インターネットが一般的に広まり始めて約20年が経ちました。たった20年で、ITに興味のない人でも簡単にインターネットが使えるような環境が当たり前になったことから、いかに社会に定着しているかがわかるでしょう。
コミュニケーションやショッピング、ゲーム、ニュースなど以前から存在していたものも、ネット社会の到来によって大きな変化を遂げました。
数々のIT企業を渡り歩いてきた経験のある著者が分析した『ITビジネスの原理』という本から、インターネットによって人間と物はどう変化したのか、ITビジネスは今後どうなっていくのかを考察してみましょう。
インターネットにより価値が変化したものとは?
インターネットが普及したことで何が一番大きな変化を遂げたのか。著者によるとそれは、物の価値とそれに伴うビジネス(商売)だそうです。ビジネスは安く仕入れて高く売るのが基本であり、インターネット以前は安い場所で仕入れて高く感じる場所へ売るというスタイルでした。
しかし、インターネットが普及したことで安い場所や高く感じる場所を誰でも知ることが簡単になり、どこでも購入できることが可能になったため、インターネット以前のビジネスの方法は成り立たなくなってしまいました。
仕入れる場所に由来する「価格」という価値で勝負できなくなった結果、ビジネスは「情報の質と量」で差を付けるというスタイルに変化を遂げたのです。
人はなぜSNSを利用し、情報発信するのか
ブログやFacebook等のSNSが登場したことで、ホームページを作るためのHTMLなどの言語の知識が不要になりました。そして、それらは気軽に利用できることから、インターネット上で情報発信する人が爆発的に増えるようになります。
インターネット以前の時代では、人が情報発信するためのコストが非常にかかっていました。しかし、現代のネット社会ではコストはほぼゼロに等しいといっても良いほど気軽です。
情報発信によって他者からの反応や「誰かに認められている」という感覚を得ることができるため、自分自身を豊かにすることにつなげられます。人々がSNSを利用して情報発信を進んで行う理由はそこにあります。インターネットはSNSを通して人と社会を結ぶ役割を、容易にしました。
情報発信といっても日本人はジャーナリズム的な情報ではなく、特定の目的の無い日記などを発信し、そこからコミュニティが形成することが多いそうです。そういった点に着目したことで新たなビジネスも生まれました。その代表例が「LINE」です。
具体的なことを書く必要がないこと、文章を通じて簡単なコミュニケーションが取れることを大切にしている「ハイコンテクスト」な嗜好がヒットの要因です。
今後のITビジネスはどこへ向かうのか
ITビジネスの代表例としてAmazonを取り上げます。もともとインターネット書店としてスターtしたAmazonは、どこでも同じ価格で同じ書籍が買えるのが特徴であり、後に発展したことで、豊富な商品を安価にどこからでも買えるというスタイルに変化しました。
著者によると、Amazonのような誰が買っても同じような物がどこでも手に入るというビジネスでは、価格競争や配送スピードなどによる消耗戦が起こるため、いつか販売者も消費者も疲弊してしまう恐れがあると述べています。では、解決するためにはどうしたらいいのでしょうか。
解決策の例として、著者は楽天のビジネスの方針を挙げています。楽天はAmazonと違い、販売者が独自に販売ページを作ることができます。つまり、販売者が商品の魅力という、付加価値を顧客に伝える販売方法です。
アメリカ的で合理性を追求したAmazonとは正反対に位置する、日本的な「ハイコンテクスト」さを取り入れ、よりインターネットと人との間を身近なものにしていく必要があります。
インターネットは社会をどのように変化させたのか、ITビジネスは今後どのような変化をするべきなのか、ネット社会における「ハイコンテクスト」の必要性など非常に興味深い内容でした。
『ITビジネスの原理』には他に、ウェアラブルデバイスに関しての分析もあり、過去から未来にかけてインターネットは社会にどのような影響を与えるかという点で参考になることも多いでしょう。気になった方はぜひ読んでみては?
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