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【全文】世界で活躍するコンサルタントが明かす成功の秘訣:「話を聞く」と組織が変わる

Yoshiaki Hiratsuka

2014/09/25(最終更新日:2014/09/25)


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 組織を変えるために、必要なこととは何でしょうか。組織を改革する際には多くの選択肢があり、選ぶべき選択肢はその都度異なってくるでしょう。

 世界各地で活躍するコンサルタントのエルネスト・シロッリ氏が、世界で4万件の起業支援をする中で見出した原則の一つは、「黙って話を聞くこと」でした。話を聞くことで、果たしてどのようなことが変わるのでしょうか。

 ここでは、経営コンサルタントのシロッリ氏が、企業の成功にとって重要な「話を聞くこと」の大切さを語ったTEDの講演を書き起こします。

スピーカー

エルネスト・シロッリ / 経営コンサルタント

動画

見出し一覧

・200頭のカバにトマトを食べられる
・話を聞かなければわからない
・世界300ヵ所で4万件の起業を支援
・自動車の登場で変わったニューヨーク
・世界的に成功する企業が持つ、ただ一つの共通点

200頭のカバにトマトを食べられる

 仕事も含めて私が現在していることで、私の人生の土台になっているのは、若い頃に7年間アフリカで働いた経験です。私は見かけほど若くはないのですが、1971年から77年にかけて、ザンビア・ケニア・コートジボワール・アルジェリア・ソマリアといったアフリカ各国で技術支援の活動をしていました。

 私はイタリアのNGOで活動していましたが、アフリカで立ち上げたプロジェクトはことごとく失敗し、とても悩みました。当時21才だった私は、自分たちイタリア人は善良だし、よくやっていると思っていました。ところが、やることなすこと全てがダメでした。

 最初のプロジェクトは、私の初めての著書『ザンベジ川のさざ波』で書いたように、私たちイタリア人がザンビアの人々に食糧生産の技術を指導するものでした。まず、私たちはイタリア産のタネを持ってザンビア南部に入りました。そして、壮大な峡谷がザンベジ川へと下っています。私たちが地元の人に教えたのは、イタリアン・トマトやズッキーニの育て方ですが、当然誰も興味を持ちません。そこで、現地の人に来てもらうためにお金を渡したら、時々人が来るようになりました(笑)。驚いたことに彼らは、肥沃な大地があるのに農業をしません。でも私たちは農業をしない理由も聞かず、「来てよかった」と素直に喜んでいたました(笑)。「国民が飢える前に助けに来られた」と。

 アフリカでは何でも見事に育ちましたし、大きなトマトも実りました。イタリアでは普通の大きさですが、ザンビアではとても大きくなります。信じられなかったけれど、ザンビアの人には「農業なんて簡単でしょう」と言いました。しかし、トマトが熟して真っ赤になった頃に、夜中200頭のカバが河から現れてトマトを全部食べてしまいました(笑)。「なんてことだカバが!」と言っていたら、彼らは答えて「だから農業はしないのさ」と言います。なぜ教えてくれないのかと聞くと、「聞かないからさ」と答えました。

 そのとき、最初に失敗しているのは私たちだけかと思っていました。しかし、アメリカ人やイギリス人、フランス人がやっていることを見てからは、自分たちのザンビアでの活動を自慢したくなりました。だって少なくともカバには食料を与えたのですから。

 私たちがこれまで純真なアフリカの人々に与えたガラクタを見てください。本を読むならザンビアの女性エコノミスト、ダンビサ・モヨが2009年に出版した『援助じゃアフリカは発展しない』がお勧めです。西洋諸国はこの50年間、アフリカ大陸向けに2兆ドルもの資金援助をしました。この資金が与えた損害は今はお話しません。彼女の本を読んでください。アフリカの女性から私達が与えた損害を学ぶのです。

 西洋人は帝国主義者であり、植民地主義者であり宣教師です。そんな我々が知る、人との接し方は2種類です。庇護を与えるか、父親のように振る舞うかです。どちらもラテン語の"pater"「父」という単語を含む言葉で表されます。ですが、2つの言葉の意味はかなり違います。”paternalistic"が表すのは、異なる文化圏の人々をまるで我が子のように扱う、子どもを愛する態度です。"patronizing"が表すのは、異なる文化圏の人々を自分の召使いのように扱う態度です。白人がアフリカでは"bwana"「ボス」と呼ばれる理由がこれです。

話を聞かなければわからない

 私は『スモールイズビューティフル』を読んで、平手打ちされたような気がしました。著者のシューマッハーは、経済発展の過程では人々が支援を必要としないなら放っておくべきだと言います。これが支援の第一原則です。つまり支援の第一原則は「尊重」なのです。今朝のスピーチで男性が、私達に挑むように言っていたではありませんか。「ネオコロニアル様式ではない街を築けないものか」と。

 27才の時に自分から行動せず、要請に応じるだけにしようと心に決めて「事業促進」という仕組みを作りました。この仕組みでは自分から行動を起こすことはしません。人に何かをやらせる代わりに、地元の有志や、よりよい人間になりたいと考える人々のための奉仕者として働きます。つまり、その時に大事なのは黙っていることです。アイデアを与えるために出かけて行くのではなく、地元の人と話をしに行くのです。オフィスで作業はせず、カフェやパブで話をします。インフラは持ちませんが、人と仲良くなってその人が何をしたいのかを探ります。

 ここで大切なのは情熱です。アイデアを与えるのは簡単ですが、やりたくないと言われたらどうしようもありません。成長への情熱が女性にとって一番大切で、それは男性にとっても同じです。そして話を聞いた後に、必要な知識を得る手助けをします。誰しも1人では成功できないからです。アイデアのある人が必要な知識を持つわけではなく、知識は手に入れるものです。なので私は、「コミュニティーに入ってみんなに指示する代わりにみんなの話を聞こう」と考えるようになりました。けれども公の集まりではいけません。

 秘訣を教えましょう。コミュニティーの集会には欠点があります。それは起業家が来ないことです。それにみんなが集まる集会では、自分のお金を使ってやろうとしていることや、自分が見つけたチャンスを教えてくれるわけがないのです。つまり発想自体に欠陥があります。その土地の優れた人材を見つけられないのです。なぜなら公の場に現れないのですから。

 そこで1人ずつあたっていくことにしました。1人1人と話すには、社会的インフラを一から作る必要があります。新しい職業が必要なのです。その仕事は、企業やビジネス向けのファミリー・ドクターのようなもので、自宅のキッチンやカフェで話を聞き、情熱を生活の糧に替えるための経営資源を探す手伝いをします。

世界300ヵ所で4万件の起業を支援

 西オーストラリア州エスぺランスで試しました。その頃博士号に取り組みながら、私は地元の人を守るために指示してやろうという態度を捨てようとしていました。エスぺランスでの1年目は街を歩き回りました。3日目に最初の依頼がありました。依頼者はガレージで魚の燻製を作っているマオリの男性でした。私はその男性に対し、パースのレストランへの販売と組織作りを手伝いました。すると今度は漁師が来て「マオリを手伝った人かい?俺達も助けてくれないか」と言うのです。なので私は5人の漁師と協力して、見事なマグロを1キロわずか60セントでアルバニーの缶詰工場に売るのではなく、1キロ15ドルで寿司ネタ用として日本に売る方法を見つけました。すると今度は農家が助けを求めてやってきました。そのように活動を続け、1年で27件のプロジェクトを立ち上げました。すると政府の役人が来て、ノウハウを教えてほしいというのです。だから私は、「とても難しいことですが、黙って話を聞くことがノウハウです」と答えました(笑)。

 そうしたら役人はまたやれと言うんです(笑)。私達は世界中300か所で実践し、4万件の起業支援をしてきました。新世代の起業家たちは孤立が原因で挫折していきます。

 史上最高の経営コンサルタントの1人であるピーター・ドラッカーが、96才で亡くなったのは数年前です。彼はビジネスに関わる以前は哲学の教授でした。彼はビジネスに関わる以前は哲学の教授でした。ドラッカーは「計画というものは起業社会や起業経済とは相容れない」ものだと述べています。計画は起業家にとって致命的です。

 クライストチャーチは現在復興中ですが、才能あふれる人たちが自分の金と精力を注いでやろうとしていることがわかっていません。教えを請う人達がやって来て、自分から話しだす方法を学ぶ必要があります。秘密とプライバシーを守ると約束し、手助けの名人にならなければいけません。そうすればみんな列をなしてやって来ます。人口1万人なら依頼者は200人です。人口40万人のクライストチャーチなら、相当の知性と情熱を秘めているはず。午前のプレゼンではどこで一番拍手をしましたか。地元の情熱的な人のプレゼンですね。

自動車の登場で変わったニューヨーク

 今はまさしく起業家の時代なのです。現在、産業革命の第一波が終わろうとしています。再生不能な化石燃料や製造により、システムは持続不能になっています。内燃エンジンは続けられないし、フロンの使用も続けられません。考えなければならないことは、食料・医療・教育・交通コミュニケーション手段を、持続可能な形で地球上の70億人にどう与えるかです。これを実現するテクノロジーはまだ存在しません。では誰が「グリーン革命」に向けた技術を開発するのでしょう?大学はあてになりません。政府も無理でしょう。答えは起業家です。しかも彼らはもう開発を始めています。
 
 以前、未来がテーマの雑誌で面白い記事を読みました。1860年にニューヨークの未来について議論するため、専門家が招集されました。大勢で集まって、100年後のニューヨークがどうなるかを予測したのです。全員一致の結論は、100年後ニューヨークは存在しないというものでした。彼らはグラフを見てこう結論づけたのです。もし今の割合で人口が増加したら、住人が市内を移動するために600万頭の馬が必要になるでしょう。ただ600万頭分のフンは処理しきれないでしょう。街はすでに馬のフンだらけだったのです(笑)。1860年に専門家が注目したのは、移動のための汚れた技術でした。ニューヨークはそのせいで窒息寸前だったのです。

 その後どうなったか?40年後の1900年には、アメリカに1001か所の自動車製造会社が出来ていました。1001か所です。別の移動の技術を探るというアイデアが、すっかり優勢になっていました。だから辺ぴな場所に小さな工場がたくさんあったのです。例えば、ミシガン州ディアボーンにはヘンリー・フォードがいました。

世界的に成功する企業が持つ、ただ一つの共通点

 さて、起業家と仕事をするには秘訣があります。まず、秘密を守ることを約束する必要があります。そうでなければ起業家は相談に来てくれません。次に、100%の献身と情熱を約束しなければなりません。さらには起業の実態を教える必要があります。小さな会社も大きい会社も、次の3つを完璧にできなければなりません。

 1つ目に素晴らしい商品を作れること、2つ目に素晴らしい営業ができること、3つ目に優れた財務管理ができることです。ただそうは言っても、製造と販売とお金の管理を同時にこなせる人など見たことがありません。そんな人はこの世にはいないのです。私たちは世界にある100の大企業、カーネギーやウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー、フォード、GoogleやYahooといった新興企業も含めて調査をしました。その中で、世界の成功した企業に共通する点はたったひとつでした。どの企業も一人では始めていなかったのです。

 ノーサンバーランドの高校生に向けた起業の授業では、1時間目にリチャード・ブランソンの自伝の最初の2ページを渡しています。生徒はその2ページを読んで、ブランソンが「私」と書いているのが何回で、「私たち」と書いているのが何回かを下線を引いて調べます。「私」はゼロで「私たち」が32回です。ブランソンは独りで起業したわけではないのです。会社を一人で立ち上げる人はいません。そのためコミュニティーを作るのです。小規模ビジネスの経験をもつ世話役がカフェやバーで待っていて、仲間が手を貸してくれます。自伝の著者ブランソンのために仲間がしたのと同じように声をかけてくれます。「必要なものは?できることは?これを作れる?じゃあ販売は?財務管理は?」と訊ね、できないと言えば「誰か紹介しようか」と言ってくれます。

 私たちはコミュニティーを活性化します。多くのボランティアが支える「事業促進」は、経営資源や人材を探す手伝いをします。私たちが知ったことは、地元の人の知性が奇跡を起こし、そのコミュニティーの文化と経済が変わるということです。身近な人の情熱とエネルギーと想像力をきちんと捉えれば可能になるのです。

 どうもありがとう(拍手)

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