大切な商談や大勢の前でプレゼンをする時、緊張で「失敗したらどうしよう」と弱気になってしまう人は多いのではないだろうか。いつもは自信を持って話せる内容でも、堂々と話せなくなることは多々ある。そんな時、自信を持って物事に臨めれば、最高のパフォーマンスを発揮できるだろう。今回は、一瞬で自分のモチベーションを高め、自信を持てるテクニック「アンカリング」をご紹介しよう。
アンカリングとは「条件づける」こと
アンカリングとは、ある特別な体験に感覚的な動作を条件付けすることで、いつでもリラックスした精神状態を引き出せるようにするテクニックである。例えば、ふと店で流れている音楽を聴いて、昔を思い出して懐かしい気持ちになるといったこと。皆さんにも、ある特定の場所に行くとその時の出来事や気持ちが鮮明に甦る、という経験はないだろうか? これは無意識にアンカリングしている状態だと言える。
トップアスリートなどはアンカリングを意図的に活用し、自分の精神状態をコントロールしている。例えばイチロー選手。彼が毎回見せる「打席でバットを前に突き出し、左手で右腕の袖を引っ張る仕草」は、最高のパフォーマンスを引き出すためのアンカリングだと言われている。
それでは、緊張をなくすためのアンカリングとは具体的にどのようなものだろうか? それは、「自分が最高のパフォーマンスを発揮した経験」を思い出すというものである。人から褒められたり、認められたりしている場面や気持ちを思い出すことで、どんな時でも落ち着いて堂々と物事に臨むことができるようになるのだ。
アンカリングができるようになる5つのステップ
アンカリングは短時間でモチベーションを高められる方法だが、間違ったアンカリングをしてしまうと、逆効果になってしまう場合がある。正しいアンカリングが出来るようになるための5つのステップを見ていこう。
1)自分が一番輝いていた瞬間を思い出す。
例えば、仕事で大きな成果を出して周囲から褒められた経験や、どんなに困難な状況でも諦めずにやり遂げた経験など。自分の中で「一番輝いていたな」と思う出来事を一つ選んで思い浮かべ、その時の達成感や心地良さを思い出してみよう。
この時に注意すべきは、100%ポジティブな出来事を選択することである。ただでさえナーバスな状態の時に、少しでもネガティブな要素がある出来事を思い出すと、思考がネガティブな方向へと引っ張られてしまうからだ。
2)最高の自分を表すフレーズをつくる。
覚えやすく、最も自分の気持ちが高まるフレーズを作ってみよう。例えば、「私は無敵だ」「僕は優秀な営業マンだ」などである。有名な例を挙げると、オバマ大統領の "Yes We can." といったようなもの。自分の気持ちを高められるようなものであれば、どんなものでも構わない。ただし、あまりに現実離れしていて自分でも信じられないフレーズは、逆効果になるので避けた方が良いだろう。
3)ジェスチャーを決める。
自分だけのジェスチャーを決めることも効果的なアンカリングの1つだ。ただし、自然に出来るかつ、普段行わない動作にした方が良い。なぜなら、日常的に行う動作だと特別感がなくなってしまうし、不自然な動作だと行うのが恥ずかしくて、結果的に使わなくなってしまうからである。そのため、自分を落ち着かせられ、人に見られても行いやすい動作を選ぶべきである。例えば、イチロー選手のジェスチャーは「右袖を引っ張る」といった自然で行いやすい仕草だ。
4)関連づける練習をする。
思い出す出来事・言葉・動作を決めたら、後はそれらを関連づける練習を行う。最初は恥ずかしいと思うので、人があまりいない静かな場所で練習をすることをお薦めする。決めた動作を行ったり、決めた言葉を発したりすることを、反射的に気持ちが沸き上がってくるようになるまで繰り返して初めて、実際の場面で役立てることが出来る。
5)実践する。
練習で出来るようになったら、実際に自信を持って臨みたい場面で実践してみよう。慣れれば、数秒で気持ちを切り替えることが出来るようになるが、最初は時間がかかるので、目的地に行き着くまでの電車やバスの中からやってみるといいかもしれない。
仕事をしていれば多く存在する「ここは失敗できない」という場面。そんな場面で最高の自分を思い出させ、緊張を和らげるアンカリングは、きっとあなたの強い味方になってくれるはずだ。緊張してちょっと不安だと感じたら、ぜひ活用してみてはどうだろうか。
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