、VC(ベンチャーキャピタル)からお金を集めたり、色々をやっている中、VCから資金調達が決まり、会社を登記してサービスを作ろうというところまで来たんですけど、会社を登記する前にクビにされました。

 シード投資ということもあって、お金が全然少なかった。そうしたら、「給料が払えないから辞めてくれ」と言われ、「どうしようかな……」と思っていました。そんな中、投資をしてくれたVCの人が「チームに投資をしたから全員面倒を見るよ」ということで、別の会社を紹介してくれたんです。

 その紹介してもらった相手が、ietty CEOの小川泰平。ちょっと見た目はやくざみたいで怪しい人なんですけど、色々話をしてみると頭も良くて面白かったので、この会社にジョインしようかなと思ったというのが経緯になります。

平光:小川さんが会社を起こした時に、一緒にジョインした形でしょうか?

戸村:そうではなく、もともとエンジニアが足りないということで募集をしていて、そこに途中から自分が入ったという形です。

平光:CTOを探していたという感じですか?

戸村:そうです。

平光:もともと自分の力でCTOになる道みたいなものは作っていて、道半ばで様々なトラブルはあったけれど、その思いを果たしたみたいな。自分の手である意味手繰り寄せたみたいな感じですね。

戸村:そうですね。

フリーランスからCTOへの転身

スタートアップのCTOに共通していた意外な点 ーー エンジニアはCTOになるべきか否か【前編】 2番目の画像

平光:大変、参考になります。ありがとうございます。次はイノーバの佐藤さん、よろしくお願いします。

佐藤:僕は大学の専攻がマーケティングだったんですけど、理工学部の授業を受けたり、独学Javaの本を読んだりしていました。大学を卒業したんですけど、僕はサラリーマン出来ない人なんですよね。入社してから半年で辞めちゃって。

 会社を辞めた後は、最初に入った会社のOB会みたいなものがあって、そこの人たちの繋がりから仕事を貰いつつ、フリーランスでエンジニアをやってました。当時はガラケーがめちゃくちゃ多くて、ガラケーの対応などでお金を貰ってましたね。

 そのあと、もともと大学に入る前に親と「大学行くなら、大学院に行く」という話をしてたんですね。でも、当時の先生の「どうせ大学院行くんだったら、社会人向けのMBAみたいなのがあるから、そこに行け」と言われ、それに従って30歳になった時に大学院に2年間行き、そこを卒業してまたフリーランスをやって。

 サラリーマンもそのあと1年やるんですけど、この時はフリーランスみたいなサラリーマン。社長と僕しかいなくて、「売り上げ折半しようぜ」っていう非常に分かりやすいルールでやってました。

平光:業務委託みたいな感じ?

佐藤:業務委託に近いですよね。でも、一応会社に籍はあったので、名目上はサラリーマンです。その後、GREEに行くのですが、GREEに行く前にイノーバの宗像さんとCOOの幸村というのが、幸村は僕の大学院の同級生ですけど、コンテンツマーケティングみたいなことをやろうとしていてシステムが必要になるという話をしてたんですね。で、社員にエンジニアがいないみたいな。

 その時、僕がちょうどフリーランスに飽きてきた頃だったので、「どうせエンジニアいないんだったら、僕がレビューしますよ」というのが最初で、2ヶ月くらい手伝わせてもらいました。

 GREEでは、エンジニアではなくディレクターだったので、どうしても今までの仕事と畑も違うし、面白みももちろん違っていて、ちょうど業績も悪くなってきていたので、GREEでの仕事が面白くなくなっちゃたんですよ。

 それで、「イノーバ面白かったな」と思って、宗像さんに「僕を雇ってください」という話をして、最初のエンジニアとして採用されました。最初のエンジニアだったから「CTO」になったという感じですね。

平光:ありがとうございました。フリーランスからなったということで、先ほどの戸村さんとはまた違った経緯で面白かったです。では、次にクリエイティブボックスの中坂さん、お願いします。

エンジニアが自分しかいなかったから、強制的にCTOに

中坂:僕がCTOになるまでということで、僕はまだ24歳とキャリアが浅いのでそこまで話すことはないんですけれども。まず、株式会社オールアバウトで編集やエンジニアのアルバイトを始めたのが、大学4年生の時。編集とエンジニアの仕事を半々ぐらいでやってましたね。

 ご縁があって、そのままオールアバウトに入りました。編集の仕事はなしで、専属のエンジニアとして入社して、1年ぐらい働きましたね。オールアバウトでは、フロントからサーバーサイド、インフラなど幅広く勉強させてもらって退職。

 退職した理由が、現在やっているクリエイティブボックス。オールアバウトを退職する前から僕ともう1人、CEOの大野の2人で「GIFMAGAZINE」というサービスを作ってまして、最初は会社と並行で休みの日とかに作ってたんですね。

 そのサービスが結構、軌道に乗ってきたので、「このサービス本気でやりたいよね」ということになり、会社を辞めて起業しました。その時、エンジニアを担当できるのは僕だけだったので、強制的にCTOになったというのが経緯ですね。

平光:今のところ、めっちゃそのパターンが多いですね。3人中3人ですか、ありがとうございます。続いて、ヒトメディアの瀬川さん、宜しくお願いします。

CTOにはなるべくしてなった?

スタートアップのCTOに共通していた意外な点 ーー エンジニアはCTOになるべきか否か【前編】 3番目の画像

瀬川:株式会社ヒトメディアの瀬川です。経緯としては、ヒトメディアに入る前はYahooにWebエンジニアの新卒として入社しました。ただ、コンシューマー向けのサービスというよりかは、決済系のサービスとかグラフ化のサービスなどをやって、サービスの開発・運用含めて2年半ぐらいWebエンジニアとしてやってましたね。

 2009年にヒトメディアに入社したんですけれども、入社したきっかけは、もともと学生時代にベンチャーをやっていて、その会社に投資をしてくれたのがヒトメディアの代表だったんですね。学生ベンチャーは数人でやってたんですけど、その時も一応、CTOという肩書きでやってました。

 Yahooでエンジニアとして働いていたんですけど、数千人規模の会社で学ぶことは多かったのですが、やりたいことを自由にできないみたいな部分もあって。そこで「転職しようと思ってるんですよね」と転職相談をヒトメディアの代表に話をしたら、「じゃあうちに来なよ」ということでヒトメディアに入社しました。

 そこからCTOになった経緯なのですが、当時ヒトメディアにはシステム系のトップはいたんですけど、CTOという肩書きを持った人はいなかったんですね。そうしたら、ある日代表から「ちょっと肩書きとしてCTOをつけてあげるから頑張れ」みたいな話があり、なるべくしてなったというか、もらいましたって感じです。

平光:ありがとうございました。では最後に、株式会社ベストティーチャーの今さん、お願いします。

CTOを探していたタイミングでジョインし、CTOに

 今:新卒でSEをしていて、SE自体は社会の基盤の支えるような事ができる素晴らしい仕事です。けれどそれをやるのは俺じゃなくていいし、他にやりたい人がいっぱいいるので、俺は俺のやりたいことをやろうとKoozytという会社に転職しました。

 その会社を辞める前くらいに、短期留学でフィリピンに1か月ぐらい行ったんて?すね。留学から帰ってきてから、英語力を維持・向上するために「レアジョブ」などオン ライン英会話のサービスをいくつか調べて、試してみて。

 数あるサービスの中で、ベストティーチャーがライティングレッスンをしてから「Skype」するというスタンスで、「それはいいな」と思い、有料会員になって英語の勉強をしていました。

 そこから、今年の1月くらいにOpen Network Labが開催したスタートアップiOS勉強会みたいなイベントに参加したところ、代表の宮地が管理画面か何かを開いているのが見えて、ベストティーチャーの中の人だと。その時は、いちユーザーだったので、ちょっとお近づきになりたいと思って話しかけた、それがきっかけですね。

平光:ファンだったということですか?

:そうですね。「よく使ってます」みたいな話をして、一緒にご飯をを食べたり、なんやかんやあってCTOになりましたね。

平光:その、なんやかんやっていうのは(笑)?

:一緒にご飯を食べたのは、ちょうど前のCTOが別の事業を起こそうとしていて、
宮地さんがちょうどCTOを探していたタイミングだったんですね。その時、自分が開発でジョインしていたサービスの方向性と自分のやりたいことにズレを感じていて、よく「はてな」のエンジニアがドッグフィーティングができる。要は、自分の使っているサービスを自分で直すのって結構モチベーションが維持しやすいっていうのがあって、「それいいな」って思ったんです。

 その時、ちょうど言語もRubyを触っていたので、サービスはRubyで開発されている、あとiOSもやりたいと言っていたので、RubyとiOSと英語と、やりたいもの全部一緒にあるじゃないかと思い、入社しました。これがなんやかんやです。

 それで、入る前ちょっと手伝ったりとかして、「これなら大丈夫そうだ」というのもあってCTOに就任したっていう感じ。去年の7月に就任したので、約4か月。今のところ、何とかやってこれてますね。

平光:ありがとうございました。ちなみに、今さんがベストティーチャーに入社された時って、エンジニアの人は他にいなかったんですか?

:引き継いだタイミングの時には、前のCTOと少しだけ時間がかぶってるんです。その時引継ぎを。

平光:その時は、一人やっていた人が前任でいらっしゃって、引き継ぎをして。

:その前のCTOが業務委託をやっていた時期もあるそうで、「CTOっていう肩書を 1回つけておくと色々いいことあるよ」と言われて、「それはいいな」と。

 冗談です。もちろんスタートアップのCTOだと、なんでも自分でやらないといけなくなるので、能力と責任の問題もあると思いますがいい成長機会だと思いました。

平光:何で今、そういった質問を聞いたかと言うと、私は今5人の話を聞いて、CTOのなり方が分かったからです。どうしたらCTOになれるか。実は5名とも共通点があって、CTOになるタイミングでエンジニアのいないところに行ってるんですね。エンジニアが一人もいないところに自分はエンジニアなのに一人で行って、そこでCTOになってるみたいな共通点が。

 エンジニアの中で揉まれてなるものではない、というのはすごく意外でしたね。誰もエンジニアがいないところにチャンスがあると。大変勉強になりました。ありがとうございました。(続く)


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード