G7ってなにか知ってる?
ウクライナでロシアが国際法を無視して武力行使を続ける中、欧米諸国はロシアに対し、海外資産を凍結するなどの経済制裁を行うことでロシアの牽制を図ってきました。
そんな中、日本もG7(先進国グループ)の一員として、ロシア人のビザ緩和の協議停止などの措置を決めました。
これに対してロシアも反発を示しており、複数の日本人の入国を禁止するなどの対抗制裁を行っています。
こうしたニュースが飛び交うことで、G7というコトバを聞いたことがある人はたくさんいると思います。しかし、G7の成り立ちやその役割について知らない人は意外と多いのではないでしょうか。そこで今回はG7について解説し、さらに理解を深めるために、G7が発展してできたG8、G20についても解説していきます。
G7とは、先進国首脳会議のこと
G7は先進国首脳会議、別名サミット(首脳の地位を山頂に擬えたもの)とも言われています。文字通り、7か国によって構成されており、アジア1か国、北米2か国、ヨーロッパ4か国となっています。その7か国は、日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリアです。
世界経済の安定化を求めて
1973年の石油危機やその後の世界不況を背景に、1975年に成立したのがG7です。フランスの呼びかけを機に、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアそしてカナダが集結したことでG7が生まれ、G7サミットでは、各国が協力して世界経済の安定を目標に会議を行いました。
その後、上記7か国の財務大臣及び中央銀行総裁が集まって国際金融の安定化などについて話し合う会議として定着し、年3回開催されるようになりました。
G7+ロシア=G8
G7のことは前項で説明しましたが、そのメンバーに新たにロシアが加わってできたのがG8(主要国首脳会議)です。ロシアは1994年から部分的に参加するようになり、2003年からすべての会合に参加するようになりました。
「先進国首脳会議」から「主要国首脳会議」へ
ロシアは、加入当初はソ連崩壊後の経済・政治的混乱により、貧困状態であったため、先進国と呼ぶには程遠い状態でした。それは一人当たりの名目GDPからみても明らかで、発展途上国状態といえる経済力しか持ち合わせていなかったのです。そのため、名称を「先進国首脳会議」から「主要国首脳会議」へと変更しました。
ロシアが混乱すれば核技術の流出が進む
1989年の冷戦終結後、ソ連は崩壊し、共産主義国家としての実験は終焉を迎えました。その後、急激なマーケットメカニズムの導入によってロシアは経済的な混乱に陥ることになったのです。当時は、「ロシアが混乱すれば核技術の流出が進む」、そんなことが世界中で懸念されていたため、アメリカのクリントン大統領は、サミットにロシアを迎え入れることで、「ロシアの経済の安定化」と「核の不拡散」を目指しました。その結果、ロシアは正式メンバーとなり、G7はG8になったのです。
G8のプラスとマイナス
21世紀の頭までG8は、様々な国際的問題に対して強い影響力を持っていました。しかし、途上国の経済成長が著しい一方で、2008年9月に起きたリーマンショックのような経済危機で先進国の経済成長が低迷し、先進国と途上国との経済的・政治的影響力の力関係が差が縮まっている近年においては、相対的な影響力の低下とともにG8の形骸化が指摘されています。
その一方で国連総会などと比べて、主要各国の首脳会議であるサミットは決断力・実行力に格段の優位性があり、拒否権など制度的問題点が少なく、国連を補完する意味でも一定の役割を果たしているという見方もあります。
G20には国だけでなく、地域も含まれている
G20は、G7の7か国に、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)と、それ以外の国で経済が飛躍的に発展している7か国(アルゼンチン、オーストラリア、インドネシア、韓国、メキシコ、サウジアラビア、トルコ)、そしてEU(ヨーロッパ連合)を加えた19か国・1地域のことです。
世界金融危機に対応するために
前項でふれた通り、G8が世界に及ぼす影響力は低下しました。その大きな要因は、新興国の急速な成長により、G8の経済力が相対的に小さくなったことにあります。2008年9月に発生したリーマンショックと、その後の金融危機に主要先進国だけで対応しきれない中、2008年11月にG8メンバーに中国、サウジアラビア、インド、メキシコといった新興国を加えた19カ国とEUが「金融・世界経済に関する首脳会合」を開催し、世界金融危機に対応するための各国の協力を確認しました。それから、この会合は毎年開かれるようになり、G20と呼ばれています。
G20の抱える問題とは
G20の合計GDPは、世界全体の約90パーセントにもなります。ゆえに、G20が世界経済に及ぼす潜在的な影響力は、G7を遥かに凌ぐでしょう。ただし、数が多いことで一体感に欠けることや、内部では日本と中国、韓国の関係悪化に代表される複雑な対立関係があり、G7と比べてまとまりがなく、実効性のある意思決定が困難だという問題があります。一方、G7には年月をかけて培ってきた協力関係が存在しています。
今まさに実力を問われているG7
ウクライナ問題でG8停止
ロシアのウクライナに対する軍事介入やクリミア半島掌握などを非難したG7の首脳陣は、ロシアへの制裁処置の一環として、2014年6月にロシア・ソチで行われる予定だったG8サミットを中止しました。また、「ロシアが態度を改め、G8において意味ある議論を行う環境に戻るまで、G8への参加を停止する」という内容のハーグ宣言を発表することとなり、これにより事実上G8が停止され、G7へと戻ることになったのです。
今後さらにG20の影響力が世界的に増す一方、G20はまだまだ多くの問題を抱えています。そんな中、ウクライナ問題でG8が停止された現在、頼れるのはG7となるでしょう。G7には長年の経験を生かし、G20をまとめ上げ助言を与える、そんな役割が求められているのではないでしょうか。
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