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【全文】最高のリーダーシップとは何か。21世紀のリーダーに求められる可能性を知る

Yoshiaki Hiratsuka

2014/08/31(最終更新日:2014/08/31)


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 優れたリーダーの条件とは何か。組織を率いる人であれば、誰もが知りたい事柄だと思います。さまざまなタイプのリーダーが存在するなかで、どのようなリーダーを目指せば良いかは人によって異なるでしょう。

 そのような一見わかりづらい疑問に対して、ボストン・コンサルティング・グループでシニアパートナーを務めるロザリンデ・トーレス氏は、「時間・人脈・行動」の3点から優秀なリーダー像を語ります。

 ここではTEDのプレゼンテーション動画「優れたリーダーになる条件」より、長年の研究をもとにトーレス氏が語る講演を書き起こします。

スピーカー

ロザリンデ・トーレス / ボストン・コンサルティング・グループ シニアパートナー

動画

見出し一覧

・半数以上の会社にはリーダーを担える人材がいないという現実
・「リーダーとして働く上で最高の会社」にいた優秀なリーダーは50名中1人
・敵とも思える人まで巻き込む?優秀なリーダーの活躍を研究
・21世紀の優秀なリーダーとしての可能性を知る3つの問い

半数以上の会社にはリーダーを担える人材がいないという現実

 現代における優れたリーダーの条件は何でしょう?リーダーと言って思い浮かべるのは、大抵が全能のスーパーヒーローであり、堂々と陣頭指揮を取って部下たちを守る人物でしょう。しかしそれは過去の話です。
同じように時代遅れなのが、リーダー養成プログラムです。これらは既存の成功モデルを元に作られていますが、そのモデルは古く、現在や今後を見据えた効果的なプログラムではありません。

 私たちは4千社を対象に調査を行い、各社で行われているリーダー養成プログラムがどれほど有効かという事実を調査しました。そのうち58%の会社は「重要なリーダーとしての役割を担える人財が大幅に不足している」と答えています。会社は、社内外の訓練プログラムや評価査定コーチングといったものを用意しているのにもかかわらず、半分以上の会社で優秀なリーダーを十分輩出できていないのです。

 自分の所属する会社は自分を育てて21世紀の優秀なリーダーにしてくれるのかと思われているでしょうか?恐らくそれはないでしょう。私はこの25年間仕事を通じて、何が優秀なリーダーたらしめる要素なのかを見てきました。フォーチュン500(アメリカのフォーチュン誌が一年に一回作られるリストの一つで、全米の企業が総収入に基づいてランキングされる)の企業で働いたこともありますし、200名以上の最高経営責任者に助言し、リーダーとのコネクションを築き上げてきています。それは皆さんがご想像する以上のことでしょう。

「リーダーとして働く上で最高の会社」にいた優秀なリーダーは50人中1人

 しかし数年前あることに気付きました。リーダー候補者たちに気がかりな傾向があったのです。リーダーとして努力をする甲斐なくさまざまな方が同じような憂き目にあっているのです。

 例えばある社員は最高のリーダーになる高い素質を備えていながら、新しい部署に異動した後に失敗して、取り返しのつかない損害を発生させました。また企業のCEOがもどかしさを感じる話も聞きます。なぜなら「リーダーとして働くのに最高の会社」と評されながら、自社にいる上位50名のリーダーのうち、重要な戦略を任せられるのは1人だけだったからです。活躍する時代を経験したベテランのリーダーたちが市場の変化についていけず、会社の規模を半分にまで縮小し、会社を畳まざるを得ないほど追い込まれるのです。

 同じことが繰り返し起こるのを見て自然と2つの疑問を持ちました。なぜリーダー養成強化の流れとは裏腹に、リーダーシップ・ギャップが拡大の一途をたどっているのか?優秀なリーダーが成長できるのは、何が違うからなのだろう?私は疑問で頭がいっぱいになり、リーダーが失敗する話を聞くことに耐えがたくなったので、仕事を辞めてフルタイムで、優秀なリーダーの条件に関する研究に取り組むことにしました。

敵とも思える人まで巻き込む?優秀なリーダーの活躍を研究

 1年かけて世界中をまわり、さまざまな企業や国、NPO(非営利団体)でリーダーシップがどう実践されているのか、実効性があるものとないものについて実例を学びました。例えば、南アフリカを訪れたときはネルソン・マンデラ氏について知る機会を得ました。マンデラ氏がどのように時代の先を読み、政治、社会、経済の流れを予想し導いてきたかという経緯を理解できました。その他にも多くのNPOのリーダーにも会いました。その人物は財源がかなり限られているにもかかわらず、世界に大きな影響を与えるリーダーで、一見敵とも思えるような人まで巻き込んでいました。

 それから膨大な時間をかけて大統領図書館で調査し、環境がどのようにしてリーダーをリーダーたらしめ、リーダーらしい行動を起こさせ、次の世代にも残るような影響を与えたのかについて解明しようとしました。そしてフルタイムの仕事に戻って、今の職場で同じ問いに関心を持つ素晴らしい同僚に恵まれました。

 以上の私の経験から、私はリーダーとして活躍する人たちの特徴と行動の違いをあぶり出しました。さらにリーダーになるにあたり、その資質を最大限生かすためにすべきことを見出しました。ここでいくつかご紹介しましょう。

21世紀の優秀なリーダーとしての可能性を知る3つの問い

 21世紀の世界は、以前よりグローバルかつデジタルで透明性も増しています。さらに情報の流れや技術革新のスピードが速く、何をやるにしても複雑な基盤が必要になっています。そのため昔ながらの能力開発プログラムを実施しても、リーダーになることはできないのです。事実、伝統的な評価手法、限られた360度評価や時代遅れの実績評価では不当に高い評価がされるため、実際の能力以上にリーダーになる準備ができているように本人も勘違いをしかねません。
 
 21世紀にふさわしいリーダーシップを備えているかは3つの問いで決まります。
1つ目は、あなたが何を見て、自らのビジネスモデルや人生に来たる変化を予想しているかということです。この答えはあなたのスケジュール表にあります。誰と時間を過ごしているか?どんな話題に注目しているか?どこに旅行しているか?何を読んでいるか?そして自分の経験をどのように生かして変化の兆しを察知し、すぐ行動を起こす決断をして、準備万端にできているか?リーダーで構成されるあるチームでは、各メンバーで事例を持ち寄り、それらを共有して戦略の軌道修正や変化を見据えた意思決定を行います。優秀なリーダーは下ばかり見ていません。曲がり角の先まで見て、単に現状に対応するのではなく、自ら将来を形作るのです。

 2つ目の問いは、どうやって自らのプライベートや仕事上の人脈を多様化させているかです。学閥はよく聞きますね。実際にそうした学閥のようなネットワークは、今も多くの組織であります。ですが、それも程度の問題で、私たちも一緒にいて楽な人とつながっています。そのためここで問題となるのは、自分と性質が大きく異なる人たちと関係を築く能力なのです。ここで挙げる違いは、生物学的、身体的、機能的、政治的、文化的、社会経済学的なものかもしれません。以上のような違いがあっても、自分と異なる人たちと関係が築ければ、あなたを十分に信頼し、手を差し伸べてくれ共に目標を達成できるようになるのです。優秀なリーダーは皆分かっていますが、多様な人脈を持つことによって、より幅広くパターンを認識し、解決策を見出すことができるのです。自分とは違う考えをする人たちを味方に付けているからです。
 
 3つ目の問いは、思い切って過去にあなたを成功に導いたやり方を捨てられるか、ということです。「波風を立てないようにする」という言葉があります。でも、もしこのアドバイスに従えばおそらくリーダーとしては前例に倣い、楽なことを繰り返すだけです。優秀なリーダーはあえて違うことをします。リスクテイクを語るだけでなく、実際に行動を起こします。ある優秀なリーダーから聞いたことですが、大きな影響を与えることを成し遂げられるのは、感情面でのスタミナを鍛え、自分の新しいアイデアがナイーブだとか無謀だとか、単におかしいと他人に言われることに耐えられるようになったときだそうです。面白いことに、こうして仲間になろうとする人はいつもの顔馴染みではありません。たいていは違う考えを持った人で、あなたの仲間に加わって果敢に躍進しようとしているのです。ただの前進ではなく躍進です。どんな伝統的なリーダー養成プログラムより、これらの3つの問いに答える方が21世紀のリーダーとしてふさわしいか確かめられるでしょう。

 21世紀における優秀なリーダーの条件とは何でしょうか?優秀なリーダーに多く会いましたが、どの人も傑出していました。これらの女性・男性に共通するのは、常に準備をしているということです。過去の成功体験に甘んじることなく、今日この日の現実のため、そしてまだ見えない明日のあらゆる可能性に準備するのです。

 ありがとうございました。(拍手)

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