「ビジネスマンにとって、判断力と決断力は必須の能力だ」「彼は判断力はあるが、決断力に欠けている」「うちの上司は決断力はあるけど判断力がイマイチだから、間違った決断をすることがよくある」
ビジネスシーンでは、こうした表現がよく使われるでしょう。判断力と決断力、いずれも「何かを決める能力」であることは共通しています。それだけに、その違いがわかりずらく間違って把握している人も少なくありません。その違いについて、ビジネスシーンでの具体例を示しながら説明しましょう。
判断力と決断力の違い
判断も決断も「何かを決めること」であることは同じですが、違いをしっかりと理解しておきましょう。
まずは判断です。何かを判断する場合には、その裏づけとなるデータが必要です。過去から現在に至る情報について、それを分析し、整理します。その上で「だから、こう判断する」ということになるわけです。つまり判断力とは、現状分析に基づく頭の整理能力と言っていいでしょう。
それに対して決断の対象となるのは「未来に向けて進むべき道」です。複数の選択肢の中から一つを決定する、あるいは一つの事象や課題について「是か非か」を決断するのは、「未来」のために行われるのです。そのため、決断されたことは必ず行動が伴わなければなりません。
ビジネスシーンでの具体例
このように説明しても、なかなか理解しづらいかもしれません。そこで、実際のビジネスシーンにおける具体例で説明しましょう。
冒頭に「うちの上司は決断力はあるけど判断力がイマイチだから、間違った決断をすることがよくある」という例をあげました。これが判断力と決断力の違いをよく物語っています。
その上司は、「進むべき道」を選択し、意思決定する能力には優れているわけです。ところが、その意思決定のために必要な個々の事象や情報に対する判断が正確にできないために、「進むべき道」を誤まってしまいます。
より具体的にしましょう。例えば、営業マンが取引先との商談に臨んだとします。取引先から「この商品の単価をもう少し下げることはできないか」と要求されとき、彼は何を考えるでしょうか。
まず「単価を下げることは可能か」と考えるでしょう。そして「下げることは可能」と「判断」した場合、「どれくらい下げることができるか」を、さらに「判断」するわけです。その際に「値下げすることによって生じる自社の損失というデメリットと、取引先との関係向上というメリット」を比較検討します。それぞれの情報をひとつずつ判断し、そして最終的に「要求に応じて値下げする」あるいは「値下げしない」という意思決定を行います。これが「決断」です。
最後にもう一度、先ほどの上司に登場してもらいましょう。その上司は要するに、「自社やセクションのメリットとデメリットの判断をおざなりにして、安易に決断するために、失敗をしてしまう」ということなのです。この違いを意識しておくことで、今後のビジネスシーンにおいても活きてくることでしょう。
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