2014年8月9日に開催された起業家スーパーカンファレンス(KSC)。今年も、著名な有名人がたくさんの学生に一生モノの地図を与えてくれた。
数年後も予測できないほどに、凄まじいスピードで変化する現代社会。そんな中で将来の見通しを立てる方法はあるのだろうか? 勝間和代氏と神田昌典氏が、不透明な時代にとるべき選択を語った。
スピーカー
経営コンサルタント 作家、リード・フォー・アクション発起人 神田昌典氏
経済評論家 中央大学ビジネススクール客員教授 勝間和代氏
見出し一覧
・今までのキャリアデザインはもう通用しない
・マシュマロを我慢できるのは、教育を受けた子供だけ
・勝間「私が20代だったら迷わず途上国に行く」
・答えを人に聞かない。まず自分の中に仮説を持つ
今までのキャリアデザインはもう通用しない
神田:今日のトピックは、「20代がキャリアをどういうふうに設計するか」です。非常に重要なことは、今までの大人を見ても設計はできないということです。例えば、僕が今やろうとしていることや今までやってきたこと、もしくは勝間さんがやってきたことを見ても、残念ながらあなたのキャリアは設計できません。それはなぜかというと、この世界が全く違った世の中に入り始めたからです。
ここには、2つの大きな大変革があります。そのうちの1つが、人口・所得層の大きな変化です。アジアでは、2020年に約22億人の人が中間消費層に入ると言われています。22億人です。インドネシアであっても、インドであっても、スリランカであっても、みなさん中流階級になり、ある程度の所得を持つと言われています。
全世界で見ると、これが35億人から40億人近くになります。全世界の人口は70億人ですから、半分以上がある意味で中流になっていくわけです。
今の携帯電話の浸透率は知っていますか? 実は、全世界で100%超えています。そうすると、一体何が可能になるかと言うと、携帯電話を通じて送金ができるんです。例えばポイントなんかを使ってね。
例えば、エチオピアやスーダンに、マラリアで子どもを亡くしそうなお母さんがいたとします。彼女は携帯電話にアクセスできます。そうすると、そこに皆さんがコーヒーを飲んでいる間に、もしくはライブに行っている間に、1ドル寄付しようじゃないかと思えるんです。そうすると、携帯電話にポイントが転送されて寄付ができて、ワクチンが打てる。そういう時代なんです。
携帯電話普及率が100%になったということは、全く違った時代に入ったということなんです。例えば、アジアのある国で畑が大変な虫の被害に遭っている。そこで飢饉が起こったとします。その時に携帯電話などでインターネットにつないで、そういった虫の害を防ぐにはどうすればいいかを調べる能力がある子どもが1人いたらどうなるか。
「あ、そうか。灰をまけばいいんだ」と気付いて、そしてその家庭では作物が採れる。そしてその村全体で作物が採れる。情報、すなわち教育が、とんでもないパワーを持つ時代になったということです。
では、その中でどういった観点でキャリアを設計すればいいか。今日は勝間和代さんと一緒に考える機会としたいと思います。
マシュマロを我慢できるのは、教育を受けた子供だけ
勝間:今の時代、一番大事なのは何かというと、とにかく教育なんです。ひたすら教育、教育。これに尽きる。
みなさん、時間割引率ってご存知ですか? マシュマロ実験が有名なんですけれども、3歳の子どもにマシュマロを渡して、「すぐに食べなかったら、このマシュマロを2個にしてあげる。今食べちゃったら、この1個でおしまいね」と言って、我慢できる子どもと我慢できない子どもを追跡調査するんですよ。
我慢できる子どもの方が非常に成績が良く、社会的に成功している確率が高いんです。つまり、目の前のことを我慢できるかどうかは、実はほとんど教育のおかげなんですね。
教育を受けて知識や想像力があると、ちゃんと事前に準備をして何かが出来る。だから、井戸を掘ることや水道を作ること1つをとっても、技術だけではない。時間割引率なんですよ。今は苦労するけど、ここで井戸を掘ったら、池まで水を汲みにいかなくていい。水道を作ればそれで大丈夫と。水があれば農業が発達しますし、農業が発達すれば、より豊かな生活が出来る。
例えば、発展途上国ではほとんどの人が農業をやらないと食べていけないんですね。食糧生産が追い付かない。日本人で農業に携わっている人は何%ですか?20人に1人ぐらいなんですよ。それでも十分にみんながご飯を食べていけるということは、そういう形でどんどん小さな投資を続けてきたからなんです。
ですので、それが地球環境に良いか悪いかという話を置いておいても、どうしたら人類全体が自分の欲求を満たしながら生活をして、自己実現が出来るのか。発展途上国の最初の水という段階の支援をしていくことで、子どもたちが教育を受けられ、その上で実際に発展するということが出来るようになる。
水があると給食室が作れるんですよ。給食室があると子ども達が下痢にもならずに、安定した食が得られる。そこで英語さえ学べば、あとは何とかなるんです。まずは、そこの段階の支援というので、水は非常に重要です。
なので、皆さんにはとにかく、自分も周りも、教育についての自己投資や周りに対する貢献を考えていただけるといいなと思います。それがおそらく、日本に生まれた人たちの働き方、役割かなと思います。
勝間「私が20代だったら迷わず途上国に行く」
司会者:ありがとうございます。今の学生は周りへの貢献を意識した活動をした方がいいというご感想がありました。具体的に学生時代にどういうことをした方が良いのかでしょうか。アドバイスをお願いします。神田さんから、何かありますか?
神田:ちょうど、控室で勝間さんと久しぶりに会いました。そこで、「勝間さんが今20代だったらどうしますか?」と聞いたら、彼女がはっきり言ったんです。ちょっとそこから聞きたいですね。
勝間:単純で、私だったらどんどん海外に、特に発展途上国に行きます。今の20代のみなさんにとって、ビジネスチャンスは正直に言って、ほとんど途上国にしかないと思っています。日本にはマイクロなチャンスはありますけど、多分、努力にあまり見合わない。すみません、言いきってしまいましたけど。
神田:びっくりするような話かとは思いますけど、中間消費層がこれだけ急増して、どんどんボーダレスになっていくわけですね。大前研一先生が『ボーダレス・ワールド』をもう20年近く前に出されたけど、本当にそれが今、実現しつつある。その中でどれだけのチャンスがあるのかを考えると、本当にその通りだと思いますね。
勝間:だから、人口の減少する国はきついですよ。とにかく、そこに対して投資をするのは非常に不利です。
司会者:ありがとうございます。昨今、大学生の間でベンチャー企業が人気と言われています。まず国内で大企業に行くか、ベンチャー企業に行くかという選択肢についてはどうでしょうか。
勝間:国内の大企業の関係者がいたら本当に申し訳ないんですけど、もう貧乏くじですよ、完全に。
司会者:詳しくお教えいただけますでしょうか?
勝間:国内の需要が増えないわりには、高齢者はどんどん増えていく。人口ボーナスという言葉をみなさんご存知ですか? 人口ボーナスというのは、高齢者になればなるほど、生産するものよりも消費するものの方が多くなるんですよ。医療・福祉・年金・すべてにおいて。
そうすると、その分誰が割を食うかというと、当然若者です。ベンチャー企業は、高齢者の社員が少ない。大企業の特徴はなんでしょうか。そこだけ考えれば、大企業なんかに就職してはいけないとすぐわかりますよね。
司会者:ありがとうございます。そうしたらもう、大学生は大企業、ベンチャー企業などと言う前に、とにかく海外に行けと。
勝間:なので、高齢者が多いところに行くと不利ですよ、と言っているわけです。みなさん、賭け事ってします?私は賭け事の中で、競馬や競輪は一切やらないんですよ。どうしてかわかりますか?絶対勝てないからです。
だって、初めから競馬の2割は国が持っていくからです。ものすごく上手に賭けて、やっと90%を回収するくらいなんですよ。なんでパチンコが流行るかっていうと、天引き率が10%ないから。すごく頑張って上手にやれば、儲かる人がいるんです。麻雀の天引き率って、3%ぐらいかな。麻雀が一番天引き率が安い。
日本で何かこれから投資をするということは、まるでその日本の競馬に投資しているようなものですから、人口の減少分だけ市場が減っていくところで投資をしたって儲からないですよねという話です。
答えを人に聞かない。まず自分の中に仮説を持つ
司会者:ありがとうございます。海外に行くという選択肢については、日本は高齢社会の中であまり新しいものを発見するという環境が多くない。なので、それより海外に進出していろんなものを見て、新しい可能性を見出した方が良い、という意見かなと思いました。では、実際に学生がすべきこととはどんなことでしょうか? 例えば、海外に行くのであれば、海外に行って何をするべきかなどアドバイスはございますか?
神田:ありがとうございます。「大企業に行くな」と言われてしまうと、大学3、4年生のみなさんは慌ててしまうと思います。実際には、僕は大企業応援派です。なぜなら、実を言うとベンチャー企業はまだまだ小さいからスピード感はあるんです。では、本当に最先端のテクノロジーに対して投資を出来るかというと、なかなかそうではありません。
今まではITという、ある意味ではあまりお金がかからない技術があったんですけども、これからはやはりバイオや医療といったスケールのもの。あとは電力とかエネルギーといったインフラですね。そういうもののために、相当お金を使う必要があります。
そうすると、途上国のインフラを作る、エネルギー問題を何とかする、食糧問題を何とかするといったビジョンの大きな話は、やはり大企業の中でトレーニングを積むというのが良いと思うんですね。
僕は最初、外務省に入りました。外務省に入ってですね、途上国を見て来ました。と同時に、どういう風に組織の中でうまく、それぞれのリソースを使うかを勉強しました。今、僕はベンチャーとして自分で仕事をしていますが、組織での体験がなければ、僕はなかなか世界的なビジョンが得られなかったのではないかな、と思います。
ですから、海外への経験を持つというのは20代だからこそ出来ることなんですね。30代、40代になって、ポーンと海外に行くのはなかなかリスクが大きいです。僕のクライアントの中でも、40代になって中国に単身赴任した人が結構いますが、たいてい家庭がおかしくなりますね。
なので、家族が出来る前の20代だからこそという意味では、自分で海外に行く、もしくはこれからは国境がない世の中になるかもしれないということを頭に置くべきだと思うんです。大企業に行くのもよし、ベンチャーに行くのもよし、僕はどちらでもいいと思うんですね。皆さんの本当にやりたいことにフォーカスしてください。
今までであれば大企業は安定、ベンチャーは安定がないと言われましたけど、そうではありません。自分自身の中にしか安定はないのだと思います。
「何をすればいいですか?」じゃなくて、「あなたは何をしたい?」
勝間:ちょっと補足します。ベンチャーだからいいというのは全く嘘で、ベンチャーも8割ぐらいはとんでもです。とんでもベンチャーに行くのが、一番わりが悪いです。どうしてかといいますと、やっぱり経営に資源がなかったり経営能力がなかったりして、お金が集まらなければ結局ろくな事業ができない。それで潰れてしまうベンチャーって死ぬほどあるんですよ。
そういうところに行くと、逆にそこで勤めた何年間かが全部無駄になってしまいます。大企業は年に1、2社しか潰れませんから、くじ引き的には潰れる確率は低いんですね。大企業の仕事の中身によると思います。
神田さんが言ったようなすごい海外の投資など、そこでしかできないことをやれるチャンスがあるのなら、それはそれで好ましい。ただ、残念ながらそれもまたくじ引きなので、そのように良い大企業に巡り合う可能性は、なかなか低い。そこのバランスですよね。
だから、さっきの「海外で何をすれば良いですか?」という質問は、面白い質問だなって正直思ったんです。「何がしたいですか?」って逆に聞きたかったですね。例えば私はマッキンゼーに行ったんですけど、マッキンゼーってすごい現金なんですよ。必ず最初に、まず自分の考えを述べる。「私はこういうことをしたいと思うんですけど、どうですか?」という聞き方をしないと、タコ殴りにされるんですよね、先輩から。
だから、「海外に行くというならこのような活動をして、このようにしてこういう活動をしたいんですど、これでいいでしょうか?」とか、「これにご意見いただけますか?」という形で、人に答えを求めるんじゃなくて、まず自分で仮説を作ってから、検証をするんです。そうした習慣があるだけでも、ずいぶん変わると思います。(続く)
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