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ナンバーワン営業マン直伝!会社社長や専務への営業のコツは「モノより先に、自分の顔を売る」こと

坂本茉里恵

2014/09/05(最終更新日:2014/09/05)


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 もし新人営業マンが、会社社長や専務を相手に営業をすることになったらーー。想像するだけで緊張してしまう。しかし、そういった会社トップから次々と商談をまとめ、会社に貢献している新人営業マンがいる。大手印刷会社で働く林拓哉氏だ。

 林氏は新卒で入社してから2年間、社長や専務相手の営業活動を行い、九州地区のシェア率で社内ナンバーワンとなり表彰を受けたほどの実績を持つ。なにか特別なノウハウがあるのだろうか?

――林さんは、社長や専務といった会社のトップの方とお会いする際にどんなことに気をつけていましたか?


:入社して最初の2年間は九州で営業活動をしていました。営業先は酒造メーカー。どこも中小企業なので、社長や専務にお会いする機会が多かったんです。先方は第一印象重視をするだろうと考えて、 まずは「若者」を全面にアピールしました。基本的なことですが、とにかく元気よく、発声も明るく。「若くて声の大きいヤツ」と印象づけていきました。先輩と一緒に営業をするときも、「1年目の林です」と、相手の目を見てはっきりと伝えていました。

 私は福岡出身で、地元で働くことを希望した訳ではないんですが、たまたま1年目から福岡で働くことになりました。ただ、私は福岡市内出身で、営業先は福岡の田舎の方。営業先は行ったことがない場所ばかりだったんです。でも、 福岡県民には共通点があって、みんなソフトバンクホークスが大好きなんですよ。だから名刺交換や挨拶のときに、「○○(会社名)の若鷹、林です」という キャッチフレーズを言っていました(笑)。「若鷹って何だよ」とツッコんでいただけるので。そうやって覚えていただこうとしていました。

――会社社長や専務からよい商談結果を引き出すコツはなんですか?


:まずは成果を出すというよりも、社長や専務の懐にどう入っていこうか、と考えました。私は1年目とか2年目ですから、先方は「この若者に自分の商品を任せていいのか?」という不安があるだろう、と。その不安を払拭するために、 まずは私を好きになってもらおうと思いました。

 そこで、 まずはお会いする回数を増やしました。2時間かかる1回の商談より、30分の商談を毎日とか。車で外回りをしていたんですけど、近くに来たら電話をして「今から伺ってよろしいですか?」と聞いて訪問したり。「最近どうですか?」と聞いたり、世間話をするためにお会いしてました。

 その時に、他の酒造メーカーを訪問した時に仕入れた情報をお伝えするんです。「あのメーカーからこんな新商品が出てますよ」とか。地方は人手が足りないので、社長や専務が欲しがっているであろう情報を持っていくと喜んでもらえるんです。

 さらに、若者ならではのことだと、 スマートフォンから得られる情報があるのが強みだと思いました。ある時Twitterを検索したら、酒蔵開き(一般客が酒蔵に入れるイベント。酒作り行程の見学や、日本酒の試飲などができる)に行った人たちのツイートがあったので、それを社長にお見せしたんですよ。「今、Twitterにこんなことを書いてる人がいるんですよ」と。

 最初は「Twitterって何だ?」「若い人だけが使ってるんだろう?」と言われるんですが、「若い人だけじゃなく、色んな年代の人が使ってます」と色々なツイートを見せる。そうしたら「若い人の話を聞くのもいいな」と思っていただけて、少しずつ心を開いてくれました。足とデジタル、この2つで情報を得られるのが若い営業マンの強みだと思います。

 あと、私は 仕事とプライベートを分けないタイプなんです。酒造メーカーは休日に酒蔵開きをしたり、地元のグルメイベントに出店したりするので、彼女や友達を連れてそういうイベントによく行っていました。福岡に住んでいた私が、彼女と佐賀や熊本の蔵開きに行くのは、普通にデートとして楽しいんですよね。

 そこでお客さんである社長や社員さんに、彼女を紹介するんです。そうすると「お前、彼女連れてきたのかよ」といじってくれて、より身近に接してくれました。そうやって、自然と相手の懐に入っていきましたね。

――「若い人じゃだめだ」と断られたことはありませんでしたか?そのときはどのようにしましたか?


:断りの文句としてよく聞くフレーズは、それを含めて3つありました。まず、「 若い人じゃだめ」。これに対しては、先輩と行ったり、時には課長や所長に同行をお願いしていました。

 2つ目は、当社のライバル会社であるA社とすでにお付き合いがあって「 A社で満足してるから結構です」というもの。この場合は、初対面の時点で「もう来ないでください」と言われます。ドアより奥に入れないですね。

 そこで、この会社にはその後、お客さんとして訪問しました。「すみません、今日はお客さんとして来ました。酒粕アイスが食べたくなって!」って。まずは、お客さんとして訪問する回数を重ねていったんです。あとは後輩を連れてお酒の試飲や酒蔵開きに行ったり。そうやって何度も足を運んでいたら、社長の奥様が社長に「かわいそうだから、一度話を聞いてあげたら」と言ってくださって話を聞いていただけた、ということが一度あります。

 3つ目は「 必要ない」。でも、よく伺うと「 印刷会社でできることは必要ない」という意味だったんです。酒造メーカーの方が印刷会社と聞くと、お酒の紙パックや瓶のラベルを思い浮かべるそうです。だから、一般的には印刷会社がやっているイメージがなさそうなことを提案しました。

 例えば、VR(ヴァーチャル・リアリティ。展示物を立体的な映像で見せる手法)やAR(オーグメンテッド・リアリティ。現実環境にデジタル媒体を通して付加情報を見せる手法)といったデジタル系の商材を持っていって、「お酒が作られる工程を、これを使って売り場に流せますよ」とお話しする。紙の媒体は一切提案せずに、「印刷会社でこんなことをやってるんだ!」と興味を持っていただけるような提案をしていました。

――お客さんとして訪問する、という方法は興味深いです。


:これは、先方がBtoC(Business to Customerの略。個人顧客向けに商品を売る業態のこと)企業だからできることですよね。BtoC企業に提案をするときには「C」、つまりお客さんとしての視線も必要だと思います。自分がお客さんのつくった商品を好きにならないと、宣伝できないと思うんですよ。

 私の仕事は、お客さんであるメーカーの商品を、自分たちの技術を使って広く売り込むことだと思っています。だから、その商品を好きにならないと仕事に熱意が生まれないんですよね。

 時々「 休みの日に得意先に行くのって、嫌じゃないの?」と聞かれるんですが、全然苦にならないし、楽しいんですよ。「○○(会社名)の林」というよりは、「若鷹」として認識してもらっていて、従業員の方に「社長、今日も若鷹来ましたよー!」と言われて(笑)、色々話しかけてくださるので、嬉しかったですね。



 新人営業マンは、知識や経験ではベテランにはかなわない。しかし、ベテラン営業マンにないものがきっとある。林氏の場合、それは相手の懐に飛び込める勇気や素直さ、顧客のつくる商品を好きになれる好奇心などだ。新人営業マンの読者の方は、これを参考に、ベテランにはない自分の強みを見いだしてほしい。

林拓哉(はやし・たくや)氏プロフィール

1988年生まれ。福岡県出身。大学卒業後、大手印刷会社に就職。2年間九州地方で
酒造メーカーを中心に営業を経験。3年目に同社の東京の営業部門へ移動。現在は百貨店への営業を行っている。

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