国境を超えて文化や企業が交わるグローバル化の時代。日本に存在しなかったモノ・コトが流通するようになり、新しい価値観に触れられる機会が増えました。しかし、毎年言われ続けているグローバル化ですが、実際のところ社会にどのような影響を与えているのでしょうか。
今回ご紹介する『グローバリズムという病』は、グローバリズムの負の側面を批判的に考察した本です。グローバル化の必ずしも良いとはいえない部分や、意識しなければ気付かないような点に着目しており、非常に興味深いです。
「グローバル標準」がもたらしたものとは
グローバル化に伴い、軸となる「グローバル標準」が存在します。それは、言語(英語)だけではなく文化的なルールや価値観などの基準を含めたものです。良い側面としては、国境を超えたコミュニケーションを容易にする点が挙げられます。
しかし、「グローバル標準」は悪い側面も持っていると著者は述べています。ローカルルールを持っており、それぞれの母語でコミュニケーションを取っていた国にとって大きなハンディキャップになるということ。例えば、英語圏の国であればスタート地点からグローバル標準ですが、日本のような英語を母語としない国にとってマイナスからのスタートになります。
グローバリズムはビジネスのため?
「グローバル標準」を持つことは、ビジネスにとって大きなメリットとなります。しかしながら、著者によると全ての人にとってメリットになるわけではなく、先に挙げたように「グローバル標準」を掲げるグローバリスト達の圧倒的な利益があるそうです。
グローバリズムは、ヒト・モノ・カネの流動化によってポジティブな経済効果があると言われています。ただそれがグローバル企業のみ享受できる効果なのか、それともグローバリズムが浸透することですべての人が享受できるものなのかは気になりますよね。では、次にグローバル化によって社会にどのような変化があったのかを見ていきます。
グローバル化で社会に変化はあったのか
現在、一部の学校で国際社会で戦える人材を作るためのグローバル教育が行われています。まず、教育においてグローバル化はどのような変化を与えたのでしょうか。著者によると、本来異文化を学べるはずであった思想や人類学などリベラルアーツ教育がグローバル教育によって、縮小されるという変化が起こっているそうです。
そして、企業においてグローバル化を進める会社は優遇される時代であり、ローカルな領域で仕事をしていた人にとって大きな痛手となっているそう。グローバル化によって様々な分野で負の変化が起こり始めています。
このようなグローバル化を推し進める社会の変化は、消費社会が進むことによって生まれ、より良い社会を過剰に求めすぎたためにグローバリズムという病に侵されてしまっていると著者は述べています。
グローバル化と聞くと、国境を超えて新しい価値に触れられるというポジティブなイメージを持ちますが、それを追求した結果、本当に幸福になれるのかと考えたときに必ずしも良いものではないということは明らかだと思います。過剰すぎる現代のグローバリズムという考え方に疑問を持った方はぜひ読んでみてください。
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