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「コンプレックスを武器にしろ」ーー 家入一真が語る、ビジネスで勝利する本当に「強い」人間のルール

野口直希

2015/01/07(最終更新日:2015/01/07)


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 これから就活を迎える学生の多くが抱える悩みや不安。何をすればいいかもわからずに、気持ちばかりが焦っている人もいるだろう。そんな人のために、独自の道を歩く4人の先輩が一筋の光を与えてくれるイベント、「『人を楽しませる』を仕事にしたい学生のためのセミナー」が明治大学で開催された。その講演を5回に分けて書き起こしていく。

 4回目のテーマは、働くときに大切にしてほしいもの。就活では色んな情報に振り回され、一緒に働く相手のことが考えられなくなってしまいがち。登壇者の4人が、一緒に働く人に持っていてほしいものとは何なのだろうか?

登壇者

芸人 2003年から中田敦彦とコンビ「オリエンタルラジオ」として活動 藤森慎吾氏
クリエイティブディレクター 2011年にクリエイティブラボ「PARTY」設立 中村洋基氏
株式会社TBSテレビ 番組プロデューサー 中島啓介氏
BASE株式会社 共同創業者/取締役 LivertyやCAMPFIREなど複数の立ち上げに関わる 家入一真氏

モデレーター

株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー 佐藤詳悟氏

前回までの記事はこちら



見出し一覧

・自分だけのストーリーを持て
・スキルはいつでも身に着けられる
・ゾクゾクする感覚を大事にして
・むしろ弱みをさらけ出して
・緩いつながりを大事にして

自分だけのストーリーを持て

佐藤:ここにいる皆さんは、これから就職して仕事を始めていくと思うんですよ。

藤森:であればテーマは「企業はこんな若者が欲しい」にしませんか?

佐藤:大きな企業が求めている若い人というよりは、この4人が「こんな若者が来てほしい」って思う人を聞きたい。4人はどういう若者と仕事をしたいですか? 家入さんは、若い人とだいぶ絡んでますよね?

家入:大学生の子が集まって行うプロジェクトが多いので、若い人と絡む機会は多いですね。でも、こんな若者がいいって言われて、そういう若者を目指すのがいいかっていうと、そういう話でもない気もするんですよね。

「コンプレックスが武器になる」

 1つ挙げたいのは、コンプレックスを持っている人。持っていれば持っているほど良い。人は何かしら生きていく中でいろんな経験をしたり、劣等感を抱いたりするので、皆さんも20年間生きてきた中で、色んなことがあったと思うんですよ。

 その中で自分固有の物語みたいなものを持っている子が、すごくいいなって思います。そして、それが武器になる。

 例えば、いじめられた経験を未だに引きずっているとか。いじめを受けていたから、こういうことができるようになったという風に、逆に物語の延長線上につなげることができれば、すごい武器になる。だから、自分固有の物語を持っている人がいいなと思います。

佐藤:最近、企業もそんな感じだと思います。ドコモとソフトバンクだと、ソフトバンクの方がいいじゃないですか。それって、孫正義さんがいるから。ドコモの社長はあまりイメージできないじゃないですか。

藤森:今のはいいですね。自分のストーリーを持っているというのはすごくわかるな。

スキルはいつでも身に着けられる

佐藤:次は洋基さん、お願いします。

中村:実は、今うちの会社は新卒を採るのを辞めちゃったんです。それは、プロジェクトに対してドラクエみたいにパーティーを組むため、わりと才能ある人だけでチームを作るようにしたから。最初から魔王みたいなやつが敵なので、レベル1だとどうしてもキツくなってしまう。

 前に新卒で採った子は、レディー・ガガのプロモーションのプロジェクトにあてたら全然わかんなくて、「僕もう駄目です」って言って辞めちゃいました。レベル1の子は何回レディー・ガガと戦っても勝てない。途中で死ぬと、経験値が上がらない。それは、とても可哀想だと思ったので、今はもう新卒は採らない。

 そもそも今の時代であれば、学生の頃からでも技術って簡単に学ぶことができるんです。プログラミング技術も学べるし、デザインだっていくらでも教えてくれる。

 僕は大学生の時に、HTMLとフラッシュ、簡単な3Dを勉強しました。あとはモーショングラフィックも勉強して、それは今でも生きています。非常に実務的なクリエイティブの練習が、学生のうちにも経験出来る。

「何でもいい。面白いクリエイティブをいくつも持って」

中村:自分はコンビニのバイトしかしてなかったけど、面白いバイトをやったら、それがそのまま技術の習得にもつながることもある。もしかしたら、ADとかも見習いがいるんですかね?

中島:います。

中村:だから、そういうバイトで現場を知っておけば、すごく有利になる。もうひとつは、僕は前に電通でちょっと採用を手伝っていたんですが、CMプランナーとかコピーライターって、そういう技術が高いんです。つまり、常に面白いことを考え続けられる打率が高いやつが勝つ。

 それは、いい手法にたまたま出会ったからかもしれない。けれど、それまでのストーリーも教養なんです。僕は、多動性症候群みたいなところがあって、車を運転しているときはエアコンのスイッチをずっといじって、ラジオもパチパチ変えてしまいます。だから、落ち着いていられない。ゆっくり文学書とか読めない。

 ひとつのことができないから、結果的に器用貧乏に陥るんですけど、色んなものをすぐやめてしまうというのも、おそらく教養に入ると思います。マンガでも映画でもいいし、面白いクリエイティブをいくつも自分の中に入れておくべきです。

ゾクゾクする感覚を大事にして

佐藤:ありがとうございます。中島さん、お願いします。

中島:僕は、若いときに中毒体験をしているかどうかが重要だと思います。軽い中毒者はわりとたくさんいるんですけれど、何かをしたときの喜びって、何ものにも代えがたい。そこに行くためには、何でも頑張れるという我慢強さが最初は必要ですけど、喜びを体験していないと我慢すらも出来なくなってしまう。

 現場でも、将来のための我慢ができる人とできない人がいて、良いか悪いかはわからないですけど、面白いものを作るためには我慢強さがすごく大事になってくる。その中毒のもとは、若いときのコンプレックスだったり、何でも頑張れるんだって思う気持ちだったりします。

 その気持ちさえあれば勉強だって出来るようになるし、興味もたくさん湧いてくる。そして、先輩を超えてやろうという気持ちも起きてくる。そういう人はどんなこともなあなあにしない。その一線を超えるのは難しいけれど、そこを超えられる人が面白い人だと思いますね。

むしろ弱みをさらけ出して

佐藤:ありがとうございます。続いて藤森さん。マネージャーでも芸人さんでも、若い人で成功している人の共通点ってありますか?

藤森:難しい質問ですね。僕の後輩で成功したのって、年上ですけどエドはるみさんとかかな。僕も芸人になった当時は、自分が何かよく分かっていないうちに、スマートな売れ方をしてしまったんですよ。

 MCをやるなら、ちゃんとした人間でいなきゃいけない。知識も教養もちゃんと携えて、何でも合格ラインに近づけなきゃいけない。そんなことばかり考えていた時期が、一番の失敗で、自分はそれには向いていないことが分かりました。

 結局、自分に嘘ついて無理しても得られるものはあまりなくて、お互いに慣れないことをしたら、仕事がなくなりました。そこから、どうしよう…と焦って、「もういいや。どうせ食えなくなるんだったら、自分らしくやってみよう。自分が楽しいこと、自分が面白いと思うことは何だろう」と考えた結果、あやまんJAPANと一緒に派手なことをやりました。

 あれって別にめちゃめちゃ考えていたわけじゃなくて、自分が本当にやりたいのがあれだったんです。基本的にはあんなもの、テレビは受け入れてくれないじゃないですか。

何が向いているのかは、他人が教えてくれる

藤森:だけど、それを面白がってくれた日本テレビの人がいて、「いいよ、深夜だしやってみなよ」って言ってくれて、それで思わぬ反響があった。そのうちに、「藤森って面白いな、チャラ男」ってタモリさんまで面白がってくれるようになったんです。

 タモリさんのスゴイところは、「そうだよな、お前がそういう人間だってわかっていたぞ」って人のキャラクターを、一言で言い当ててしまうこと。「チャラ男」って言われる前から、「お前は薄っぺらい」ってずっと言われていました。

 でも、それって人として隠したい部分じゃないですか。「いえいえ、そんなことないです。社会人なんですから、ちゃんとした人間ですよ」って言いたい。だから、僕の場合は薄っぺらさを隠している時期がダメで、それを思って開き直って出し始めたら人が認めてくれるようになりました。

 だから、出来ることは決まっていると言いたい。模範的な人になるのではなくて、自分に出来ることを見つけてほしい。何が向いているかは、他人が教えてくれます。そして、才能は他人が引き出してくれるものです。

緩いつながりを大事にして

佐藤:家入さんはどうですか?

家入:運がいいっていうのは、人に恵まれていることだと思います。それがどういうことかと言うと、自分が輝けそうな場所に就職するときにきっかけになる人って、実は身近な人よりも緩いつながりの人なんですよ。これ、誰が言ってたんだっけ?

藤森:わかんないですよ、こっちは。

家入:僕、何でこんな話しているんでしたっけ? でも、僕は友達とかいないんですよ。親友みたいに呼べるやつはふたりぐらいしかいない。でも、そのぐらいでいいなと思ってます。何でこの話したかったんでしたっけ?

藤森:わかんないですよ。

家入:それで、濃いつながりよりも緩いつながり。例えば、ここで知り合った人ぐらいの感じ。そんなに仲良くもない人とつながることで人生が変わることって、すごく多い。例えば、初めて会う人に「最近会社辞めたから」って言ったら、「じゃあ、こういう募集しているから応募してみる?」とか。

 そこで掛け算が生まれて、新しい可能性が生まれる。身近な人だったら、「お前はこういう人間だから、こういう仕事は向かないよ」とか言われて、結局同じような業界から抜けられない…。

 だから、緩いつながりをたくさん持っている人が結果、うまく立ち回っている。結局、運がいいかどうかって、そうやって薄く広く、いろんな人とつながっていたかだと思うんです。まとまった?

佐藤:今までを振り返ってみると確かに、本当にどっちになったかはわかんないですもんね。

中村:ラッキーで言うと、会場のみなさんは優秀だからサッと明治に入ったと思うんですけど、僕は慶應の推薦に落ちたんです。高校の時、学校の勉強だけちゃんとして推薦で入ろうとしていたら、その魂胆を先生に見透かされて「入れてあげない」って言われました。

 学校の勉強だけとにかくやって、模擬テストには志望校を酪農畜産大とか冗談で書いて、結果E判定で誰にも見せられない。それでは、もちろん慶応に行けないので、高校にも行かず、10月の半ばぐらいから受験勉強を始めました。

 国語、英語、日本史と小論文だけに絞って、日本史は近現代史は捨てて、一日16時間は勉強しましたら、間に合った。結局、早稲田の一文も含めて全部受かったんですよ。

 その時に「為せば成る」と思うようになりましたね。推薦を落としてくれた先生とかのおかげで、とことん突きつめる機会に恵まれたのかなって思います。それで落ちたら、為してもどうにもならないという人生観を持ってしまって、今みたいにならなかったんじゃないかな。(続く)



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