インターネットの可能性が次々と広がっている現在、主にインターネット企業においてアドテク人材の獲得と育成が急務となってきている。
今回は、AES(Ad Engineering Summit)において行われた「アドテク人事論」の中で語られた、アドテク人材の採用や育成・評価方法などをまとめて紹介していく。
アドテク人材の現状
アドテクとは主にインターネット広告に関するシステムのことを指し、アドテク人材とはそのシステムを構築するエンジニアのことを言う。こうみると、アドテク人材とは一見するとかなりマニアックな人達である印象を受ける。
その特性ゆえ、新卒の学生でこの分野に対する知識を持っている人はなかなかいなく、そもそも手元にアドテク業界の情報が入ってこないというのが現状だ。そのため、アドテクを扱う企業の多くは中途採用で、エンジニア経験がありかつ優秀な人材に注力してに採用を行なっている。
しかし、それの繰り返しではいつまで経っても新たなアドテク人材は出てこない。各企業では、どのようにして新しい人材を手に入れているのだろうか。
興味や挑戦意欲を重視
「新卒に対してはアドテクに関する知識よりも、RTBやDSPといった分野に興味があるかどうかという部分を重視している。興味さえあれば、あとはやる気と頑張りさえあれば十分成長はしていく。」先日上場を果たしたフリークアウトの溝口氏は、こう語る。
確かに、専門的な知識や技術が無い状態では何も評価をすることは出来ない。まずはじめの前提として興味関心が重視することは、アドテクだけではなくどの分野でも重要なことである。
とはいえ、興味関心があるだけではいけない。それに追加するための条件として 「挑戦する意欲」というものがある。VOYAGEやサイバーエージェントなどでは、特に学生の挑戦する意欲をよく見るようにしながら採用活動を行なっている。
VOYAGEでは、アドテク人材専門のインターンは行なっていないものの、サマーインターンを通じて課題に対して挑戦していく人をしっかりと見極めていくことを徹底している。またサイバーエージェントでも同様に、技術面よりも挑戦意欲や興味関心を持っている人材を求めており、セミナーやインターンシップなどを通じてその人材のポテンシャルの部分を見極めることをしているそうだ。
仮にそのようなフローでポテンシャルの高い良い人材を獲得出来たとする。次の課題は、そうして獲得したアドテク人材をどのようにして育成しているのかということだ。
とにかくチャレンジさせてみる
アド業界は一般的にあまり馴染みがないために、そもそも興味が無いとできない分野である。各企業ではアドテク人材として優秀なエンジニアを育成するために、獲得した人材のポテンシャルをどのようにアドテクに向けているのか。
各企業が口をそろえて言うのは 「とにかく、挑戦させてみる」ということだった。実際の取組みとして、Yahooでは、企業が持つリソースを活かして自社の子会社や海外の提携企業へと社員を送りこんで成長環境を与えている。そこには様々なリスクは生じるものの、そのリスクをお互いに怖がらずに挑戦していくような環境が非常に重要なのである。
とにかく挑戦させてみるということは、何かを習得しようとする時には共通するテーマである。特にアドテクの分野では、元々のスキルが低いためこれはかなり重要なポイントだ。サイバーエージェントでは、それを念頭に置いた育成方法をとっている。
サイバーエージェントでは、大きく2種類の育成方法があるという。1つ目は「 エースとエース候補をぶつけること」、2つ目は「 1つのプロジェクトを若手にどんどん任せること」だ。どちらもチャレンジが出来る環境としては最適であり、実際にそこから優秀な人材も出てきているという。
最後に最も重要となってくるのが、人材の評価方法である。エンジニアを評価する方法となると、なかなか評価基準を設けづらいというのが実際のところだろう。アドテク業界の企業では、エンジニアをどのように評価しているのだろうか。
2軸に照らし合わせて評価
多くの企業では、アドテク人材を 「能力」と「実績」という2つの軸に照らし合わせて総合的に評価をしている。
VOYAGEでも、その2つの観点から評価を行なっている。能力面は数段階のグレード制でエンジニア内での相互評価となっており、実績面ではマネジメントラインに照らし合わせてビジネスサイドから評価するという形だ。
こうなると、どちらか一方に能力とスキルのどちらかに傾倒してしまう場合があるのではないだろうかという懸念が浮かぶ。しかしYahooの佐々木氏曰く、その2軸の相関性はほとんどの場合、正の関数になるのだという。
これはつまり、優秀なエンジニアはプロフィットにも貢献し、プロフィットに貢献するエンジニアは優秀であるということを示しているのだ。
給与面の評価は、どれだけプロフィットに貢献したかというバリュー面を重視する企業もあれば、その事業のフェイズによって変わってくるという企業もあり、これはその場面や状況に適した方法を取るべきであると言える。
全体として成長していくために
エンジニアの成長は、アドテク企業にとって最重要課題であると言っても過言ではない。しかし、個人の成長と全体としての成長は必ずしも連動するものではない。
エンジニアが増えてくると、それぞれの進捗を追っていくことが次第に難しくなり、正確な評価も出来なくなってきてしまう恐れがある。そういうことを未然に防ぎ、エンジニア全体の底上げを図るためにしていることは何なのだろう。
各企業に共通していたのは「 密なコミュニケーションを重ねること」である。徹底的に一対一で話し合い、目標に対する進捗やスキル面などの話をひたすら重ねることが、全体としての成長に繋がっていく。
冒頭にも書いたが、インターネットの利用方法が多様化し広告の在り方も変化していく中で、これからアドテク人材の需要は急速に高まっている。しかしそれと同時に、企業側の育成体制も非常に重要になってくることは必至だ。自社に適した方法を見つけて、優秀なアドテク人材を獲得し育成していくことが、会社としての成長に繋がっていく。
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