人は物事を考えたり感じたりするとき脳を使っています。それは皆さんご存知ですが、脳が実際どのような働きをしているかは、あまりよくわからないですよね。
脳科学者である池谷裕二氏が脳の働きをわかりやすく説明した本『進化しすぎた脳』に関する意外な「なるほど!」が詰まっています。
私たちの思考、感情を脳から考察する
私たちは日常的に思考や感情をもとに生活しています。これらを、意識と無意識に分けて考えてみましょう。
まず、意識的に行うものとして「言葉」があります。思考をするときや判断をするとき当たり前のように言葉を用いていますが、言葉が使えなくなることで人間は抽象的なものが判断できなくなってしまうそうです。
例として、「ウェルニッケ失語症」があります。これは、言語を操るウェルニッケ野という脳の一部分がダメージを受けたときに起こる症状であり、言葉が思うように出てこなくなるというもの。すると、「水を飲みたいか?」という質問には答えられても「なにが飲みたいか?」という質問には答えられなくなってしまいます。脳で考えたことを単に言葉として発しているわけではないということが分かりますね。
次に、無意識に行うものとして「感情」があります。芸術作品を見聞きしたとき「美しい」といった感情が無意識に湧き上がりますが、この無意識の感覚のことを「クオリア」と言うそうです。
「恐怖」を例に考えてみましょう。恐怖の誘発は、脳の「扁桃体」部分の活動によるもの。しかし、扁桃体が怖いという感情を生み出しているわけではなく、扁桃体が活動することで、その情報が「大脳皮質」に送り込まれ、言葉に変換されて最終的に「恐怖」を感じるのだそう。つまり、「言葉」という情報がなければこうした感情は生まれないわけです。
言葉を持たない動物は恐怖を感じて扁桃体が活動を始めた時に、怖さという感情を持たず、逃げ出すような行動するのだそう。つまり、抽象的な説明、感情はすべて「言葉」ありきで理解しており、こうした機能を持っているのは人間だけということです。
記憶とは、曖昧なものだった
記憶力に関するお話も。記憶力が高い人ほど素晴らしいといった評価もありますが、実は脳の記憶は曖昧なものでした。むしろ、あいまいな記憶が人間には必要なのだそうです。
例えば、完璧な記憶で人を認識すると仮定した場合、同一人物でも服装が変わってしまうと記憶と一致しないため、別人と認識してしまいます。しかし、人はあいまいな記憶をしているので、認識する相手の服装が変わってしまった時でも共通点を見出し認識できるのだそうです。
共通点を見出し、環境に合わせて適応させることで様々な事柄を関連付けて記憶できるだけでなく、新たな創造性が生まれたりします。そのため、曖昧な記憶が必要だということです。
『進化しすぎた脳』から、意識や記憶に関連するものを取り上げました。他にも視覚、感覚に関する話や科学的な考察も述べられているので、さらに掘り下げて知りたい人はぜひ手にとってみては?
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