「フレックスタイム制」という言葉について耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。近年、フレックスタイム制が、家庭と仕事を両立に向けたワークライフバランスの向上に繋がると期待が高まり、注目を集めています。実際に政府もフレックスタイム制の柔軟な運用に向けて、法改正を検討している模様です。
では、このフレックスタイム制の導入が進むことで、私たちの働き方はどのように変化するのでしょうか。
本記事では、働き方の歴史を変えるとも言われている「フレックスタイム制」について紹介します。
- フレックスタイム制とは?
- フレックスタイム制のメリット
- フレックスタイム制のデメリット
「フレックスタイム制」とは?
「フレックスタイム制」という言葉は耳にしたことがあっても、内容については詳しく知らない、という人も多いのではないでしょうか。
まずは、フレックスタイム制の意味について確認してみましょう。
フレックスタイム制の仕組み
フレックスタイム制とは、1ヵ月の中で定められた総労働時間の中で、労働者自身が各日の労働時間を自主的に決めながら働くことです。
つまり、勤務する合計時間は決まっているものの、勤務を開始する時間、終わる時間は決まっておらず、労働者の自由に委ねられた働き方です。
フレックスタイム制という言葉自体は広く認知されているものの、いまだ導入企業は国内では5%程度に過ぎず、導入している企業は多くないことがわかります。
「フレキシブルタイム」と「コアタイム」
フレックスタイム制では、多くの場合、1日の労働時間帯が「必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)」と「始業と終業時間を労働者自身が決められる時間帯(フレキシブルタイム)」に分けられています。
企業によっては全てフレキシブルタイムというところもあり、必ずしもコアタイムがあるというわけではありません。
フレックスタイム制が注目されるようになった理由
まだ、導入企業数が少ないフレックスタイム制ですが、なぜ注目されるようになったのでしょうか。
フレックスタイム制が注目されるようになったのは、働き方が多様化し、「働き方改革」が行われ始めたことが理由のひとつです。
少子高齢化が進む日本では、一億総活躍社会をかかげ、女性の社会進出や、多様な働き方を認める環境づくり、そして副業の推進などを政府が主導となって改革しています。
「子どもがいるから、朝8時から出勤することは難しい……」「夜は介護をしないといけないから、朝早く働きたい」といった家庭の事情により働くことが難しかった人も、社会進出を叶えるための方法としてフレックスタイム制は注目されています。
また、人によっては「朝早くから仕事をして、夜は自分の時間に使いたい」「夜型だから、朝はゆっくりと過ごしたい」といった生活スタイルの違いにもあわせて自分らしく働けることからも、フレックスタイム制は支持されているのです。
まだ導入している企業は少ないのが現状ですが、フレックスタイム制が導入されることでメリットがある人も多いのではないでしょうか。
フレックスタイム制のメリット
では、フレックスタイム制が導入されると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。フレックスタイム制を導入すると、以下の5つのメリットがあります。
- メリット1.出社・退社の時間を自分で決められる
- メリット2.プライベートな時間を充実できる
- メリット3.効率的に業務に取り組める
- メリット4.人材の定着・優秀な人材の確保に繋がる
- メリット5.自分らしい働き方が実現できる
では、それぞれのメリットを詳しく確認していきましょう。
メリット1.出社・退社の時間を自分で決められる
フレックスタイム制を導入する1つ目のメリットは、「出社・退社の時間を自分で決められる」ことです。
多くの企業では、出勤時間が決められており、決められた時間に合わせて出勤必要があります。「出勤時間を1時間遅らせる代わりに、退勤時間も1時間遅らせる」といった働き方は難しいところがほとんどでしょう。そのため、保育園の送り迎えなどで出勤時間が遅れる場合は、時短勤務などへと変更する必要も出てきます。
特に、子どもの送り迎えや、介護、通院など、家庭の事情で出社・退社時間を調節したいケースは多いでしょう。
また、このようなやむを得ない事情以外にも、「朝が弱いから午後から出社したい」「逆にもっと朝早くから働きたい」といった個人の生活リズムにあわせて、出社・退社時間をコントロールしたい人も多いのではないでしょうか。
フレックスタイム制を導入すると、自分で出社・退社の時間をコントロールできるので、理想の生活リズムで生活できるようになるのが大きなメリットだといえるでしょう。
メリット2.プライベートな時間を充実できる
フレックスタイム制を導入する2つ目のメリットは、「プライベートな時間を充実できる」ことです。
「明日も朝から出社しないといけないから、夜のライブは早めに切り上げて帰らないといけない」など、会社に決められた出社時間に縛られて、自分のプライベートが犠牲になっている人も少なくないでしょう。
フレックスタイム制にして、好きな時間に出社することが可能になることで、プライベートの予定を優先して生活できるようになります。
平日は仕事、休日はプライベートと分けることなく、平日もプライベートを楽しみやすくなることも、フレックスタイム制のメリットだといえます。
メリット3.効率的に業務に取り組める
フレックスタイム制を導入する3つ目のメリットは、「効率的に業務に取り組める」ことです。
フレックスタイム制では、自分自身で時間のコントロールする必要があるため、だらだらと残業をしたり、のんびりと仕事を進めることが減り、効率的に仕事を進める必要性が出てきます。
というのも、社内に常に人がいるとは限らないからです。上司や先輩がいつ社内にいるのかわからないので、仕事を進められるうちに進めておく必要がでてきます。そのため、効率的に業務をすることが求められるようになるのです。
また、仕事が早く終わった場合は、定時まで待って帰宅するのではなく、早くに帰宅することも可能です。プライベートを充実させるためにも、効率的に業務を終わらせたいという気持ちが出てきやすくなるでしょう。
メリット4.人材の定着・優秀な人材の確保に繋がる
フレックスタイム制を導入する4つ目のメリットは、「人材の定着・優秀な人材の確保に繋がる」ことです。
勤務時間が固定化されていると、「この企業に勤めたいけれど、就業時間がマッチしないから諦めよう」「子育てと両立できないから、今勤めている企業を辞めざるをえない」といったケースも出てきます。
そのため、優秀な人材とマッチングできなかったり、せっかくの人材が定着しなかったりといった機会損失が出てきてしまうケースも少なくありません。
フレックスタイム制を採用することで、このような機会損失を防げることは、企業側のメリットだといえます。
メリット5.自分らしい働き方が実現できる
フレックスタイム制を導入する5つ目のメリットは、「自分らしい働き方が実現できる」ことです。
これまでも紹介したように、フレックスタイム制ではプライベートな時間を充実させることができます。そのため、自分らしく働くことが叶いやすくなるといえるでしょう。
フレックスタイム制のデメリット
フレックスタイム制を導入することで、従業員にも企業にもメリットが多いことがわかりました。「自分の働いている会社でもフレックスタイム制が導入されたらいいのに……!」と思った人も多いのではないでしょうか。
フレックスタイム制はメリットも多いですが、当然デメリットもあります。フレックスタイム制の主なデメリットは以下の3つです。
- デメリット1.コミュニケーションが取りにくくなる
- デメリット2.自己管理が難しいことも
- デメリット3.マネジメントが難しくなる
では、それぞれの項目を詳しく確認していきましょう。
デメリット1.コミュニケーションが取りにくくなる
フレックスタイム制を導入する際の1つ目のデメリットは、「コミュニケーションが取りにくくなる」ことです。
誰がいつ出社しているのかわかりにくいので、社内でのコミュニケーションが取りにくくなることはイメージしやすいでしょう。また、社外の取引先にとっても、いつ出勤しているのかわかりにくくコミュニケーションが取りづらくなってしまいかねません。
社内のコミュニケーションを取りやすくするために、コアタイムを設定するなどの対策を検討するとよいでしょう。
デメリット2.自己管理が難しいことも
フレックスタイム制を導入する際の2つ目のデメリットは、「自己管理が難しいこと」です。
「いつ出社してもいい」となると、「今日はまだ眠いから、1時間遅く出勤しようかな……」「明日の朝はゆっくり出勤したらいいから、もう少し夜ふかししようかな」など怠惰になり、つい生活リズムを狂わせてしまいがちです。
時間の管理を自分自身でできるからこそ、自己管理をする必要があることを覚えておきましょう。
デメリット3.マネジメントが難しくなる
フレックスタイム制を導入する際の3つ目のデメリットは、「マネジメントが難しくなる」ことです。
誰がいつ出社しているのかわからないため、マネジメントするべき人のタスクや進捗、状況を把握しにくくなります。そのため、マネジメントが難しくなることもデメリットです。
一緒に過ごす時間が短くなるからこそ、よりコミュニケーションを蜜に取っていく必要があります。
フレックスタイム制の導入で私たちの働き方はどう変わるの?
フレックスタイム制を導入すると、働く時間をコントロールでき、プライベートな時間を充実させられることや、自分らしい働き方ができる一方で、自己管理や業務遂行が難しくなる側面もあるということがわかりました。
では、フレックスタイム制が導入されると、私たちの働き方は、一体どのように変化するのでしょうか。
これまでも紹介してきたとおり、「自分の人生を自分でハンドリングしやすくなる」ことがフレックスタイム制の大きな変化となるでしょう。
時間をコントロールできることにより、仕事が生活のメインとなるのではなく、プライベートな時間も充実させることができるのです。
フレックスタイムについての理解を深めよう
- フレックスタイム制は、労働時間を自主的に決めながら働くこと
- 出社・退社の時間を決められることで、プライベートな時間を充実できる
- 常に社員が出社していないので、コミュニケーションやマネジメントが難しくなる注意点もある
本記事では、決められた総労働時間の中で、自主的に出社・退社の時間を決めながら働くフレックスタイム制を紹介しました。
フレックスタイム制を導入することで、プライベートな時間を充実させることができるようになります。
まだ、社内にフレックスタイム制が導入されていない場合は、ぜひ提案してみるのはいかがでしょうか。
【関連記事】
出産・育児も仕事も両立させたい人にぴったりの福利厚生7事例
ライフステージの変化に伴い、会社の福利厚生が気になりだした人も多いのではないでしょうか。 本記事では、妊娠や出産、育児に関する福利厚生についてご紹介します。 将来に備えたい人や、子供...
定時で帰る「働きやすさ」を自分でつくる仕事術:『定時帰宅。』
業務が終わっていなくても、残業せずに定時で帰る。――このような残業を回避する行為は、日本企業では風当たりが強いケースも多いでしょう。しかし、残業なしで帰宅することは、誰しもが望んでいることではな...
これからの働き方を考える:「働き方の選択」「新しい働く環境」を提供する国内企業の取り組み事例
今や、働き方を自由に選べる社会になりました。自由な働き方を求めて、独立や、海外に行くことを考慮に入れている人もいるのではないでしょうか。 しかし、近年では国内企業でも働き方の選択肢が増...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう