ビジネスシーンでよく耳にする「目標・方針・目的」といった言葉。それぞれ異なる意味を持っていますが、その違いを明確に説明するのは意外と難しいもの。「目標・方針」の意味や「目的」との違いを、具体例を上げながら説明します。また、ほぼ似た意味を持つ「方針」と「指針」についても、異なる点を解説します。
- 目標とは「目的を達成するまでの手段・マイルストーン」
- 方針とは「目的を達成するやり方・姿勢」。指針とはほぼ同義だが、指針は外部から与えられるのに対して方針は内的に発生する
- 目標も方針も、目的があって初めて存在する
「目標」の意味とは?
仕事をしていると、目標という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。分かりやすい例でいえば、「今月の売上目標は〇〇万!」など、営業マンには馴染み深い単語です。
そもそも、目標とはどのような意味があるのでしょうか。また、目標と並んでビジネスシーンでは「目的」という言葉もよく使われますが、「目標」と「目的」の違いは何なのでしょうか。そして、目標はどのようにして決めれば良いのでしょうか。
「目標」:目的を達成するまでの手段・マイルストーン
目標とは「ある活動における目的や課題への到達手段」。「目的を達成するまでのマイルストーン」とも言いかえることができます。「目標」と「目的」の意味は異なり、目的があってはじめて目標を立てることができます。
- 「目標」:目的を達成するまでの手段・マイルストーン
「目標」「目的」を山登りにたとえた具体例
「目標」と「目的」についてなんとなくイメージはできるものの、まだ明確な違いが理解しにくい方もいらっしゃるでしょう。そこで、「山登り」に例えて目標の意味を考えてみます。
山登りにおける目的、つまり山登りをする理由は「頂上できれいな景色をみること」とします。
頂上できれいな景色を見るには、日が明るいうちに頂上へ着く必要があります。また、山は日が暮れるのが早いので、夕方より前には下山できると望ましいと考えられます。例えば往復6時間かかる山の場合は、「9時に登山を開始し、12時に頂上に着いて、15時に下山する」といった目標が立てられます。
また、そもそも景観がイマイチな山に登ってしまうと、きれいな景色を見ることができません。そのため、「景観の素敵な山をピックアップすること」も目標の一つになるでしょう。
- 目的:山頂できれいな景色を見ること
- 目標:きれいな景色を見れる時間帯に頂上にいること、きれいな景色が見れる山を選ぶこと
ビジネスにおける「目標」の決め方
ビジネスシーンにおいても目標の決め方は基本的には変わりません。「目的を達成するために必要なことは何か」を考えた結果、出てきた要素が「目標」となります。
ビジネスシーンでは、何を目的にするか、どんな環境にいるかなどによって目標の性質が変わってきます。経営陣の立場で考えるのか、中間管理職の立場なのか、それとも新入社員なのか。また、マーケティング、営業、人事、総務など、部署によっても変わってきます。
例えばとある経営者から見た場合の目的が「利益を出すこと」だった場合、「A事業部で〇〇円売り上げる」ことが目標になりますし、熱い思いを持って入社してきた新入社員のBくんの目的が「新人賞を取る」だった場合、「今任されている仕事で120%の成果を出す」や「幹部層との人脈をつくる」といったことが目標になります。
- 目的を達成するために必要なことを、状況や環境を加味して考える
「方針」の意味とは?
「私達のチーム方針はこちらです」「我社の経営方針は三方よしです」など、「方針」もビジネスシーンで耳にすることが多い言葉の一つ。よく使われる言葉ですが、先述した「目標」と「方針」が持つ意味は異なることをご存知でしょうか。
次に、方針の意味や具体例、ビジネスにおいてなぜ「方針」が重要なのかについて説明します。
「方針」:物事を実行する上での方向
方針とは、めざす方向。物事や計画を実行する上の、およその方向。「―を決める」「―を誤る」「教育―」
上記によると、方針は「物事や計画を実行する上での、およその方向」と定義されています。目標が「目的を達成するために必要なものごと」だとすると、方針は「目的をどんなやり方で達成するか」ということです。
- 物事や計画を実行する上での、およその方向
「方針」を山登りにたとえた具体例
「方針」とは、「物事や計画を実行する上での、およその方向」「物事を進める際のスタンス・姿勢」を意味します。
先程の山登りの例では、「頂上できれいな景色を見ること」が目的でした。この場合の「方針」は、「初心者でも楽しめるように楽なルートを選ぶ」「山登りのスキルを磨く」「景色を楽しみながら登る」などが挙げられます。
- 「登頂できれいな景色を見る」ための方向性・姿勢
ビジネスにおける「方針」の重要性
ビジネスにおいて方針をしっかりと定め、かつそれを関係者で共有することが、少ないコミュニケーションコストで成果を得られる鍵の一つ。
ビジネスシーンにおいて、売り上げ目標を達成するための方針を決める場合、「とにかく数字を上げるためにスピーディに行うのか」「サービスを充実させながら、次につながるような仕事をするのか」といった内容を検討する必要があります。
方針はメンバー全員で共有・理解しておくと、余計なコミュニケーションコストが発生せず、素早い意思決定が可能です。
方針はお客様への対応や、資料作成の言葉選びなど、日頃の業務で行う小さな意思決定すべてに関わってきます。会社の経営理念やバリュー、行動指針も「方針」に当たるもの、と理解しておきましょう。
- メンバー全員が共有、理解できる方向性
- 会社の経営理念やバリュー、行動指針
ビジネスにおける「方針」の例
具体的にビジネスよく使われる、「方針」が入った言葉について意味を確認しておきましょう。
【経営方針】
企業が経済活動を行うにおいて、目指すべき方向、大切にしている考え方や姿勢のことを指します。例えば大手通信会社のSoftBankの経営方針は「「成長戦略」と「構造改革」により持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します」としています。
【方針展開】
経営方針を組織の隅々まで行き渡らせるため、方針を伝達する仕組みのことを指します。
【方針管理】
企業のレイヤーによって経営方針の理解や履行に乖離がないか、チェックする取り組みのことを指します。例えば、経営方針で「三方良し」と定められているのにも関わらず、現場では自社にしかメリットのないような取引をしてしまっている場合は、方針管理によって現場と経営方針の認識の乖離を正す必要があります。
- 経営方針、方針展開、方針管理などがあり、企業が経済活動を行うにあたり欠かせないもの
- 企業規模が大きくなるほど「方針」の認識を合わせることが難しくなるため管理が重要
「目標」と「方針」の違い
「目標」と「方針」の意味や立て方について確認してきました。では、この2つの言葉の違いはどこにあるのでしょうか。
「目標」は目的を達成するために決める細かい期間や段階を指し、「方針」は目的を達成する際に拠り所とする大雑把な方向を意味します。目標は段階、方針はスタンス・姿勢とも言いかえることができます。
また、共通点としては「目的」に紐づく概念であるということ。まず目的があり、目標や方針はそれに付随する形となります。
- 目標は方針よりも細かい
- 「目標」:目的を達成するための細かい期間や段階
- 「方針」:目的を達成する際に拠り所とする大雑把な方向性
「方針」と「指針」の違い
「方針」と「指針」も似ているのでよく混同するかもしれません。大まかな意味合いは似ていますが、この2つには明確に異なる点があります。
【方針と指針の違い】
- 方針:自ら考え内的に発生するもの
- 指針:外部から与えられるもの
「あの自己啓発本は、私の仕事における指針だ」と言いますが、「あの自己啓発本は、私の仕事における方針だ」とは言いませんよね。
逆もしかりで、「私たちのチーム方針は、顧客によりそった接客です」とは言いますが、「私たちのチーム指針は、顧客によりそった接客です」とは言いません。
「方針」も「指針」も、「目的を達成するために拠り所となる考え方」ということは共通していますが、それらが内的に発生するものか、外部から与えられるものかという点において大きな違いがあります。
- 方針は内的に発生するもの、指針は外的に与えられるもの
- どちらも大まかな意味合いは「目的を達成するための姿勢・考え方」と、同じ
状況に応じて「目標」と「方針」を使い分けよう
つい混同して使いがちな「目標」と「方針」ですが、この2つは異なる意味を持つ言葉です。どちらも「目的」に深く関係するものですが、「目標」は「目的を達成するために必要なこと」、「方針」は「目的を達成する際のやり方・姿勢」を指します。方針よりも、目標のほうがより細かい物事を表します。
「山に登り、頂上できれいな景色を見る」が目的だった場合、「9時に登り始め、12時に登頂し、15時に下山する」が目標となり、「山ならではの植物を見つけ、自然を楽しむこと」が方針となります。
また「方針」と「指針」も、大まかな意味としては「目的を達成するためのやり方・姿勢」という点では共通していますが、「内的に発生するものか」「外部から与えられるものか」という点において異なります。
これらの言葉を状況に応じて使い分け、ビジネスシーンでより正しいコミュニケーションがとれるようになりましょう。
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