就業規則は、労働基準法第89条および第90条である程度の規模の企業は作成を義務付けられているものです。もちろん、企業で作成をしていない場合は、法令違反になります。しかし、それだけではありません。企業側、従業員側の両方にデメリットがあるのです。今回は、就業規則がない場合のデメリットを紹介していきます。
企業側のデメリット
優秀な人材が集まらない
優秀な社員の確保や今後会社を拡大したい時、その場合には優秀な人材を確保しなくてはなりません。様々な方法を通じて、人材を募集し、面接に至り内定を出します。ところが、就業規則を求められ社内になかったことを告げると内定を辞退されました。こういったことが生じる可能性があります。就業規則は一定以上の企業では法律的に求められているものです。それが完備されていないということは、就職してはならない企業とみなされます。
懲戒解雇ができない
たとえば、社員が不正を犯し会社に損害を与えました。普通なら、懲戒解雇となるでしょう。ところが、懲戒解雇をしたところ、労働基準監督署から指導がきました。懲戒解雇された人が労働基準監督署に訴えたのです。この企業には、就業規則がありませんでした。就業規則がないため、懲戒解雇の基準がないのです。このため、この企業には懲戒解雇が認められないのです。もちろん、社員の不正の程度にもよります。それを裁判所で争うことも可能です。しかし、就業規則がなかったために会社側は面倒な処理を強いられてしまうのです。
従業員側のデメリット
すべてが社長のさじかげんで決定される
就業規則は、主に給与、賞与、休日、有給休暇について記載されるものです。これがなかった場合には、社長はある程度の権限で自由に決定できることになります。昨年は、正月に休みがあったが、今年はなくなったなど、仕事と家庭のバランスをとることが難しくなることもあります。また、給与や賞与も曖昧ですから、将来的な見通しも立ちません。そういった意味で、就業規則がない会社は将来的な設計を立て難く、安心して働くことが難しい環境となります。
もしもの場合に困る
特に小さな企業においては、企業が倒産するということもあります。給与が未払いの場合には、その取り立てをしなくてはなりません。会社にそのお金がない場合は、国が一定の割合で未払い賃金を立て替えて払ってくれる「未払賃金立替制度」があります。ところが、この制度は労働者側から労働基準監督署に申請しなければならないのです。ここで、労働基準監督署に届け出るために、就業規則が必要な場合があります。
このように、法律的に義務付けられている就業規則を提出していない企業は、健全な運営を志していたか、という点では疑問が残ります。今回は、就業規則がないことによるデメリットを考えてみました。もちろん、これ以外にもデメリットはあります。そもそも、就業規則は企業の運営を円滑にすすめるためのルールです。ないことによってデメリットは増えるので、就業規則がない企業の経営者は早急に作成されることをおすすめいたします。
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