スタートアップとして新しい道を切り開きたいのなら、多くの困難を乗り越えなければいけません。そんな困難を心配する生まれたての起業家、あるいはスタートアップにジョインしたいと考えている人たちに、先人が強力なアドバイスを送ってくれました。それが、2014年9月に開催されたイベント「サーキュレーター・サミット2014」です。いま最もアツイ起業家が集結し、スタートアップの本音を赤裸々に語りました。
ここで語られたのは、ベンチャー企業の資本政策。特にまだ事業がうまく回っていないベンチャー企業にとって、株式の配分や良いベンチャーキャピタル探しは頭を抱えがちな問題です。今回は、3人の起業家と2人の専門家たちが、それぞれの失敗経験からベンチャー企業の正しい資金政策を語ってくれました。
スピーカー
重松大輔 株式会社スペースマーケット 代表取締役 CEO
大賀康史 株式会社フライヤー 代表取締役 CEO Co-Founder
辻庸介 株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO
保田隆明 資本政策専門家
片岡英彦 広報専門家
モデレーター
嶋根秀幸 MOVIDA JAPAN Inc.
見出し一覧
お寺でのパーティーを企画する起業!?
社長の目線で資金繰りを考える
株の分配はなかなかやり直しがきかない
ストックオプションの良さを伝えるのは難しい?
あなたにとって理想のベンチャーキャピタルは?
ベンチャーキャピタルとのシナジーを考える
お寺でのパーティーを企画する企業!?
(写真 スペースマーケット代表取締役 CEO 重松大輔氏)
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ベンチャー企業の失敗の乗り越え方ということで、今回は苦労も多そうな3人に聞いていこうと思います。また、専門家の方も2人いらっしゃいますので、面白おかしく本質をお伝えできればと。まずは簡単に登壇者のみなさんのプロフィールをお願いします。
重松(スペースマーケット):
みなさん、こんにちは。株式会社スペースマーケットの重松と申します。今日はよろしくお願いします。スペースマーケットは、お寺から野球場まであらゆる施設を1時間単位で貸し借りできるサービスです。現在の掲載数は400ぐらいですが、取扱いベースで700ぐらいの会場さんをご紹介できます。
お寺でパーティーをやったりだとか、鎌倉の古民家がすごいオフサイトミーティングで利用されたりだとか、本当にすごいですよ。他にもロケで使いたいとか、開発合宿で使いたいとか、そういった今までにないニーズを掘り当てております。
大賀(フライヤー):
みなさん、こんにちは。フライヤーの大賀と申します。私は、20代はハードに働きたいと思ってアクセンチュアというちょっとハードな会社に入りました。その後、経営コンサルタントを始めて20代の終わりごろにちょっと違う会社で働きたいと思って、フロンティアマネジメントという産業再生機構の人たちが作った会社で3年ほど働きました。
コンサルってかなり忙しくて、日経新聞読みなさい、クライアントに150%の時間を使いなさい、週刊ダイヤモンドも週刊東洋経済も読みなさい、旬な本を全部読みなさいと言われてきました。これは24時間じゃ足りないなと思って、忙しいビジネスパーソンをサポートしていくのが我々のフライヤーというサービスです。
1冊10分で読める本の要約サービスということで、400~500ページの本を5枚程度で写真や見出しを織り交ぜた5枚程度の文量ですらすらと読めるようにしたものです。出版社の方とやり取りをして、月25冊の書籍を全て許諾も取って、社内でダブルチェックをします。さらに、出版社の担当の編集者の方にもコンテンツを確認していただくので、品質にはかなりこだわっていますね。要約のレベルを超えているなんてコメントもいただきます。去年の10月にサービスをリリースして、現在の会員が2万人を超えてきて、やっと事業として立ち上がってきました。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
辻さん、お願いします。
辻(マネーフォワード):
みなさん、こんにちは。辻と申します。今日は比較的、年齢の上な起業家の方と一緒ですね。重松さんはおいくつですか?
重松(スペースマーケット):
38歳です。
大賀(フライヤー):
35歳です。
辻(マネーフォワード):
私は38歳です。今や80年代生まれの起業家が多いというのに、僕たちは頑張っていますね。僕はソニーからマネックスに行って2年ほど留学してまたマネックスに戻って、起業したという形です。僕らのサービスは主に2つで、1つ目が個人向けの家計とか資産管理のアプリですね。150万人ぐらいユーザーがいらっしゃって、日本で一番大きなサービスだと思います。
2つ目が、中小企業などのバックオフィス向けのクラウド型サービスです。最近はメールもクラウドになっている中で、MFクラウド会計・確定申告、MFクラウド請求書というサービスを提供しています。今後、経費とか給料とか、そういうものもクラウド型で、テクノロジーの力でより便利で安いサービスを提供しようと頑張っています。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ありがとうございます。続いて専門家。広報の片岡さん、お願いします。
社長の目線で資金繰りを考える
片岡(広報専門家):
片岡英彦と申します。私は、簡単に言うとコミュニケーションのプロです。特に最近では、戦略PRの分野を中心にやっております。最初の日本テレビでは、主に番組宣伝でした。「電波少年」「伊東家の食卓」、巨人戦の中継などの番宣を長くやっていました。
その後はAppleでカスタマーコミュニケーション、いわゆるダイレクトマーケティング。MTVで企業広報と社長室をやって、マクドナルドでマーケティングPRという、いわゆる純広告でもプレスリリースを送るだけでもない販売に近いPRをやり、その後mixiで宣伝広報全般をやらせてもらいました。いまはフランスに本部のある国際NGO団体「世界の医療団」の広報を務めています。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
資本政策の保田さん、お願いします。
保田(資本政策専門家):
保田です。私は証券会社にいたんですが、15年前に起業してソーシャルネットワーキングサイトを作りました。でも、あえなくGREEとmixiに敗れて、翌年にネットエイジに拾ってもらって、そこでベンチャーキャピタルファンドを3、4本作りました。その後2006年から独立して財務アドバイザーみたいなことをやって、20社以上のベンチャー企業の社外役員を経験して、今も7社か8社の社外役員をやっています。
社外役員では基本的に資本政策をやっていて、資金調達や株価について社長に近い目線で考えています。あとはイグジットですよね。途中で株主が売りたいと言ったら、どこに買ってもらおうかなどを考えています。いろんな会社さんとおつきあいして、自分のお金も1000万ぐらい投資をしてきました。
株の分配はなかなかやり直しがきかない
嶋根(MOVIDA JAPAN):
では、資金調達について。創業時の調達や、その時の役員間で最適な株式保有について聞きたいのですが、ちなみに今、みなさんがどういうふうな構成で株を持たれているか、ちょっとお話していただいてよろしいですか?
重松(スペースマーケット):
当然、創業者間契約はきっちりやっています。ちゃんと腹を割って話し合いました。これは絶対やったほうがいいですね。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
いわゆるベスティング?
重松(スペースマーケット):
ベスティングも入っています。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ちなみにベスティングというのは、創業者が抜ける場合に、その人の株式保有を買いとるなどの規定ですね。なので、創業時は必ずした方がいいことの1つでもあります。
大賀(フライヤー):
今日の本題はベンチャー企業の失敗の本質と乗り越え方です。私はまさにいろいろ失敗してきたので、そのあたりがみなさんの教訓になればと思います。私は創業するときに、重松さんの奥さんみたいな資本のアドバイザーはいなくて、3人でやることになって、代表は年の功で私がやることになりました。
株主間契約の話も当初知らなくて、あとで巻きなおしをしています。その時のタイミングが、適切だったら良かったのかもしれないんですけれども、資金調達でいろんな話が出てきた頃だったので苦労しました。
そもそも株が何なのかを考えると、私は3つぐらいあるかなと思います。1つ目は権利。議決権が発生するものなので、会社に対する発言権になります。2つ目が、夢って言うんですかね。「この会社をきちんと上場させていくんだ」みたいな。これはVCさんにとってはリターンだと思うんですけれども、経営者にとっての夢ですね。そして3つ目は、コミットメントです。株を持つことで、長期的なコミットを歩む、一緒にやっていく意志を持つ。
この3つの特性が絡み合うので、あとから戻すのが本当に大変なんですね。夢に出てくるくらい、難しい話です。従いまして、特に株は細心の注意を払って始めた方がいいと思います。先人の知恵はしっかりと借りた方がいいのではないでしょうか。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
そうですね。資本政策は後戻りできないというのは大原則ですよね。ありがとうございます。辻さん、お願いします。
辻(マネーフォワード):
僕らは6人でしかも結構いい歳で始めました。出資は6人みんなが出して、みんなでエコノミックリターンを取ることにしました。6人の中にスタンフォードでMBAを出たやつがいるんです。そいつが言うには、ベンチャーあるあるで、6人などの大人数ではじめると、とにかく喧嘩するらしく、会社がバラバラになってしまうことがあるらしいんです。スタンフォードでそう習ったと言っていました。それが唯一役に立った知識だと思います。それで、誰が最終的に意志決定を行うのかという点については、ちゃんとやりましたね。
なので、議決権は全部僕が持っています。みんなの意見を束ねるタイプなので独断専行というタイプでは全くないですが。それでもやっぱり、最後は辻が決めるというのはみんな分かってくれていました。おかげさまで6人喧嘩もなく、全員が仲良く続いていますね。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
まだメンバーで仲良くやられていらっしゃる?
辻(マネーフォワード):
そうですね。6人全員、残っていますね。
ストックオプションの良さを伝えるのは難しい?
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ありがとうございます。ここで保田さんにお伺いしたいのですが、創業して問題が起こった時に、それを解決するには基本的にどうすればいいのでしょうか。
保田(資本政策専門家):
たぶんもう答えは出たと思うんですけれど、創業者間で株を売る時にはどうするかみたいな取り決めを事前にやっておくことだと思います。ただ取り決めても、誰かが辞めるときに株を売る、なんてことはあります。そんなときに、社長がそれを買い取るお金を持ってないこともよくあるわけです。ベンチャーってカツカツなので。そこで、その資金をどうするのか、ということになります。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
大賀さんはそんなときにはどうしましたか?
大賀(フライヤー):
ワールドビジネスサテライトで紹介されて少し売り上げも出始めたころで、絶対うちの会社はうまくいくと信じていることもあり、借りられるところはすべて当たっていきました。親戚もまわりましたね。もっといい方法があればと思うんですけど。
保田(資本政策専門家):
もっといい方法はたぶんないですね。これは個人的な意見ですけど、やっぱり最後は、社長がマジョリティを持っている会社が良いと思うんですよね。そうすると、他の役員さんが5、6%持っていても買い取れる。
アイデアはお金で買うことができるけれど、コミットメントはお金で買うことができないと思います。例えば成長してくると銀行から借金をするとしても、そのときに個人保証がいりますよね。けれど、役員全員が個人保証入れますかと言っても、多分入れないんですよね。たぶん、社長しか入れない。
従業員の給料が払えなくなって、でもやっぱり払わなくちゃいけない。それをポケットマネーで補てんする覚悟があるのは、やはり社長しかいないのでは。そういったときに、どこまでコミットメントして、どこまで背負うか。背負うことの大きさに対して、株の多さは決まると思うんですよね。
経営者の方って雇用をいかに作るか、いかに守るかをすごくはっきりさせていますよね。実際いろんなベンチャーを見ていても、創業から5年とか経って、創業メンバーがそのまま残っている会社さんの方が珍しいと思います。社外役員とかで入っていて、結局創業当時からいるのは社外役員である私と社長さんだけというのもよくある話です。その辺はシビアに行った方がいいと思います。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
そうすると、やっぱり社員のモチベーションを上げていくストックオプションも重要なツールだと思います。
重松(スペースマーケット):
そうですね。私は前職でフォトクリエイトという去年上場した会社に途中から入って、ストックオプションを付与されていました。
まさに与えられたコミットメントですごく嬉しかったのですが、ストックオプションってなかなか難しいんですよね。上場したらお金になるからと言っても、「いつの話だよ、すぐくれよ」って。さっきも話になったと思うんですけど、ストックオプションという1000万か2000万か1億になるかもしれない紙切れより、目先の給料を5万上げてくれという方って結構多いんですよね。
大賀(フライヤー):
ストックオプションにはいろんな例がありますが、一般的には発行済み株式数の10%から15%ぐらいが限界の数字であると言われています。私はそういうことも知らなくて、一時期苦労をしました。この先入ってもらう優秀な方にストックオプションを与える枠をしっかりと残しておく必要がある。
もちろんストックオプションってオプションなので、株価が安いときに価値があるので、アーリーステージに出すストックオプションほど価値があるんです。とはいえ、そこで出しすぎないのは大事だと思います。上場したら1%だろうが10%だろうがものすごい金額になると思えば、そこはきちっと計画的に、今後入る優秀な方に枠を残しながら付与していくのが大事だと思っています。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ありがとうございます。
辻(マネーフォワード):
あとは現職で結構給料をもらっている方が、ベンチャーに入ると給料が下がるので、その差額を中長期的に見てストックオプションを渡す。あとは、エコノミックリターンを考えた設計にしようとも思っていますが、人によっては本当に興味ない人も多くて。
そんなことはいいからみたいな。会社の一部をシェアじゃないですが、所有の一部をあげるから一緒に頑張ろうという思いが社長にはあるんですけれど、なかなかそこが伝わらなくて。それを伝えようとしたこともあったのですが、どうもあんまり伝わらなくて。ストックオプションで思いを伝えるのって難しいというか、実感としては分からないじゃないですか。将来100億か1000億の会社になったらこれくらいでって分かりづらい。どうしたらいいんですかね、保田さん。
保田(資本政策専門家):
ストックオプションは、社員なり役員なりが辞めたときに消滅しますよね。そういう意味では株よりは使い勝手がいいと思うんですけれども、消滅するがゆえに、あるいは売却できる日が来るまでは紙きれであるがゆえに、今の重みがあまりない。たぶんオプションって2つの活用法があって、1つは社長の持ち分を維持するためで、社長にオプションを比較的多く発行しておく。どんどん外部の株主が入って社長の持ち分が低下してしまうので、ある程度低下したところでオプションを行使して、社長の持ち分をもう一回復活させる。それが実は、一番大きいファンクションじゃないかなと思います。
従業員のモチベーションであれば給料アップや従業員持株会、あるいは生株を持ってもらうなど、いくつか手当や方法がある。従業員へのリワードという意味ではストックオプションはあくまでも選択肢の1つだと思いますね。
従業員持株会については、給料からたとえば3万円分ずつ天引きされると従業員は「おいおい、3万円引くなよ」とか思っちゃうわけです。経営者目線で考えると、従業員持株会があると万が一役員の誰かが辞めることになって株を売らなくちゃいけないときに、株の買い取りの受け皿にすることが一部できるので、そういう意味では従業員持株会があってもいいかもしれません。ただ、それを会社がどの程度成長した段階で作るかは難しいですね。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
だいたいどのぐらいのステージですか、持株会を作るのは。
保田(資本政策専門家):
IPOが見えてこないと、「何か知らないけど社長が給料下げやがって、何で持株会なんて必要なんだよ」と従業員から言われてしまう。IPOが見えると、従業員の方もそわそわしてくるので、そのタイミングだと思います。
あなたにとって理想のベンチャーキャピタルは?
嶋根(MOVIDA JAPAN):
りがとうございます。次に、自分にとって本当にいいベンチャーキャピタルとの出会い方について、何かエピソードがあったらぜひお聞かせいただきたいのですが。
重松(スペースマーケット):
うちの奥さんはVCなので、VCのネットワークがめちゃめちゃ強い。良いVCは良いVCを知っているので、VCって個人商店みたいなものです。なので、例えばジャフコという会社があっても、どの人に会うかで受ける印象は全然違うんですよね。なので良いVCさんからご紹介をいただくとか、あの人はこの分野に強いといった情報を仕入れておきますね。
辻(マネーフォワード):
僕らは合計6億円ぐらい調達させてもらっています。シードでマネックスさんに入れてもらって、個人投資家を挟んでシリーズAでジャフコさん。TBSさんと三菱さんと同じラウンドで入っていただいたので、シリーズAとみるかBとみるかは考え方次第ですね。
調達に関してはおっしゃったように、担当者の方に思い入れを持っていただけるかとか、その分野に強いかとかですね。株主になっていただく以上は、いろんなアドバイスをいただくので、ビジネスを加速させてくれる応援団みたいな役割になってもらいます。
例えばジャフコさんは強いネットワークをお持ちなので、いろんな方を紹介してくれますけれども、ベンチャーキャピタルさんにもそれぞれ強みがあるので、それを先輩の起業家に聞きました。
例えばハンズオン型がいいのか、それともお金は出すけど口はあまり出さないVCさんがいいのかとか。我々は金融サービスなので信用獲得のために、三菱さんとかに入ってもらった方がいいのかとか、そこは結構戦略的に考えました。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
ありがとうございます。ちなみに重松さんは、まだ調達されてないんじゃないですか?
重松(スペースマーケット):
そうですね。いちおう目処はついているので、近々。VCを選ぶ基準で今回重視したのは、どれだけお客さんを紹介してくれるかですね。その紹介だけでも大変ありがたいんですけれども、お客さんを連れて来ていただけるVCさんって、非常にいいなって。最後はそこをみましたね。
ベンチャーキャピタルとのシナジーを考える
(写真 フライヤー代表取締役 大賀康史)
嶋根(MOVIDA JAPAN):
大賀さん、どうですか?
大賀(フライヤー):
今日の本題はベンチャー企業の失敗と乗り越え方ということで、失敗談込みで。我々はちょっと2人とは違った角度で話をしたいと思います。IVSなどのスタートアップイベントで受賞した後、様々お声がかかりVCの方にも話を聞いていただけました。
それでそのとき留意するべきなのが、VCの中でも誰と会話をするか。キーマンとお話しするのが良いと皆さんおっしゃいますね。ただイベントとかでお会いすると、誰なのか確かめずにとりあえず名刺交換するんですね。それで、VCによっては名刺交換した瞬間に担当が決まるらしいです。起業家にとっては避けられないリスクなんですけど、気づいたらVCの担当者が決まっていたという所もありました。
もう1つ言われるのが、資金調達はできるだけ短期間で決めなさいということ。その間に、事業に対するコミットメントも弱まりますし、社内にいない時間が非常に長くなるので、意見の違いが出てきます。それらを考えると、できるだけ資金調達はクイックにしなければいけないのかなと。みなさんがどうされているのかもお伺いしたいです。
保田(資本政策専門家):
そうなんですよね。どこから資金調達をしてくるかっていうところですけど、今までなかった話をさせていただくと、ベンチャーキャピタルファンドやピュアな金融機関から調達する場合と、事業会社から出資してもらう場合の2つがあると思うんですよね。両方に一長一短があって、事業会社から出資を受けている方が、なんとなく株主名簿上は映えるんじゃないかなと思います。ですが、事業会社の方々は、自分の会社の事業とかシナジーを見て投資をします。だとすると、出資元の会社が同じような事業を始めたくなったときの棲み分けが難しい。
あるいは、出資を受けたときは自分たちは別の事業をしていたけど、ベンチャー企業もどんどん事業が変わるので、出資を受けているベンチャー企業が次にやりたくなった事業が、実は出資してくれている事業会社がすでにやっている事業分野と近いとか。これらが事業会社からお金を入れてもらうときの見えないリスクとしてあるかなと思います。
もう1つは、事業会社からお金を入れてもらいました。しかし、時間が経ってこっちの事業内容が変わります、あっちの事業内容も変わりますとなったときに、完全に事業のシナジーがなくなる場合もあります。そうすると向こうの興味も、完全になくなっちゃうんですよね。
一方で、ピュアなベンチャーキャピタルファンドであればこういうことはないです。彼らは銭にしか興味ないからです。リターンを上げないことにはキャピタリストとしての成績も上がらないので、こっちの状況がどう変わろうが一生懸命バリューアップに勤めてくれるのがベンチャーキャピタルファンドなので、そのへんの使い分けは重要なファンクションだと思います。
嶋根(MOVIDA JAPAN):
たしかに、CVCの場合、担当者の異動ですべてがゼロに戻るというケースもあったりします。また、当初はシナジーがあるから、それを前提の資本業務提携するのですが、途中で、企業側の社内事情がネックになって成長を阻害されるケースがあります。これって非常に気を付けなくちゃいけないところですよね。(続く)
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