事故や災害の原因の多くは、ヒューマンエラーです。その決定的な対策を立てることは難しいものです。人間の注意力や判断力、認識力には限界がありますし、そこに原因と対策を求めることには無理があることがわかっています。ヒューマンエラーの事例として多く取り上げられるのが、航空機による事故です。管制官によるミスから生じる航空機同士のニアミス、パイロットの精神状態が原因の誤操作など、その事例には事欠きません。その対策としてどのような事がとられてきたのでしょうか。
ヒューマンエラーの対策 アメリカの事例
「安全性を求める」
高度に制御化された機器を取り扱うのはあくまでもパイロットであり、よって安全第一を心がけさせることで対策がとられてきました。パイロットは必ず機長と副操縦士がおり、決してひとりきりで操縦するわけではありません。それでもやはり、事故を防ぐことはなかなかできません。たとえば機長の精神状態が原因とみられる誤操作による墜落事故がありました。社内ではその機長の様子がおかしい事に気づいていたのですが、適切な処置を取られることなく業務にあたらせた結果事故につながりました。これは原因が機長ひとりにあるわけではない良い例です。そして、アメリカでは早くから人間にその責任を追求することからの方向転換がなされてきたのです。
「人間工学を利用する」
アメリカでは第二次大戦まで、軍用飛行機事故の原因はあくまでもパイロットにあるとされてきました。けれども一向に減らない事故を受けて、その原因を別のところへ求めるようになりました。人間工学を利用してコックピットを改良したり、人的要因を重視するプログラムを組むようにしたのです。結果、航空機事故の確率は劇的に低下する結果になりました。この軍用機の成功を受けて、民間の航空会社でもプログラムの開発に力を入れるようになりました。ヒューマンエラーの原因を人間そのものに求めることからその環境へ求めるようになりました。
人はミスをするものです。たとえどれほど注意力を持ってしても、これを避けることはできません。その考え方を前提にすることによって、効果的な対策の取り方が見えてくるようになってきています。これは、航空機に限ったことではありません。あらゆる業務において、その判断を行う人間の負担をいかに減らすかということに、ヒューマンエラーを防ぐ対策を求め始めています。ミスを起こさない仕組みづくりと、たとえミスが起きたとしても、それが事故につながらないような仕組みづくりです。機械を使う場面においても、あるいはコミュニケーションをとる場面においても、いかにヒューマンエラーによる事故を発生させないかという発想のもとに、対策を立てることが求められています。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう